ちゃんみな、複合ハウス・スタジオを貸し切り、GoProやドローンも取り入れた一発撮り、長編MVのようなオンラインライブで画面越しの観客を熱狂の渦に

ちゃんみな

ちゃんみなが、ちゃんみなが9月27日、オンラインワンマンライブ『THE PRINCESS PROJECT – In The Screen』をYouTubeで無料配信した。通常のオンラインライブとは異なり、全曲をドラマ仕立てで表現した長編ミュージックビデオのような新しいスタイルのオンラインライブだった。

オープニング、ちゃんみなは一人、ステージではなくバスタブの中にいる。カメラはちゃんみなに寄っているので全体像はまだ見えない。音楽が流れ出すと『As Hell』を歌いながらゆっくりと立ち上がり、バスタブを出る。黒い衣装、黒い髪。真昼の光が、窓に掛かったレースのカーテンを通して室内に淡い靄をかける。けだるさが舞う中、カメラは舐めるようにちゃんみなの動きを追う。彼女は痙攣するように物憂い踊りを踊り、カメラを睨みながら「f**k me」と歌う。
そうしてやがて、光の射す部屋の外へ出ていく。ここでようやく、舞台がプール付きのレジデンスであることがわかる。

ちゃんみな

9月9日にリリースされたニューシングル『Angel』は、4曲を通して天使が堕ちる時の様を表現したものだった。そのラストに置かれていたのが『As Hell』。天使が地獄に落ちた先でどうなったかが描かれているわけだが、その落ち切った先の世界からライブを始めたことには意味がありそうだ。この構成は、ひょっとすると、そっくりそのまま現在のちゃんみなの状況を反映しているかもしれない。

彼女は今回のコロナ禍で、一ヶ月ほど何もできない状態にあったという。それまでに決まっていた予定がすべて白紙になり、ある種のパニックに陥り、無気力になってしまった。ステイホーム期間は誰にとっても未曾有の事態ではあったが、彼女にとってはおそらく地獄のような(As Hellな)毎日だったのかもしれない。その先にあるのがこのライブなら、バスタブに一人閉じこもるオープニングから外の世界に出て行く、という流れは、彼女がある種の再生を経験しているのだと解釈することができるかもしれない。

ちゃんみな

そして、その再生とは、これまで苦楽をともにしてきた仲間たちとともに実現される。
カメラが追うのは、プール傍に用意された玉座とその両横で控えるダンサーだ。玉座に座るちゃんみなを中心に二人のダンサーが激しく踊り『Picky』が始まる。目覚めのまどろみのようなゆったりしたオープニングとは一転して、明るい光が画面の隅々まで満ちわたり、肉体が躍動する。「Kill the fake love / Fake friendship」という歌詞には、 地獄にいた頃のまやかしの関係を振り払うような力強さがある。

続いて『ルーシー』が始まり、玉座から移動するちゃんみなをカメラが追うと、画面に映るプールサイドにはまた別のダンサーたちがビーチベッドで控えている。ちゃんみなの黒い衣装に対して、ダンサーたちはカラフルで派手な衣装。世界がどんどん色付いていく。
ダンサーを残し、敷地を出て隣のバーに移動するちゃんみなをカメラは追う。バーテンダーとカウンター越しに対面して煙草を吹かし合い、酒を酌み交わしながら『Rainy Friday』がはじまる。煙草と酒を通して二人の駆け引きが盛り上がっていく様は、恋愛映画のクライマックスのような高揚感だ。

そしてその駆け引きが最高潮に達しようというところでバーの外へ。愛し合うように踊る二人の脇を、また別のカップルが手を取りながら通り過ぎる。バーに入る二人を横目で追うちゃんみな。楽曲は『Very Nice To Meet You』へと変わる。

ちゃんみな

カメラはこのカップルがバーで「イチャつい」ているところを捉えているが、ではちゃんみなはどこに行ったのかというと、なんと、バーカウンターの中にいた。カップルと対峙するちゃんみな。恋人の浮気相手に皮肉を言い続ける楽曲の内容が視覚的に表現されるわけだが、実際に情事の現場に鉢合わせた上で「Very Nice To Meet You」と言われるのは、控えめに言ってもかなり気まずい。カップルはその場から逃げるが、どこまで逃げてもちゃんみなが現れてしまう。計算されたカメラワークと緻密な演出で、一発撮りとは思えないほど見事なドラマに仕上がっていた。

曲が終わると、カメラはまた別のダンサーたちを映す。彼らの仕草から察するに、仲間の誰かが泣いているらしい。ダンサーたちはカメラの向こう側にいる視聴者に「一緒に行こう!」という仕草を送る。大慌てで駆けつけると、その先には座り込んだちゃんみなの姿があった。先ほどと違って表情が暗い。

ここで失恋ソングとして人気の『Never Grow Up』がはじまる。『Very Nice To Meet You』が表の姿なら、裏にある本当の感情が『Never Grow Up』というわけか。コメント欄は一気に盛り上がり「鳥肌!」「こんなの無料で見ていいの?」といった書き込みで溢れかえった。

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落ちサビの前には、この日初めての短いMCも。
「今日はみんな見てくれてありがとう! スクリーン越しのあなたもとっても綺麗です。今日も一緒に歌ってね、Singin’!!」
そうして手を耳に当てる。いつものライブではフロアから大合唱が起きる部分だが、配信という形でも、同時視聴している約一万人の声が聞こえてくるようであった。
この曲から続く『ボイスメモNo. 5』への流れが、この日いちばんコメント欄が盛り上がった瞬間だっただろう。ちゃんみな自らGo Proを持ち、ダンサー全員とプールでパーティータイム。腕一本分という距離の近さやカメラに当たる水しぶきが臨場感を与える。

ラストは『Angel』。みんなこの曲を聴きたかっただろう。プールで盛り上がり続ける一部のダンサーたちをバックにしつつ、4人のダンサーたちと息の合った掛け合いをしながら、最高潮のムードでライブは終わった。
終演後もコメント欄には「アンコール」の声が鳴り止まない。視聴者のリクエストを受けて、本映像は10月4日(日)までアーカイブ配信されることになった。アンコールがアーカイブ配信というのも新鮮だが、今後はこのスタイルが広まっていくのかもしれない。

さて、いくつかのインタビューにおいて、ちゃんみなは、『Angel』が以前とは明確に異なる手法で制作されたと語っている。これまでは、起きた出来事を俯瞰して、全体像を把握した上でひとつの感情に落とし込んで楽曲に昇華させていた。しかし『Angel』では、彼女は出来事の只中にいる。それゆえ対象との距離が近視眼的なまでに近い。制作直後は、自分でも説明が追いつかないほどだったという。言い換えれば、『Angel』では、監督目線からプレイヤー目線へと変更されて制作されたわけだ。

プレイヤー目線という考え方は、今回の配信方法と似ている。俯瞰ではなくカメラという操作された目線で見せること、なおかつ時にはセルフィーも使うほどの至近距離で撮影すること。これらの方法によって、視聴者は、ステージから離れたフロアで全体像を見るのではなく、ちゃんみなとダンサーたちが繰り広げる物語の只中に放り込まれ、出来事をともに経験している感覚を味わう。その結果、ライブとはまた違った種類の臨場感と一体感が生まれる(同時に、曲によっては複数のカメラで細かくカットを割り、ドローンによる空撮で全体像を見せるカットを挟むなど、ひとつの映像作品としてのバランスにも細かい注意が払われていた)。
そう考えると、今回の長編ミュージックビデオ風オンラインライブという配信方法は、『Angel』が生まれた時点ですでにちゃんみなの頭の中に構想されていたのかもしれない。
コロナ以降、多くのアーティストがオンラインライブに舵を切りつつあるが、今回の試みは、そうした流れの中で新たな選択肢を提示したと言える。
しかし、この配信は、具体的にどう定義付けたら良いのだろうか? ライブだったのか、ミュージックビデオだったのか、あるいは音楽映画だったのか? この問いに答えを出せる人はいるだろうか。
ひょっとすると、問い自体が無意味なのかもしれない。ちゃんみなは、それらの垣根を一気に飛び越えてしまった。

文:山田宗太朗

ちゃんみな “THE PRINCESS PROJECT – In The Screen”

https://CHANMINA.lnk.to/OnlineLive2020
※2020年10月4日23時59分までアーカイブ配信中。

セットリスト
M1. As Hell
M2. Picky
M3.ルーシー
M4. Rainy Friday
M5. Very Nice To Meet You
M6. Never Grow Up
M7.ボイスメモ No. 5
M8. Angel

■ちゃんみな “THE PRINCESS PROJECT – In The Screen” (Digest Movie)

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