坂本龍一が最も心打たれた音とは? 坂本龍一が自身の音との関わりを語る 12/11(月)トークショーレポート

坂本さんと樋口さんは、最新アルバム「async」発売を記念して4月に行ったアンドレイ・タルコフスキー作品極上音響上映イベントに続いての対談。その際に坂本さんが語った<雨の音を録音すること>が樋口さんの印象に残っていたといい、本作でもその姿が収められている<雨の音を聴く>ことについてからトークはスタート。
坂本さんは「難しいんですよ。」とポツリ。ポスタービジュアルで使われている庭でバケツを被り雨の音を聴いているカットの時の様子について、「雨の音自体は僕らには聴こえないんです。僕らがザーザーとか雨音といっているのは、この場所でいうと土や塀や木に水滴が当たる音なんです。それでどういう音がするんだろうと頭にバケツを被って聴いているんです。いい音がしたら撮ろうと思って。」と説明。さらに、「傘を差すことで傘が風に揺れたりするからマイクで音を拾おうとしても自然のものとは違う音になってしまうんです。録音機材で直接撮ろうとしても水で壊れるかもしれない。だから本当に難しいんですよ。録音のプロの人がどうやってるのか聞いてみたいぐらいです」とその難しさを語る。続けて風の音についても、「風の場合は空気が勢いよく移動してるから。これも僕らが聴いてる風の音とは随分違う」と言いながら、マイクに息を吹きかけて分かりやすく説明。

坂本さんが録音という行為に興味を持ち始めたのは高校入学前後のことで、オープンリールのテープレコーダーをどうにか購入し、当時流行っていたザ・フォーク・クルセダーズの「帰って来たヨッパライ」の真似をしようと研究したといい、「一番最初に録音に興味を持ったのは彼らのおかげかもしれない」と振り返る。
映画でもその姿が捉えられているフィールドレコーディングについても話が及び、今まで一番印象的だった音は、その取材の様子や音も実際に映画で聴くことができる、グリーンランドの氷河で撮った氷河の中をかすかに流れる水の音だという。レコーダーの電池が余りの低温ですぐ止まってしまうアクシデントに見舞われながら少しずつ撮り進めたといい、「数百年前にできた氷河の中でほんの少し溶け出して流れる水の音は、時間の重みという観念的なものもあって本当に感動的でした。その当時の地球環境の音でもあって、今思い出してもグッとくるものがあります。」と熱っぽく語る。

爆音映画祭の仕掛け人として数々の個性的な上映イベントを行っている樋口さんは、「映画を爆音で聴くとひとつひとつの音の違いがよく分かるんです。逆にいうと失敗した音も拾ってしまうことがあるから、この映画を本当に爆音でやっていいのか迷うこともあります。でも、<聴く>という意味でいうと、いい音悪い音を超えて、観る方が面白ければそれでいいという言い方もできますよね。制作者にとっては聞かれたくない“録音に失敗した”音はすごく面白いんです。それが面白いと思って爆音上映をやってるんです。」と“失敗した”音へのこだわりを明かす。さらに、「ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』はフィルムで上映すると音にノイズが入ってるんです。フィルムが切れていたりして。通常の爆音上映ではそういう音は消して映画元々の音に近づけようとしますが、『ゾンビ』についてはノイズがあった方が面白く感じられるんです。時を経てノイズがどこかで乗ることも想定に入れて作られているかのように思えてきて。」と独自の見解を披露。ふたりはそれぞれノイズがあえて盛り込まれた映画や音楽について具体を出しつつその魅力を語っていく。
その他、映画の冒頭シーンで映し出される、東日本大震災の際に津波を被った宮城県農業高等学校のピアノの現在や、引き方を学んでいない楽器を鳴らすことの魅力、それぞれが仕事をしたことのある作家の音にまつわるユニークなエピソードについてなど、40分のトークではとても語りつくせないようだった。

『Ryuichi Sakamoto: CODA』公式サイト http://ryuichisakamoto-coda.com/
公式Facebook https://www.facebook.com/ryuichisakamoto.coda/ 公式Twitter @skmt_coda

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