坂本龍一、『戦場のメリークリスマス』以来、34年ぶりの初日舞台挨拶

スティーブン・ノムラ・シブル監督は、「今日は世界で初めての一般公開となります。この場に立てることを光栄に思います。5年以上かけてようやくご覧いただけることは、言葉にならない想いですが本当に嬉しいです。これから観てくれる方達のものになっていくんだな・・・と感じています。」と挨拶。坂本龍一は、「シブル監督、スタッフの皆さん、本当におめでとうございます。僕はただ撮られているだけでしたが、皆さんの努力のたまものですし、ぼくももちろん嬉しく思っています。さっき監督と話していたんですが、僕にはこの映画を客観的に観ることができないから、これから皆さんにどう思われるのか楽しみです」と挨拶した。

ふたりの出会いについて、シブル監督は、自身が参加した2012年5月にニューヨークで行われた、小出裕章氏による福島の放射能汚染に関する講演会であったといい、「坂本さんがそこに最前列にいらして真剣に聞かれていたんです。ずっとファンだったけどその姿に強い衝撃をうけて、ドキュメンタリーとか映画にできればと思い、衝動的に連絡をさせていただきました。」と説明。坂本に提出した企画の切り口は、実際出来上がった映画とは全く違う、NO NUKES 2012(坂本のよびかけにより開催された、“脱原発”をテーマとした音楽フェス)をきっかけとした、コンサート映画の企画だったという。当時、社会的な活動に密着されることに前向きだったことから、その企画に応えることにした坂本は、「自分を撮ってほしいというよりは、2011年以降、激動の中にいる日本社会を自分を通じて描いてほしいという考えだったんです。」という理由であったと説明した。実際にカメラを回し始めたシブル監督は、次第に音楽的なエンディングとしての“CODA”を捉えたいと考えを変えていったといい、坂本も、「新たにどういう音楽が生まれるのかを追うのは僕もいいアイデアだと思いました。時事的な作品にしてしまうと、映画としては(長く観られることのない)短命に終わってしまうから」とその手腕を評価する。

映画では、坂本へのインタビューを通じて大島渚、ベルナルド・ベルトルッチ、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥといった世界的に名だたる映画監督との共同作業についても描かれているが、坂本は、「『戦場のメリークリスマス』は、初めてのことばかりでした。まず役者をやって、それが終わったら音楽。大島さんはああしろとかこうしろとかいうことを全く言わず、僕は右も左も分からないことだらけだったけど、最後まで何も言われることなく、作った音楽はすべて使われていました。次の大きな仕事がベルトルッチの『ラストエンペラー』で、2週間で45曲を作ったけれど、ふたを開けてみると半分しか使われておらずがっかりしましたね・・・最初に甘やかされたけれど真っ逆さまに落とされて(笑)」と懐かしそうに振り返る。

制作を通じて印象に残ったことを聞かれたシブル監督は、「多すぎてとても語れるものではありませんが、幸せなことに、坂本さんと長年関わったことで、僕自身、耳の使い方が変わったような気がしました。すべての音が音楽的に思えるようになって、街を歩くことでさえ楽しめるようになった気がします」とすっかり影響を受けた様子。

本作の撮影中に坂本が中咽頭がんを発症した時のことや、映画の中にもふんだんに使用されている坂本所有のプライベート映像についてなど、映画にまつわる様々な裏話も飛び出し、ふたりからは撮影を通じて長年時間をともにしたゆえの信頼感がにじむ。

本作が、すでにヨーロッパ、アジア、オーストラリアなどでの公開が決まっていることが発表され、最後に、監督は、「ご病気で辛い時もカメラを回させてもらって、坂本さんには本当に感謝しています。この映画は、感じてもらえる映画にしたいと思って作りました。特に“音”をぜひ感じていただきたい。そんな映画はなかなかないと思いますので、ぜひ映画館で観ていただきたいと思います。」と挨拶。

坂本は、「この映画には、余計な説明もなくていいと思います。結論めいたこともなく説教臭くもないです。この映画が日本全国、世界に広がっていけばいいと思います。どうもありがとう」と締めくくった。


出演:坂本龍一  監督 : スティーブン・ノムラ・シブル

プロデューサー : スティーブン・ノムラ・シブル エリック・ニアリ  エグゼクティブプロデューサー : 角川歴彦 若泉久央    町田修一 空 里香

プロデューサー:橋本佳子 共同制作 : 依田 一  小寺剛雄  撮影 : 空 音央  トム・リッチモンド, ASC  編集 : 櫛田尚代  大重裕二  音響効果: トム・ポール

製作/プロダクション:CINERIC  BORDERLAND MEDIA  製作:KADOKAWA  エイベックス・デジタル 電通ミュージック・アンド・エンタテインメント

制作協力 : NHK   共同プロダクション:ドキュメンタリージャパン  配給 : KADOKAWA  ©2017 SKMTDOC, LLC

2017年/アメリカ・日本/カラー/DCP/American Vista/5.1ch/102分

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