人間椅子「怪談 そして死とエロス」インタビュー

これまでのバンド生活の中で一番苦しかったです(笑)—和嶋

─SNS投稿等を見ていると、年末はずっとレコーディングでしたね。

和嶋:録り終わりが、世の中の仕事納めに重なったっていうか。25日に全部の作業が終わって、そのままマスタリングみたいな感じでしたね。本当は、その日までにほぼ終わっていなきゃいけなかったんですけど(苦笑)、TD作業と並行しながらだったので、25日未明からギター・ソロとか入れてましたよ。

─となると、いつものレコーディングよりも難航したのですか?

和嶋:やっぱり、年内に全て仕上げなきゃいけないっていうね。普通の月だったら、月末まで伸ばせたかもしれないですけど、年末なので全部(その他作業工程)が止まっちゃうんですよ。しかも、アルバムの発売日が決まってるからずらせないし、それをずらすと僕たちの活動が危うくなる(笑)。

─何とか収めたと(笑)。因みに年末のレコーディングは、人間椅子としても初めてですか?

和嶋:初めてですし、年末進行は地獄のようだよ。これまでのバンド生活の中で一番苦しかったです(笑)。でもね、おかげさまで一日一日をすごい集中力で過ごせましたよ。

─そして、現在はプロモーション期間ということで、実際に制作したものを言語化していく日々を過ごされていると思いますが、新しい気づきはありましたか?

和嶋:まずね、制作してるときは精一杯なわけですよ。時間もない中で、ベストを尽くそうってやって。もちろん、良いものを作ってる手応えを感じながらやっているんですけど、脇目もふらずに制作してたから、いざ聴き返してみると「思ったより良いものが出来てる」という第一印象でしたね。(鈴木を見て)どうですか?

鈴木:なかなか良い、珍しく(笑)。僕は大抵、出来たものは聴かないんです。レコーディングでさんざん聴いてるから、いつもは(聴かなくて)よくなっちゃうんだけど、今回はずっと家で聴いてますね。

─メンバー自身も、納得の出来上がりということですね。

鈴木:何回聴いてもいいなぁって(笑)。今日は自分の歌、次の日は、和嶋くんの歌、ノブの歌みたいに交互に聴いてます。

和嶋:僕は、流れがちゃんとあるから通して聴いてる。飽きずに聴けるっていうか。もし、捨て曲って考え方があるとすると、このアルバムには捨て曲がないんです。

ノブ:僕も和嶋くんと同じように通して聴くんだけど、毎回「アルバムが出来た!」っていう喜びがあって、結構聴くんですよ。しかも、聴き直す度に新しいところに耳がいって「ここ、カッコイイ!」「こんな風にやったんだ!」って気づく。特に今回は、ベースもギターもドラムも僕の好きな音像になってるのもあって、車を運転してるときにずっとリピートして聴いてるんです。「怪談」って、タイトルに含まれてるせいかもしれないですけど、音読されてるように聴こえるときがあって。一曲一曲にも物語があるし、このアルバムを通しての物語もある。それがまた新しく気づいたことでもあって。しかも運転して聴いてるとね、すごく乗れるんだよね(笑)。

和嶋:良いロックの聴き方だよね。

─山道が全然苦じゃないみたいな(笑)?

ノブ:道のりを長いと感じないし、もう全然、眠くならないんですよ。ずーっと映画を観るように、ストーリーを頭に入れながら聴いてる感じがしてます。

─確かに前作の「無頼豊饒」より、楽曲がすごくバラエティに富んでいる印象があります。

和嶋:お客さんも増えてきましたし、色んな媒体でも取り上げてもらえるようになったんで、ここでまた一つ、間口を広げたいという思いはありました。例えば、今までの僕たちのタイトルって「無頼豊饒」のように思想的だったりして、ちょっとわかりづらい部分があったんですけど、若い人に聴いて欲しいっていうのもあったし、キャッチーな感じのタイトルで尚且つ、あんまり理屈っぽくないようにしたいと思ったんですよ。僕たちがやってる「怖い」っていう切り口から入りつつ、皆さんにエネルギーを与えたいと。「怪談」ってタイトルにすれば「この人たち、怖いことやってる人たちなんだ」って、すごいわかりやすくなるかなと思ったんだよね。

─それは最初にあった「泥の雨」の書きおろしの時点で、アルバムのコンセプト・イメージがあったんですか?

和嶋:「泥の雨」を作ったから、見えてきたものがあったね。アニメのEDテーマになるということで、色んな参加アーティスト・若いバンドもいる中で、人間椅子らしくやるにはどうしたらいいのかなと考えて、敢えてタイアップの曲ではやらないような、ヘヴィなサウンドで現代の恐怖を歌って。尚且つ、割とわかりやすいメロディにしようと、ちょっとキャッチーさも入れてみたら、なかなか良い出来栄えだった。ここで現代の怖さを歌ったから、次は現代が失ってしまったものを作ってみたいというコンセプトが出来ましたね。小泉八雲とかの昔の怪談って、怖さもありつつなんか美しいんですよね。死者と人間との交流があったり、ただ怖いってだけじゃなくて生きるってことを訴えかけてるような気がして、そのスタンスでやりたいなと。

─そういった生と死の表裏一体的な部分において、タイトルにもある「エロス」も生や命を伝えるためのキーワードとして必要だったのですか?

和嶋:「怪談」ってタイトルをつけたのは、死を意識することによって命の大切さ、ちゃんと生きるって大事だなってことが言いたかったんだけど、「怪談」だけではなかなか伝わらないと思ったので、副題として「そして死とエロス」をつけてみたんです。「エロス」って、生きる上ですっごく大事なことって言いますかね(笑)。それを出すことによって、生というものを意識して欲しいという副題なんですよ。例えば、動物は交尾期じゃないと交尾をしないので、エロスのことはきっと考えてないですけど、人間はそういうイメージが原動力にもなってる。綺麗な花を見てもエロスを感じたりするのは、そこに命を見るからで、それは生きるっていうことの側面でもあると思ったから「死とエロス」というタイトルをつけたんです。それでエロスにちなんだ楽曲も入って、結果的にバラエティに富んだ内容になったんだと思います。

─ノブさんが車の中で聴かれるときに「音読」と表現されましたけど、音として聴くことによって、そういった訴えが伝わるんだなと納得出来ます。

和嶋:訴えかける姿勢にしたのはすごい良かったと思った。やっぱり、色んなイベントに出てみても、軸は変わらないんだけどポップさやキャッチーさは大事だなと思うんですよ。なので聴いてわかる言葉選びを目指してみたんです。

─言葉を変えると、それだけ人間椅子としての表現ハードルが上がっていることになりますよね。

和嶋:例えばオズフェスに出ることによって、より多くの注目が集まるから陳腐な曲は作れないし、ハードルは当然上がってくるんだよね。「なんだ、この程度か」と思われたら、もう人は見向きもしないと思うので「ハードルは、露出するたびに上がっていくんだなぁ」ってことは思いました。プレッシャーが前よりも全然あるんだけど、それは喜ばしいことなんだよね。みんなに聴いて欲しくて始めたことで、ようやくそうなり出して来たのかなぁって。

鈴木:ハードルが上がっていってるのは、和嶋くんが作ってきた曲とかそれまでの流れの中で少しずつ感じてる。リフを作って曲にしていく段階で「これでは敵わない」「これではオズフェスのステージでは出来ない」みたいな基準で曲を2人の前に出していった。それで自ずと高くなったハードルに追いついていくみたいな。

和嶋:やっぱりアーティストっていうのは、そこだと思うんだよね。自分が良いものを作る基準を持っていないで、世の中にただ合わせていくとその基準がぼやけてくるんです。どの批評家よりも厳しいのは自分な筈で、その基準に合わせていくからハードルが上がるんですよね。

─しかも人間椅子はバンドですから、自分以外の互いへの基準も上げていたでしょうし、その結果が「怪談 そして死とエロス」の作品となって表現できた筈です。

和嶋:鈴木くんはいつも以上に、自分の曲に対して厳しかったですよ。「まぁいいや」っていうのは無くて「これだめだな」ってものは、絶対に作り直してきたし。みんながその意識でアルバムを作ったから、クオリティの高いものができたと思うんですよね。

鈴木:俺も和嶋くんの作ってきた曲に「変じゃないか?」って言うんだけど、言うからには自分もがっちり作って、お互い高め合うのが良いなと思って。

和嶋:結局、人間椅子っていうバンドのサウンドなわけだから、自分がこれで良いだろって思ってもノブくんや鈴木くんが「ここは違う」って言ったら「そこはそうかも」と思う。他人の目線も大切にしていくと、自分では気づかない良いサウンドが出来るんだよね。

─それが、バンド生活を25年も続けてこられた要素だと思います。

和嶋:僕らはそれをやらないとダメ。TVに出るわけでもないし、ポップス寄りの音楽でもないわけだから、本当のロックをやらないと残れないし、それをやってきたから今までやってこれたよね。

これで映画一本撮れるんじゃないかと思う程、良い詞だと思う。—鈴木

─1曲1曲の色やストーリーが濃い楽曲ばかりですが、アルバムトータルとしての構成はすんなり決まりました?

和嶋:いつもよりは難航しましたね。割と最初とかは決まったんですけど、今回は最後が決まらなくて、かなり迷いました。

─「マダム・エドワルダ」ではない想定もあったんですか?

和嶋:うん。でも、決まってみるとこの流れが一番良かったなって思うよ。

ノブ:僕もすごくしっくりきましたね。実は、曲順を決めるときは別なスケジュールがあっていなかったんですけど、曲順を話し合っていたであろう机があって、そこに曲名が書かれた短冊が並べてあったんです。いつもそんなやり方をするんですけど、それを見て「あぁ、なるほどね」ってすぐに思えて。さっき言ったみたいに、バラエティに富んでるんですけど、曲の繋がりもすごくしっかりしてると感じますね。

─そう伺うと「恐怖の大王」はアルバムを象徴する部分を担っていますね。

和嶋:そうかもしれないね。「怖い存在」っていうものをイメージしがちなんだけど、破壊する為ではなく、実は世の中を良くするために、光をもたらす為に来るってことが言いたかった。死をただ恐れるのではなく、死があるからこそ生が光り輝く。それを意識することで、精一杯生きられるのではという、このアルバム全体をいみじくも言えたなと。言ってみれば、ダースベイダーはダークサイドだけの人間ではなく、ちゃんと善の心を持っていたみたいな。

─確かに(笑)。1曲目でアルバムのコンセプトを示して、2曲目で怪談の世界に入っていくわけですが、これは鈴木さんをイメージされたんじゃないかと(笑)。

和嶋:形的に?いえ(笑)、これは鈴木くんが持ってきたヘヴィでカッコ良い曲の真ん中の部分で、お経をやりたいっていう話だったんです。

鈴木:お経までは僕がこうしようって言って、お経とくれば「芳一受難」でしょみたいな。

和嶋:これ以外ないと思ったね。ただ、それを耳なし芳一をなぞるだけじゃなく、あの感じをやってみたかったんですよ。ワンシーンを切り取ると言いますか、あらすじっぽくならないようにね。そして般若心経を入れることによって、ある種のお祓い的なものをここですませるという(笑)。

─アルバム聴いて不吉なことが起こらないようにっていう、先に手が打たれている(笑)。

和嶋:うまい具合に芳一がハマりました。引き続き「菊花の数え唄」も、昔の怪談をイメージしました。上田秋成に「菊花の約」っていうのがあって、小泉八雲にも「守られた約束」っていう、殆ど同じ内容の小説があるんです。侍が約束を守るために切腹して、幽霊になって帰るっていう話で、それをイメージして人間の誠実さを書いたんですけど、全く幽霊からは外れた感じになりましたよね(笑)。

─(笑)。ハードロックで数え歌を乗せていることにびっくりでしたが。

和嶋:うん、和風にしたくてさ。リズムに対してメロディを大きくとると、童謡みたいに聴こえるかなと思って。和音階の速いリフに数え唄にすると、普通のハードロックではない感じで面白いなと。それだけ聞くとダサダサな感じがしますけど、そこをギリギリダサくならずに(笑)。次の「狼の黄昏」は怪談から少し離れて、失ったものとかに焦点を当てる感じです。ニホンオオカミとか、みんなが懐かしさを感じるもので。

─鈴木さんの声もハマりましたね。

鈴木:犬ですね(笑)。

和嶋:(笑)。王道なハードロックなんだけど、この曲はすごくキャッチーなんだよね。

─オオカミという言葉自体もキャッチーで反応しやすいですし。

和嶋:そう。オオカミって言葉を聞くだけで、みんながきっと哀愁を感じるし、懐かしさを覚えるなと思ったんだよね。

鈴木:これ、「今のはいまひとつだな」って、何回も何回も吠えるところを録り直したんだよな。

和嶋:録り直したね。自然にやると16分の裏みたいな。

鈴木:未だにさ、どっちでもいいんじゃないかと思ってるんだけど(笑)。お客さんと一緒に俺は「ワオーン」ってやりたいから、決まったところでやってるんだよね。そうすれば、お客さんも「ワオーン」ってやってくれるかなって。今はもうライブでどうやるかっていうのを考えながらやってる。

和嶋:次の「眠り男」は映画の中の怖さというか。カリガリ博士の中に出てくる夢遊病の犯罪者、眠り男チェザーレをイメージしてみました。猟奇っていうのは人をはっとさせるトリックスターみたいなものだと思ってて、それを眠り男っていうキャラクターで歌ってみたんです。

─今のお話を伺って、今回のアルバムは色んなキャラクターが出てきて、曲毎に主人公がいるからバラエティに富んでると感じるのだと思いました。

和嶋:そうか、だからそう感じるのか。みんな主人公がいるんですよ。一人として同じ人物はいなくて、向こう側からいろんな人が出てくる(笑)。「黄泉がえりの街」なんかは「泥の雨」にも通ずる現代の恐怖があって、ゾンビものの詞を書いてみたくて。

ノブ:そうだったの!?

─死人が街を歩いてますし。

和嶋:うん。ゾンビって、人間が神を忘れたときに死者が蘇るみたいなコンセプトなので、もしかしたら現代にもゾンビ出てくるかなって。

─よく海外の映画などであるゾンビとはまた違う登場人物ですよね。

和嶋:うん。仏教用語入れたんでね。どっちかっていうと、頭に白い布をつけた人が墓場から出てくるイメージ。ここでちょっとヘヴィさをまた出した。ヘヴィな曲にはゾンビ(笑)。なかなかプログレッシブっぽい展開があるし。

鈴木:中間部のだんだん上がっていくところのギター・ソロの異常さが良いと思ってるんですよ。ギターっていうよりも、三味線とか琵琶の感じに聴こえるギターの方がいいかなと思って。

和嶋:あの半音ずつ上がるところとか、相当やり直しましたからね。いろんなバージョンがあったんだけど。

鈴木:すっごい絵が浮かんでくるよね。これで映画一本撮れるんじゃないかと思う程、良い詞だと思う。

単純な重さとか単純な疾走感だけじゃないグルーヴ—ノブ

和嶋:そしてまた怪談に帰って、わかりやすいキャラクターってことで「雪女」にしました。雪女って、相当怖いし悲しい存在だと思いまして。だから嵐の感じというか、冷たい感じのリフでやりたかったんだよね、

─「恐ろしい美貌」という一節からも、雪女の表情が見て取れますね。

和嶋:雪女はすっげえ美人だと思うんだよね、見たことないけど(笑)。多分、その人が一番美人だと思う顔で彼女は現れるよ。これは、雪女が自分の元にやって来るという視点で書いてみました。きっと、いろんな葛藤を抱えてる人の前に現れるのではないのかなと。

─冷たさや寒さの体温で感じられることが、楽曲からも伝わっていましたね。

和嶋:そこは心掛けましたね。特に寒い感じや雪の感じは。

ノブ:どのパートのリフも魂が入ってて、構成がしっかりしてるからこそ、ドラムも生きるんですけど、単純な重さとか単純な疾走感だけじゃないグルーヴの出し方っていうのは、3人で意識してやっているんです。その自然な流れで、「雪女」の中盤で雪が降ってる感じが出てるとことか、すごい良いですよね。

和嶋:ちょうど冬に発売にぴったりだと思ったんだよね、余計寒くなるみたいな(笑)。

ノブ:あとこれ聴くたびに、「声立てず唇奪う」ってところで「奪われたい」と思うんだよね(笑)。

─確かに(笑)。僕もそうですけど、ノブさんがイメージする綺麗な雪女に奪われたいって願望になっていくんですよね。

ノブ:なんかもう、それで凍って死んでしまっても幸せなんじゃないかと(笑)。

和嶋:ここはまさに死とエロスを意識しましたね。歌詞でエロス出そうと思ったんだよね。

─そして三途の川で死が歌われて。

和嶋:そうですね、雪女でもしかしたら死ぬかもしれないっていう。だから流れが良いんだよね。ブラックサバスの「Heaven and Hell」っぽい曲で。某雑誌のインタビューで、この曲のリフはオジーが抜けた後のサバス的だと。やっぱりサバスの影響がすごくある曲ですね。

鈴木:とにかくギター・ソロ長くして、泣きのギターを入れて欲しいって言ったら尺が長い(笑)。曲の半分、ギターなんじゃないかっていう。

和嶋:そうなっちゃったね(笑)。例えば、ソロパートとしてすっごい弾きにくいコード進行とかあったとして、その場合は「これはどうやっても出来ない」って言うけど、でも頑張れば出来そうだったら、「面倒臭いからやめよう」とは言わないようにしてます。これは、もともと長尺でした。本当は、あの半分の長さの方が楽なんですけど…

鈴木:そうそう!そうだった(笑)。でも、結局ライブでそれ以上になるんで。

和嶋:まぁ興が乗れば(笑)。これでやってくれって言われたものに、そこで頑張らなきゃ男じゃない(笑)。

鈴木:なんとなく、ピンクフロイドのデヴィッド・ギルモアの泣きのギターをイメージして、盛り上げていくのにこの尺が良いと思ったんだけどね。

和嶋:確かに王道だね。本物のロックはこのぐらいやるもの。あ、この曲のソロは、別の音楽雑誌の方から「すげースケールを感じる」って言われました。だからこの長さでやって良かった。

─曲順的にもここで良かったですよね。

和嶋:1番、冥界の感じがする曲がここに来たからね。三途の川に行くときに、ただ「三途の川って怖いよ」とか「死ぬの怖い」とかではなく、死は終わりじゃなくて次のスタートみたいなことを言いたくて。死で全部終わると思うと、生きることにヤケクソになるって言いますか。死があるから、今ちゃんとやっとかないとって思えるんだよね。

─「どうせ死ぬから」じゃないですもんね。

和嶋:「どうせ死ぬから犯罪やりまくろう」って、思うかもしれないじゃないですか(笑)。そうじゃないってことを伝えようと思って。三途の川っていう比喩を出すことで、全然怖がることはない、死に向かって一生懸命やりましょうっていうことを優しい言葉で言いたかった。ちょうど頭のリフがね、川が流れる感じなんだよね。そこに歌詞がぴたっとはまって、最初から詞と曲が同時に出来たかなっていうぐらい。

─しかも、みんなが渡る川であっても1人で渡らないといけない。この情緒は和嶋さんだから書ける部分だなって思ったりもして。

和嶋:ありがとうございます。やっぱりさ、みんなで行こうぜっていうのは、なんか浅いと思うんだよね。結局みんな一人ひとり悩んだり、一人でやんなきゃいけなかったりするんで。この歳になると、身の回りでやっぱりお亡くなりになった方もいるしさ。自分でも考える歳になったから、こういう詞を書いたのかなぁと思いますけどね。それで、死を扱っても、聴いた人が不安になったり嫌な気持ちになるっていうのは避けなくちゃいけない。自分だって耐えられないしね。ここで一度、現代に戻って仕切り直しという形で「泥の雨」がやってきましたね。じゃあ現代はどうかっていうと、実は怖いものがいっぱいある。

─「泥の雨」から「超能力があったなら」の流れは、現代に戻れる位置ですごくしっくりきました。

和嶋:この流れだと思いましたよ。「超能力〜」も、他の曲とは毛色が変わっているし怪談でもないから、今生きてる人の話ですね。どっちも似たようなテーマを実は扱ってます。

─例えば平和のことや原爆という言葉も入っていて、今の不安なものたちをノブさんが歌うことで、その怖さみたいな感情が軽くなる気もしていて。

和嶋:これは入れられると思ったんです。この曲調なら、原爆や水爆という言葉も。きつくならないっていうか、いたずらに怖くならないなと思いました。

ノブ:いや、そんなに歌がうまいわけでもない俺の歌のスタイルとか、歌ってるところとかを思い浮かべて書いてくれたなぁっていう。ありがとうございます。

和嶋:いやいや。曲調が8ビートだし、ちょうどうまい具合にハマりましたね。お客さんが掛け声を一緒にやってくれそうなところに、ESPとかPSIを入れるとすっごい良いと思ったんだよね。

─そして、ここでまたぐっと地獄シリーズに行きますね。

和嶋:鈴木くんの作詞作曲の曲はアルバムに1曲はないと。

鈴木:俺は、もうそろそろ書かなくていいんじゃないかと思ってるんだよね。

─ええっ!?

鈴木:もう書くとしたら地獄のことしか書けなくなってきちゃった。もうこのままシリーズ化にしようかなと思って。地獄の画集とか見るのが好きなんで、どうしてもこういう流れになってしまうんですよね。

和嶋:鈴木くんの書く歌詞は映像的なんですよね。僕は観念にいき過ぎたり理屈っぽくなったりするんで。そうならずに、視覚で楽しませてくれるのが鈴木くんの歌詞だと思うので、地獄の歌だけど救われる感があるんだよね、楽しくなるっていうか。

─「風が吹いたら元通り」って、本当は恐ろしいんですけどね(笑)。

鈴木:そこが一番恐ろしいところなんだけど。それほど怖いから、悪いことしちゃだめなんだよ (笑)。どんなに苦しんでも、次の機会にまた最初からっていうのは恐ろしいですよね。

和嶋:永遠の苦しみっていう、それは耐えがたいよ。

─もちろん恐ろしいことが書かれてるんですけど、「ぶるんぶるん」「ぐるんぐるん」などの親しみのある言葉で、描写されるあたりが鈴木さんらしい。

鈴木:球技大会みたいなもんだから(笑)。

和嶋:地獄の人たち、遊んでますね。

魂が性を選べるとしたら、女性は美しい存在になりたいと思って生まれてきたのかなって─和嶋

─そして「マダム・エドワルダ」で終わりを迎えます。

和嶋:大作というか、ドラマチックに展開していく感じの曲を入れたいなと思いまして。これはエロスを表す曲として書いたんです。

─「無頼豊饒」では「リジイア」のようなバラードがありましたが。

和嶋:これはヘヴィメタルではないですけど、ハードロックとプログレッシブロックの範疇には入るかなと思います。バラード要素も入れつつ、ちょっとプログレッシブな展開をしてみましたね。

─「明日を掴め」で終わる歌詞で、ちゃんと救われますよね。

和嶋:簡単な言葉で言ってしまうと、女性特有の寂しさみたいなものを男から見たなりに書いてみたくてですね。女性は大変じゃないですか。子どもを育てなきゃいけないし、仕事に生きたとしてもきっと大変な苦労があるだろうし。男とは違う生き物としての寂しさがあるなあと。

─特定の”誰か”をイメージしてというより、「女性」というものをイメージして作られた?

和嶋:あ、そういうことにします(笑)。でも、やっぱり女性って美しいと思う。何かをなすために生まれてきたのが男とすれば、女性は美しさを体現するために生まれてきた気がするんだよね。魂が性を選べるとしたら、女性は美しい存在になりたいと思って生まれてきたのかなって。

─美しさを選んで?

和嶋:そういういう感じがするんです。だって、何かしらみんなかわいさを持ってるからね。すいません、そんな偉そうに言えないですね(笑)。

─(笑)。今までのアルバムで、こういった作品を最後に位置するものは少なかったように思います。

和嶋:ヘヴィロックじゃないので大丈夫かなと思ったんですけど、大作である意味、感動的な部分を出せたと思うので、「あ、最後で全然良かった」って思いました。

和嶋:そうですね。最後にこういう曲を入れても大丈夫になったんです。

─そしてアルバムを引っ提げてのワンマンツアーが2月からですが、公演箇所も増えていますね。

和嶋:久しぶりにこの本数なんですよね。

ノブ:僕が入ってからも初めての本数なんですけど、いっぱい詰め込もうと思ったわけじゃなくて、すごく自然な流れで。いつも行っている土地と、久し振りの土地を含めて毎回やろうと話してるんですけど、このバンド生活25年っていう時間を過ごした次に、一歩も二歩も前のめりになれている姿勢が、今もライブを大切にしている、僕らのやり方に表れてると思いますね。

和嶋:どうせ東北に行くなら、秋田も盛岡もやろうよみたいな話で。秋田って、前に行った記憶は…。

鈴木:秋田で飯食ったのは覚えてるよ。

和嶋:だから秋田なんて、まさに20数年振りですよ。

ノブ:僕は通ったことはあるんだけど、秋田のライブは生まれて初めてなんですよ。

─こうやって、求められる場所が増えていくことは単純に嬉しいですよね。

和嶋:求められてるというか、開拓しに行くんですよ(笑)。

ノブ:秋田スインドルや盛岡チェンジウエーブも「連絡ありがとうございます」って言ってもらえたし、宇都宮HEAVEN’S ROCKは千葉LOOKと店長同士で繋がりがあるから紹介してもらったんですが、「紹介してもらってありがとう」ってすごく嬉しがってたらしいんですよ。僕が千葉LOOKの方に連絡して「宇都宮HEAVEN’S ROCKの店長を知らないから、紹介して欲しいんだけど」って言ったら、「待ってました!」という感じで、即行で、先方から連絡が来ました!

─ウェルカムな状況であることは間違いないと思いますし、その結果がもたらしたツアーとも言えますよね。

ノブ:でも、僕らは開拓・挑戦だとも思うんで。店長さんが「待ってました!」って感じでも、お客さんがいるかわかんないから(笑)。相思相愛であったというか、僕らのことを知っててくれたし、僕らもそのライブハウスに注目したしっていうのは、やっぱり波長が合ってるからこその、このツアーになったのかなと思いますね。

─しかも、新譜でのツアーであることが重要なんだと思います。

和嶋:やっぱり、新譜のツアーって楽しいですよ。お客さんだって、初めてその曲聴く人が殆どだし、曲を作ったときの気持ちを持って演奏出来るっていうかね。1番、熱い状態でやれるわけですよ。これが「あぁ、やっつけで作っちゃったよ」っていうんじゃなくて、ちゃんと納得して良いもの作ったという自覚で行くので、楽しみも一入でございます。


取材:2016.01.20
インタビュー・テキスト:Atsushi Tsuji
撮影:Hiromi Morimoto

リリース

初回限定盤(CD+DVD) TKCA-74333 4,000円(税込)
Amazonから購入
01. 恐怖の大王
02. 芳一受難
03. 菊花の数え唄
04. 狼の黄昏
05. 眠り男
06. 黄泉がえりの街
07. 雪女
08. 三途の川
09. 泥の雨
10. 超能力があったなら
11. 地獄の球宴
12. マダム・エドワルダ
DVD収録内容 全5曲〉
阿呆陀羅経 / ねぷたのもんどりこ / 夜叉ヶ池 / 黄金の夜明け / 見知らぬ世界 (2015年7月24日に渋谷TSUTAYA O-EASTで行われた 『屋根裏の散歩者~「現世は夢」ライブDVD発売記念ツアー~』のライブより)

ライヴ

『怪談 そして死とエロス ~リリース記念ワンマンツアー~』
2/19(金) 大阪心斎橋 BIGCAT
2/21(日) 四国高松 Olive Hall
2/23(火) 熊本 B9
2/24(水) 博多 Be-1
2/26(金) 名古屋 Electric Lady Land
3/4 (金) 仙台 enn 2 nd
3/6 (日) 青森 Quarter
3/8 (火) 宇都宮 HEAVEN’S ROCK
3/11(金) 札幌 cube garden
3/13(日) 盛岡 CLUB CHANGE WAVE
3/16(水) 千葉 LOOK
3/19(土) 赤坂 BLITZ
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