y’s presents 貴ちゃんナイト vol.8

大きな愛に包まれた”貴ちゃんナイト”

「貴ちゃん!」と、手首に赤いバンドを付けたリスナーが、次々と中村貴子の元へ声を掛けにやってくる。
手紙を手にし、直接渡しながら談笑する時間は”開場時間”ではなく、既に”開演時間”と言っても過言ではない、リスナーにとって掛け替えのない時間だ。

5月7日(土)に下北沢CLUB251にておこなわれた<y’s presents「貴ちゃんナイト vol.8」>は、中村貴子によるイベント。
ラジオ・パーソナリティとして絶大な人気を誇る中村貴子のリスナーが、DJイベントとして岡山でスタートしたものを引き継ぎ、”大好きなミュージシャンを迎えて、いちオーディエンスとして見たい組み合わせにこだわる”ライブ・イベントへ昇華させたものである。
“出演者未発表”段階から発売される先行チケットは、回を重ねる毎に購入者が増え、主催である中村貴子への絶大な音楽への信頼が伺える。

8回目を数える今回は、中村貴子から「このイベントをスタートさせたときから、GREAT3の出演がひとつの目標であり夢だった」と話す、2012年ベーシストにjan(ヤン)を迎え活動再開した『GREAT3』、小学生のときからNHK FM「ミュージックスクエア」を聴いて育ち、各インタビューなどで「音楽ルーツ」について問われると「中村貴子さんのラジオ番組で音楽に目覚めた」と答える9mm Parabellum Bullet『菅原卓郎』、そして中村貴子とはメジャーデビュー前からラジオを通して繋がってきた『The Cheserasera』と、異なる年代ながらも中村貴子とラジオを通して親交を深めてきた3組の共演は、貴ちゃんナイトだからこその実現である。

菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)選曲による会場SEに導かれ、ステージへ上がる中村貴子。
「最後までいないと後悔します」という、茶目っ気たっぷりの開演に先立ったMCを残し、最初に登場したThe Cheseraseraは、アンセム曲「賛美歌」でスタート。
4月に発売されたばかりのニューアルバム「Time To Go」より、「butterfly (in my stomach)」へと続き、勢いそのままに3ピースだからこそ成せる、鉄壁のリズムとメロウの心地よさが会場中を包む。

中村貴子との出会いを話す宍戸翼(Vo/Gt)からは、幾度となく笑みが溢れ「音楽が好きだったら仲間でしょ!」という気持ちにさせてくれたというエピソードは、会場中のリスナーズ(オーディエンス)の気持ちを代弁してくれているようにも思えた。
イントロで西田裕作(Ba)と美代一貴(Dr)のアンサンブルが攻めをみせる「ファンファーレ」では、次々と会場中で手が挙がり、「ラストワルツ」では、その音圧に乗るメロディと壮大なコーラスで、一気に惹きつける。
「まだまだいけますか?」と宍戸翼からの煽りに、両手を挙げて応えるリスナーズへ送られたのは「月と太陽の日々」。
年代に関係なく、誰もが経験したであろう、人生の幾つものシーンを切り取ったような音楽を放ち続けたThe Cheseraseraに、最後まで惜しみない拍手が向けられた。

そして会場SEでは、Patti Smith Groupの”Frederick”が終わりに差し掛かると、「こんばんは」という挨拶と共に、9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎が登場。

弾き語りスタイルで臨んだステージは、自身のバンド曲「The Revolutionary」でスタート。オリジナルでのバンドサウンドにある疾走感とは打って変わり、心地よいテンポに、力強さが増した表情を見せ、弾き語りという最小構成ならではの音と音の余白に、ハープの旋律が沁みていくようだ。
「リスナーからバンドマンになった」と、ヘヴィリスナーである自身と中村貴子のラジオについて話す菅原。当時、中村貴子がパーソナリティーを務めたラジオ番組『ミュージックスクエア』のランキングで1位をキープしていたというTHE YELLOW MONKEY「SO YOUNG」のカバーを披露。会場に集まったリスナーズと同じように、世代を超えた名曲で魅了すると、「『ミュージックスクエア』で出会った曲がたくさんあって…」と、「ここで逢いましょう」「キャンディ・ハウス」「生きてく強さ」と、様々なアーティストの楽曲をワンコーラスに満たないながらも披露し、一気に90年代へトリップさせる。続いて披露された井上陽水「氷の世界」のカバーを終えると、「音楽は出会いだよね」と語り、菅原がラジオで出会った楽曲の1つである、the pillows「ストレンジカメレオン」のカバーでは、鳴り止まない程の拍手が送られた。
ラストは、バンド初のセルフ・プロデュース作品でもある「Black Market Blues」。
菅原曰く、“リスナー仲間”である会場にいる全員でシンガロングし、中村貴子が繋いだように、会場中のリスナーズの心を繋いでステージを後にした。

1

2 3