高野 哲インタビューvol.34

奇跡の復活を遂げたZIGZOと3ピースロックバンドの雄nil、ベースレス変則ピアノトリオTHE JUNEJULYAUGUSTに、シアターブルック・佐藤タイジと組むインディーズ電力と4バンドで縦横無尽に活動している高野哲が、さらに新バンド「THE BLACK COMET CLUB BAND」結成した。メンバーはnilとTHE JUNEJULYAUGUSTでの構成であるが、決してただの合体バンドではない。ツインドラムの5人編成から織りなす音は、唯一無二のサウンドでありながらも、このバンドの指針の1つともなった”ルーツミュージック”が垣間見れ、まさに圧巻である。全12曲を収録した「THE BLACK COMET CLUB BAND」について、高野哲よりその全貌を語ってもらった。

ーいきなりですが、nil、THE JUNEJULYAUGUST、インディーズ電力、ZIGZOに次いで、まさかのもう1バンドを結成されるという、一夫多妻な状況ですが(笑)。

最高ですね(笑)。偶然なんだけど、去年にやってるバンド全部でアルバムを出したあと、ZIGZOに関しては1年間ぐらい活動を止めようって話もあったから、2015年に向けて、nilとジュンジュラはどうやって動かすかなと思っていて。

ーどちらもある種、突き詰められた作品が完成したわけですし。

うん。完成形が出来ていたから、それを育ててツアーをやってくのかなって思ってたんだけどね。去年、nilとジュンジュラの2マンライブをやったんですよ。ファンクラブ限定だし、パーティー感を出そうと、アンコールで2バンド混ぜて、こっそりツインドラムはやってたんです。

ーそのときが”ツインドラム”の初お披露目だったんですか?

そのときは、既存のリズムを分解して、それを2人羽織り状態でやったんですよね。1人で出来ることをわざわざ2人で分けてるんだけど、本来1人でやれるフレーズと比べれば、ノリとか音量・音圧が違う。そのときに「おもそろいぞ!」って思っちゃったのと、ドラムが持ってるリズムの基本的な要素と、装飾音的なパーカッション的な要素は、ベースやギターで出さなくても、全部ドラムだけで完結が出来ちゃうなって思って。ベースもギターもすごいシンプルにして、そういうドラムでやってみたくなって。やってみたいと思ったことは、やんないと損(笑)。

ー(笑)。辿ると、もう4年前に新宿LOFT で行った、THE JUNEJULYAUGUST presents 【THE BLACK COMET CLUB vol.1】や楽曲としてリリースされた「THE BLACK COMET CLUB」から、今回のバンド名に?

もともと、稲垣足穂の詩であるんだけど「THE BLACK COMET CLUB」が響きも含めて好きで。THE JUNEJULYAUGUSTってバンド名を決めたとき、関係者に多数決とったんだけど、負けたのがこれだったの。でもずっとどこかに引っ掛かってて、曲名にしたりイベントタイトルにしてたんだけど、ジュンジュラを昔から知ってる人からすれば、「ややこしいことするな」って戸惑うかも(笑)。それで”○○BAND”っていう名でバンドをやったことなかったか名付けようって。ジュンジュラ、nil、インディーズ電力、ZIGZOって、クレジットが日本一長い男に(笑)。

ーギネス級ですよね(笑)。

ギネス級に長い(笑)。

ー因みに高円寺HIGHでのライブのときは、名義として「THE BLACK COMET CLUB BAND」ではなかったんですか?

ちょっとぼやかしてたし、そもそもオリジナルをやっていなかったから。「今後はオリジナルを作っていこう」っていう、気概のあるライブではあったけど、まだ本当にセッション程度のノリだったし、あれを初ライブとは思ってなくて。それで年明けから曲作りに入るんだけど、最初は全然曲が出来なくて、レコーディングまで4〜5カ月ですね。

ーそれまでの伏線として、昨年のファンクラブイベントでは、nilとTHE JUNEJULYAUGUSTの2マンで「さよならダヴィンチ」と「Roly Poly」をクロスオーバーさせ、音源としても「Paradise」「GRANVIA」に収録されましたが、実際に”別バンドとして”という構想はその時点であったのですか?

歌とかあんまなくて、とにかくリズムでゴリ押しするようなイメージで曲作りに入っていったんだけどね。

ー哲さん自身もギターに徹するぐらいの気持ちで?

そう。でも、そもそも俺も含めて、全員”歌”が好きなメンバーだし。歌が出口になってないと、曲として仕上がらなくて…。ドラムの2人も「フレーズをバラしてやる」っていうスタイルに対して、頭ではわかってるんだけど、体では難しいというか。実は俺も、ちょっとドラムやったことあるけど、ドラムセットに座ってると、周りの音って結構聞こえなくて、もう雰囲気でしか周りの音が聞こえないから、互いの音を聴き合うのが大変だったと思う。

ー細かい話ですけど、ドラムセットを2台置くスタジオを探すのも大変ですよね。

それは大変だった。

ー例えば、nilを究極の自由がある中で、深いテーマやコード感があるバンド、THE JUNEJULYAUGUSTを内面の闇を歌とリリックで紡ぐバンドと捉えられるとするならば、そろぞれのエッセンスはあるものの、ただnil+ THE JUNEJULYAUGUSTで「THE BLACK COMET CLUB BAND」としているわけではないと思いますが、このバンドでの”共通認識”みたいなものはあるんですか?

うーん、みんなで「共通項探し出していこう!」ってやるよりも、最終的には歌が出口になるような曲作りに変わっていったからね。なんだかんだ言って、3人同士でやっていたのが5人になって。”ツインドラム”が軸でもあり目玉でもあるけど、それで結果、何するかって言ったら、「5人でいい歌を歌おうぜ!」っていう感じが、今はあるんじゃないかな。

ーしかも、ただ歌を出口にしたわけではなくて、その歌を構成させる曲が、所謂スタンダードな要素が強い印象もあって。

そうだね。特に俺個人としては、nilもジュンジュラも”ルーツミュージック”みたいなものを避けてきていて。例えばブルースとかロックンロールの歌い継いでいく感じとか継承していく感じ、普通にスリーコードって意味でもそう思うのね。でも、それもロックバンドの1つのスタイルでもあるし、今回は敢えてそういうものを探りたくなってる時期になってるのかわからないけど、割と初めてそのムードを出しているような気がして。

ー60年代〜70年代の音楽に挙げられる要素はありますよね。

今までは、出そうになると出さないで違う形にしてたんだけど(笑)、今回はバンドとバンドを知らないみなさんを繋ぐ材料としても、その中にちょっとルーツミュージックっぽいものを隠さずに前の方に出しましたね。

ー因みに音源を出すにあたって、きっかけともなったそれぞれのバンドでクロスオーバーした楽曲を収録するという方向には行かなかったんですか?

うん。全く違うものとしてやりたかったし、それだとnilとジュンジュラのファンの方が、ただ喜んで終わりになってしまうので。やっぱり、全く新しいバンドとして、知らない人にも既に知ってる人にも、同じスタート地点に立って聴いて欲しいなっていうのがあった。

ーなるほど。入口のきっかけにはなったけど、既存の楽曲でやることは、新たなバンドという平等性が崩れますもんね。

そう。ツアーのリハーサルを始めてて、持ち曲がアルバムの12曲だけど、誰もnilとジュンジュラの曲をやろうって言わないですね。

ーその12曲は、全て哲さんからのものですが、これはレコーディング前に原曲は作られていたんですか?

最初に、リズムを主軸にしてたセッションで「このリズム良いよね」っていう、断片的に残ってたものと、いつも自分の歌とギターで作る要素が、良い感じにミックスしたのが、だいたい原曲になってますね。

ーということは「THE BLACK COMET CLUB BAND」として、5人で奏でるという部分の意識が強かったのでは?

すごく。例えば、ライブのことは想定していて「30分間延々同じプレイをしても、お客さんを満足させられるジャム・バンド」みたいなイメージでもあったから。でも結局、みんな歌が好きだし、飽き症でせっかちだから、そうはならなかったけどね(笑)。

ー実際のレコーディング期間はどのくらいだったんでしょうか?

だいたい2週間ちょいぐらいで、実際の録りが10日ぐらいかな。

ーバンド構成が特殊ですし、且つ初めてのアプローチな中で「その期間でやれちゃったんだ!」っていうのが、正直な感想ではあるのですが。

メンバーとスタッフ全員が「ツインドラムのバンドをやったことがない」っていうのが、まず大事件で(笑)。トリオだと、録りに1週間も掛からないんだけど、単純に5人バンドだと考えたら、そもそも録音の量がトリオより2つ多いし、しかもドラム2台っていうね。だからまず、レコーディング初日に精密なデモテープを作ることから始めて。レコーディング初日って、セッティングと音決めに半日は掛かる。いつも使ってるスタジオとエンジニアでやってもそうだから、どうせなら「音決めをエンジニアがしてくれてる間、同時進行でバンドはデモレベルでざっくりと全曲を録ってしまって、目に見える音楽地図を書こう」と思いついたのが大きいですね。

ー探りながら望むことも想定出来ていたけど、初日である程度の表情が見出せたということですか?

うん。これがすごい重要だった。このやり方を初日にやって、例えば歌も仮歌で歌うんだけど、悩んでた歌詞も「これでいこう」ってなったし、次のプロジェクトでもこうやるのもいいなって。

ー端的に言い換えると、すごく効率的ですよね?

そう。2日目以降は12曲分のセッション・データを、全て上書きしていくっていう状態だったからね。

ー収録曲について伺っていきたいのですが、「The Party Song」のフロア・タムが始まりにぴったりですが、ツインドラムの考え方として、例えばギターで言う、リズム・ギターやリード・ギターという分け方をされているんですか?

リズムと上モノという分け方は近いかもしれないですね。

ーその役割分担や構成については、風間さんと梶原さんが話しあって?

最初は俺のイメージを2人に伝えてたんだけど、自然と役割分担が出来てて。最終的には、風間がボトムにいて梶が16インチのすごい小さいバスドラを使ってるから、ちょうど良い上モノって感じのドラム。「The Party Song」だと、ギターはドラムとぶつからないように極力シンプルなことしかやらなくて、装飾音はいらないっていう。特に、ギターとベースが裏のノリを出してくるっていうのが普通はやるべきなんだけど、これは良いバランスでミックス出来ましたね。

ー哲さんの歌詞の言葉遊びも、リズムに近いような表情があって、nilやジュンジュラではない要素がいきなり全開ですしね。

適当ですけどね(笑)、そう言ってくれて良かった(笑)。

ー「Hide & Seek」では、どことなくプログレっぽさを感じたのですが、佐藤さんの音色が印象的ですね。

そもそもクラシックよりのピアニストだから、彼の中にはプログレは全くなくて、キーボーディストの多彩な音色ってもの自体は、全く得意分野ではないっていうか。ある種、彼にとっても全く違うことをやってもらったから、認識は全くないと思うし「この曲には、きっとこうだよね」っていう、想像みたいなのでしかやってないと思う。

ー佐藤さんの中にモチーフがあるわけではなくて、あくまで楽曲からインスピレーションした結果、この音色になったんですね。

本当は全部ピアノで弾いた方が、彼にとってはハマるはずなんだけど、でも今回は「ジュンジュラじゃないからね」って。それは全員にとっても、初めての試みであるはずで。本当は、俺もギターで裏のカッティング出していきたいけど、それをやらないっていうのは、ある意味違う手法だしね。勝さんもドラマー2人もそうだし、もちろん統の鍵盤も。

ー細かな要素ですが、nilやTHE JUNEJULYAUGUSTでは、哲さんはギターを固定されているイメージがありましたが、今回は曲によって変えられているんですか?

ステージはまたちょっと新しいのを使ってるんだけど、今回のレコーディングは全部335でマーシャルを鳴らして。それこそ、ルーツミュージックじゃないけど、1972年製造のあのギターで、全て出すっていうのをやりたくて。

ーなるほど。歌の「もういいかい?」「まあだだよ!」の奥行き感も、すごくリアリティが出ていて、ちゃんと「もういいよ」でボリュームも絞られる遊び方も、このバンドだから出来るんだなぁと。

「こうした方がいいよな」「統はライブのとき、あれやってね」みたいな感じで、レコーディングでミックスしながら、次のライブのこととか決めてる。どうアレンジしていくかも、ミックスしながらみんなで話し合いましたね。だから、既にライブでこの曲をやるとエンディングが伸びてる(笑)。

ー(笑)。「No.9」は、ダンクラ的な要素が入ったナンバーで、リスナーからも「こっちの引き出しあったの?」ってなるような曲に仕上がっていますね。

この感じを8ビートにした雰囲気の曲は、nilでもよくやってて。その雰囲気のままいかずにぶっ壊して、違うものとして聴かせるっていう、俺のやりがちなことなんだけど(笑)。

ー確かに(笑)。

今回は、俺のルーツミュージックの中にはファンクもあるし、それに対するオマージュでもある。せっかく統くんが良い音色持ってるし、キーボーディストとか弦楽器の人がいないと、この感じって出来ないからね。

ーそして歌詞では、憲法9条を掛けているかのような内容にも関わらず、ここまでポップに鳴らすこと自体が、最強のアンチにも思えました。

どうなんですかね(笑)。でも「No.9」って聞いて、憲法第9条ってすぐに思う人は珍しいですよ。

ー本当ですか?

この時期だから、みんなすぐ気づくかなと思ったけどね。メンバーも「なんだ?なんだ?」って、しばらく考えてて(笑)。

ーある意味、それで楽しませる情景が浮かんだり、その雰囲気が勝ることがこの曲にあるならば、それはそれでいいのかもしれないですね。

うん。意味合いがそうだとしても、ゴキゲンに楽しめちゃってるっていうのが、俺は美しいなと思えちゃう。

ーそれがこの曲の魅力ですしね。次の「Jolly Roger」では、「No.9」の後なだけに某○○党の旗を連想してしまうんですが(笑)。

あぁ、なるほど!そこまで深く意味を持たせてなかったけどね。

ーいらない深読みでした(笑)。ただ、もちろん歌詞の内容もそうなんですけど、コードもビートもロックのど真ん中で、哲さんの描かれているルーツミュージックに対して、5人のバトル感がすごく見えますよね。

うん、そういう風に話聞くと、今まではシンプルなスリーコードの曲調をあまりやってこなかったなと思いますね。もともと、梶のスネアのロールが聴きたくて作ったようなもんなんだけど、既にライブでも盛り上がってて。だって「GABBA GABBA HEY」だから(笑)、みんな好きでしょうっていうね。

ーアルバムを通しで聴くと、「Soma」のアウトロでのドラム余韻がとても印象的で、曲の配置が難しかったのではと思ったのですが?

まず、アナログ盤を出すって決めてたから、A面とB面っていう考えがもともとあって。実は、曲順も決めてレコーディングに入ったんだけど、A面の最後は「Soma」か「Odyssey」をみんなで喧々諤々したんだよね。結果、「Odyssey」になったんだけど、「Soma」のドラムに対するリバーブは、仮ミックスのときにふざけて「これ、最後にリバーブつけて」って言ったのが始まりです。エンジニアがふざけて思いっきりつけたのを聴いて、みんなでひっくり返って笑ってたんだけど(笑)。でも何度も聴いてたら、それじゃなきゃダメになっちゃって(笑)。

ー偶然の副産物にしては、すごくマッチしていますよね。

あれでA面が終わってもいいくらいだったけど、もう決めてたから、そのままの位置にしました。

ーそのお話を伺うと、「Odyssey」ではすごくストーリー性のある楽曲になっていて、哲さんの中でもA面最後という意識をされていたのですか?

やっぱり名残惜しさをイメージしてたと思うし、「Odyssey」って響きがあるじゃないですか。「2001: A Space Odyssey(2001年宇宙の旅)」とか車の「オデッセイ」もあるでしょ?

ーありますね。それが今回は叙事詩となって表現されていて。

「Odyssey」って、字の綴りからしてもストーリーがあるような感じがしちゃうし、その言葉だけで何か浮かんできちゃうでしょ。それって、映画の1シーンというよりも、自分が見てきた風景や実体験のような気がしてて。例えば小さい頃の家族旅行で見た、地平線に沈む夕日をふっと浮かべる人もいるだろうし、電車に乗るときに売ってたお茶のやつとかね。

ーありましたね、ポリ茶瓶!懐かしい(笑)。

そういう色んな情景が、みなさんの中で浮かぶはずだから。実は、メンバーの多数決を採ると、「Odyssey」が1番好きって人が多いんだよね。

ー因みに哲さんも手を挙げられた1人ですか?

今は「The Party Song」のギター・ソロが、ずーっと頭の中にあるんですよね。改めて、簡単でシンプルなやつってすごいなあって。

ーそれが正しく「THE BLACK COMET CLUB BAND」の魅力ですし。では、シンプル繋がりの問題作「VAGABOND」(笑)。

これは問題作ですよ(笑)。

ーまず、セリフというアプローチって、これまでありました?

“叫び”みたいなものは、THE JUNEJULYAUGUSTの「Japanese Democracy」にあったけど、これまではなかったかな。

ーこのアプローチになったのは、もともと”歌ありき”で制作に入っていなかったときの、リズムの断片がそうさせたのでしょうか?

そうかも。もしかしたら、リズムとユニゾンの歌になりそうだったのを避けたのかな?

ーしかも、その辺のパンク・バンドより「馬鹿」をストレートに歌っていて、個人的に行き先の高円寺がしっくりきたんですよね(笑)。

そうだね(笑)。こっちもやってて気持ちいいし、この曲もメンバーみんな好きみたい。

ー間違いなくライブ映えする楽曲の1つだと思います。続く「Running Bird」では、ある意味「No.9」で魅せたような、哲さんの持つ” 相反する遊び方”ではなく、すごく自然な「THE BLACK COMET CLUB BAND」が出ていますよね。

そうだね。曲の世界観とか言葉とかで”ミスマッチしてるマッチングの良さ”っていうのを俺は探しがちだよね。これはサビ・タイトルの「Running Bird」に呼ばれて、歌詞の言葉たちが乗っかっていったのかな。”飛べない鳥”って書き出した時点で、もう道筋が出来てたと思うし。

ーこのバンドのキーワードにもなっているルーツ・ミュージックや、そこから派生する1つのストレートさが、この曲には色濃く出ていますし。

普段だったら、ミスマッチのマッチングを狙いにいって「No.9」みたいなことになるとしたら、これはマッチングの良い方に、自分が進んでやってたのかもしれない…なーんて考えてやってないしな(笑)。でも、ちゃんと質問してくれるから、振り返ってみると出てくるもんだね、久し振りに頭まわしたけど(笑)。

ー産んだばかりという部分があるのだと思います(笑)。それこそ「BANDEIRA」だと、このバンドだからこそ出来る”シンプルさ”の凝縮された美しい曲になっていて。

そうだね。今回、ギター・ソロだけは別で録ってるけど、ダビング・ギターって殆どしてなくて。よく広がりを持たせる為に、2〜3本目って同じようなフレーズ入れたりするけど、全然やってないのはもうドラムがそれを仕上げちゃってくれてる。言っちゃえば、ベーシック・トラックしかないぐらいなのにストーリー性がちゃんと出来たし。わかりやすく言うと、ZIGZOやnilの半分しかギターを入れてない。

ーそう伺うと、より美しくメロディを引き立たせられる音は、ドラム2台が中心であることという部分が改めて驚きですし、歌詞の面でも「Jolly Roger」とは真逆にある旗が見えていて、そこにインスパイアされた各パートの組み合わせが絶妙ですよね。

確かに旗つながりでいうと、全く違うものですね。基本的に、統が色んな音色でやってくれてるんだけけど、「ちょっとここ広げたいから、何か入れてくれ」っていうのがあって、ベースを左寄せにしたり。風間がどっしりしたドラムをやってくれるし、そこで梶が上モノドラムやってくれてるから、極力ギターとベースはシンプルなことしかやらないようにして。そこに統がキレイな色を塗ってくれて、歌が出てくみたいなメソッドがこの曲にあるかもね。

ーレコーディング初日の”目に見える音楽地図を書く”という中で得た手応えみたいなものでしょうか?

そうそう。一気に掴めて録っていったから。しかも梶は、絶対アルバムの曲順通りに録りたがるんだけど、それで俺もクセがついちゃって、ここ何年かはどのバンドでも曲順通りに録ってる。

ーこれは9曲目に録ってるから、その感触がかなり反映出来てるんでしょうね。因みに最後のコーラスの部分は、最初のベーシック・トラック時には、既に存在していたんですか?

もしかしたら、デモテープ録ったときに付け足したのかもしれないです。

ーバンドのシンガロング曲となることは、間違いなさそうですね。

ライブだと、最後の合唱のところはもう伸びてる(笑)。

ーやっぱり(笑)。

当然ながらね(笑)。俺も、まだお客さんが歌詞も知らないのに「歌え!」って言ってます(笑)。

ー美しさのあとに「ALL ILL」が入って来る辺りが面白いですよね。このアルバムの中でも、1番退廃的な曲ですが(笑)。

アルバムの中で、急に「ん?」って思う曲があったりするのが好きだし。寧ろ、こういう曲調ならジュンジュラでやろうかな?とか、そもそもこの曲は今回のアルバムには要らないか?と思った瞬間があったんだけど、ドラマー2人が「2人で全く同じことを叩いてやろう」って言ってたから、そういうのも見てみたいかなと思って。

ーそれでもこの位置に収める天邪鬼というか(笑)。

これ飛ばして次に行けば気持ちよく終われるのにね(笑)。そういうところは、nilの3人とジュンジュラの3人が集まったから、ちょっとの捻くれがこういうところに出てはいるんだろうな。

ー哲さんの皮肉ったリリックがまんま出てますしね(笑)。

そうですね(笑)。

ー象徴的なあのベース音はワウですか?

オート・ワウですね。スイッチを入れとくと、勝手に「ビョン・ビョン」っていうやつ。曲を作ってたら、勝さんが急に思いついて、その機材を引っ張り出してきたんだけど、あのベースの音色が全部持っていく曲になったね。

ーこんなにも救われない楽曲の後に、「BWY」で一気に救われるこの流れは…

コントラストが激しい(笑)。歌詞カードを並べると、「病気」って言った真横に「異常ない」って書いてあるからね(笑)。「ただちに健康に影響ありません」の後に「問題ありません」って、これはおもしろいな(笑)。

ー楽曲の持つ匂いもそうだし、歌詞の内容も含め、所謂エンディング曲かなとも思えるのですが?

そうなんだよね、だから6曲目と12曲目は蛇足っていう(笑)。いや、ボーナストラック!

ーそんな(笑)。

でも本当にそう。「BWY」で終われる意見もあったんだけど、曲のムードとバンドの方向性が見えだした頃に「Little Light, Big Shadow」をスタジオに持っていって、なんとなくA面の「BANDEIRA」までの流れをメンバーには共有してて。多分みんなは「えっ?」って言うだろうなと思いながらも、歌を披露して「例えばなんだけどさぁ…」って、言い訳的に説明しようとしたら梶が「こんなの待ってた。こういうメロディをやりたいと思ってた」って。

ーバンドの方向性が見え出したというよりも、方向性が全員一緒になっているような話ですね!

そうだね。さらに「サンバっぽくアレンジしよう」って、梶のアイディアもあって。色んな流れがあっても、アルバムの最後がハッピーな曲だったら、絶対ハッピーエンドだよねってアルバムが好きだし、「そういうアルバムの最後の曲ってイメージってことでどう?」って言ったら、みんな賛同してくれて。アルバムの最後の曲と決め込んで作ってたから、B面の最後に入れるしかなかったっていう(笑)。

ー(笑)。そもそも、こんなに救えない「ALL ILL」の後に「BWY」を持ってくることは決めていたんですか?

決めてなくて、他に何曲か候補があったよ。やっぱりアナログも出すし、A面5曲:B面5曲・A面6曲:B面6曲とかパターンはあって。アナログだと後半の曲で音質が下がっていくのを考えると5:5なんだけど、アルバムのバランスを考えると6:6だから、音質の面は気にはなるけど、どうせCDで聴くだろうって(笑)。

ー現実的な矛盾を抱えて(笑)。

それで、他に候補があったんだけどスタジオで録ってるデモをアルバムの曲順にして、メンバーみんなで聴いて、全員の意見は固まったんだけど、そこで統が「因みにこの曲も良いっすよね」って、曲作りの初期段階に録ったデモを引っ張ってきて。

ー要はお蔵入りにしていた曲ということですか?

なり掛けた(笑)。完全にこの曲の存在を忘れてて、ものすごい新鮮な気持ちで聴いたら「スゲエ良い曲だ」って。慌ててみんなでアレンジして、他の候補曲と差し替えて、「BWY」を入れることになった。

ーもし、佐藤さんが言ってくれなかったら…

本当にそうで。でも彼は、そういう危機管理マネジメントが出来るから(笑)、次のアルバムを出すってときに、多分引っ張り出してくれたと思う。だから、永久にお蔵入りってことはなかったと思いますけどね。まだライブ2〜3回だけど、もう手応えのある楽曲ですね。

ーそしてラストの「Little Light, Big Shadow」で、改めて5人であることを感じました。もちろんnilでもジュンジュラでもない中で「THE BLACK COMET CLUB BAND」というロックバンドをこの曲で1つ、完成させられてるようなイメージもありますし。歌詞でもマーチン履いててブレーキは壊れてるし(笑)。

「大丈夫?」っていう(笑)。これ、環七から246で第三京浜って、完全に横浜方面に行ってるよね。

ー「何のルートなんだ?」っていう(笑)。この曲が最後にあることによって、横浜への道のりの時間もそうですけど(笑)、これまでの11曲が、本当にカーステから流れているような情景が浮かぶというか。

確かに。この曲は、ルーツミュージックに対する、尊敬とか感謝を示せたらいいなって。半世紀前の大発明に、未だ衝撃を受けながら「ありがたく音楽を続けさせていただいてます」っていう感じなのかな。

ー先ほど「BWY」が最後と言っておきながらなんですが、この曲でまた「The Party Song」に戻れる、決して最後の曲という風に思えない錯覚要素があるような気がしていて。

それはあるね。「Little Light, Big Shadow」のサンバっぽい感じとコード進行、ちょっと軽いタッチでアルバムが終わって、もう一度聴こうって1曲目の「The Party Song」に戻ったとき、音階としてすごいヘヴィな印象を受けるんだよね。

ーそれで繰り返し聴けてしまうんですよね。

すーっと上昇していって、また落っこちていく感じが、何回でも聴けちゃうよね。カセットテープ世代・アナログレコード世代だし、A面B面っていう流れを大事にしていきたいなって。CDって、7曲とか8曲で十分な気がしてるから。

ーこのバンドをやることで、再確認も出来た感じがしますよね。

ルーツミュージックを辿って、そういう部分も感じられましたね。これを機会に、みんなレコードプレイヤーを買えばいいのに。

ーそれは書いておきます(笑)。そのための「THE BLACK COMET CLUB BAND」のアナログ発売ですから!そして、このアルバムを提げたツアーが10月から始まりますが、初ワンマンということもあり、これまでお披露目してきたフェスや2マンイベント内容とは、別プランになりそうですか?

そう、ワンマンだからね。アルバム曲が12曲で、今から曲を作ってもいいんだけど、さらに馴染みのない曲を増やしてもみなさん退屈しちゃうだろうから(笑)。

ーそんなことないですよ(笑)。

プラスアルファでカバー曲はやります。1マンで、だいたい20曲ぐらいできれば良いかな。

ーおお!アルバムの感触が良いだけに、それも期待大ですね!

だとすると、カバー曲で…7〜8曲か。20曲もやんなくていいか(笑)。


取材:2015.09.16
インタビュー・テキスト:Atsushi Tsuji
撮影:大参久人

リリース

1st full album 2015.10.7 Release
1.Party Song
2.Hide&Seek
3.No.9
4.Jolly Roger
5.Soma
6.Odyssey
7.VAGABOND
8.Running Bird
9.BANDEIRA
10.ALL ILL
11.BWY
12.Little Light, Big Shadow

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【ライブ】

THE BLACK COMET CLUB BAND TOUR 2015
10/17(土) 大阪:JANUS  開場17:30/開演18:00
チケット前売り¥4,000 一般発売日8/29(土)
チケットぴあ Pコード:271-458 / ローソンチケット Lコード:52342 / e+ / CNプレイガイド / 楽天チケット10/18(日) 名古屋:ell.FITS ALL 開場17:30/開演18:00
チケット前売り¥4,000 一般発売日8/15(土) チケットぴあ Pコード:271-604 / ローソンチケット Lコード:4143110/24(土) 東京:下北沢GARDEN  開場17:30/開演18:00
チケット前売り¥4,000 一般発売日8/15(土) チケットぴあ Pコード:236-006 / ローソンチケット Lコード:73267 / e+ / 店頭【アーティスト情報】
WEB http://theblackcometclubband.com/
Twitter https://twitter.com/afro_skull/