Olivia Dean、大ブレイクまでの道のりを振り返る

Olivia Dean

ポップミュージックの世界において新しい風とはどこからとなく吹き始める。そんなことをあらためて思い出させてくれるアーティストがオリヴィア・ディーンだ。

ブリット・スクールを卒業して、ルディメンタルのバッキング・ヴォーカルから始まったそのキャリアは最初から順風満帆というわけではなかった。ソロ活動に移行して、自主でデビュー・シングル“Reason to Stay”をリリースし、ヴァージンEMIレコードとの契約を獲得したのは2019年だったが、その時点では数多いる無名の女性シンガーソングライターの一人でしかなかった。最初のEPのミュージック・ビデオはイースト・ロンドンにある廃墟となっていたパブを使う形で撮影されていた。

そうした潮目が少しずつ変わり始めたのはセカンドEP『ホワット・アム・アイ・ゴナ・ドゥ・オン・サンデーズ?』に収録されることになるシングル“The Hardest Part”を2020年8月にリリースした頃からだろうか。破局というテーマを扱いながらも、自分は止まることなく成長していて、過去の自分はもういないとポジティヴに宣言してみせるこの曲は異例のスリーパー・ヒットとなり、スポティファイで累計2億回を超える再生回数を記録して、キャリアを代表する楽曲となった。“The Hardest Part”は後にソウル界のスーパースターであるリオン・ブリッジズとのデュエット版もリリースされている。



こうしたブレイクのきっかけ一つをとっても、オリヴィア・ディーンのキャリアには派手なギミックといったものはない。清涼感が感じられる良質な楽曲を紡ぎながら、一歩一歩、前へと進んできた。そうした成果が一つ結実したのが2023年6月に満を持してリリースされたデビュー・アルバム『メッシー』だろう。アルバムに収録されている多くの楽曲をプロデュースしたのはマシュー・ニコラス・ヘイルズで、この人も非凡なソングライティング能力を持ちながら、アクアラング名義で実直なキャリアを歩んできた人だ。そんな匠の技がオリヴィア・ディーンという声を支えることで、飾り気がないものの傑出した作品が完成することになった。

アルバムを締めくくるのは“Carmen”という楽曲だが、これは第二次世界大戦後、南米のガイアナを18歳の時に出て、イギリスに移住した「ウィンドラッシュ世代」の祖母に捧げられた楽曲となっている。オリヴィア・ディーンはそんなガイアナとジャマイカの血統を持つ母親とイギリス人の父親の間に1999年3月14日に生まれた。こうした移民が受けてきた軋轢と成し遂げてきた貢献はイギリス社会の大きな一部となっているが、オリヴィア・ディーンは“Carmen”で「you reigned over a family tree / And I’ll carefully carry the seeds(あなたは家系図を掌握してみせた/私はその種を大切に運んでいく)」と歌う。そんな彼女は1日3時間をかけてブリット・スクールに通って、ポップ・ミュージシャンになることになった。



デビュー・アルバム『メッシー』は2023年のマーキュリー・プライズにノミネートされ、翌年のBBCラジオ1が選ぶサウンド・オブ・2024でも候補アーティストとなり、2024年のブリット・アウォーズでは最優秀新人賞にノミネートされることになった。そうしたメディアやアウォードでの評価はもちろんのこと、デビュー・アルバムが何よりももたらしたのはリスナーからの信頼だろう。彼女は自身の声と音楽の力だけでキャリアを切り拓いてきた。2023年は1500人収容の「KOKO」で行われていたロンドン公演は2024年には5300人収容のイヴェンタム・アポロまで拡大し、2024年のグラストンベリー・フェスティバルではメイン・ステージであるピラミッド・ステージに立つこととなっている。



そして、更なる快進撃が始まったのが2025年だった。2月にはイギリスでは国民的な小説/ラヴコメ映画である『ブリジット・ジョーンズの日記』のシリーズ最新作『サイテー最高な私の今』に“It Isn’t Perfect But It Might Be”を提供し、5月にはシングル“Nice to Each Other”をリリースして、セカンド・アルバムのリリースを発表したのだが、この曲を皮切りに“Man I Need”、“So Easy (To Fall in Love)”とアルバムからリリースされていくシングルがUKのチャートで軒並みトップ10ヒットとなっていく。6月には8万2500人収容のロンドン・スタジアムでサム・フェンダーと共に“Rein Me In”のコラボレーションを披露しており、こちらの音源も全英シングル・チャートでトップ10入りを果たすこととなった。



そうした機運は9月26日にセカンド・アルバム『ジ・アート・オブ・ラヴィング』をリリースすると、一気に花開くことになる。アルバムはイギリス人の女性アーティストとしては2021年のアデル以来となる最多初週セールスを記録して全英1位を獲得し、“Man I Need”が同時にシングル・チャートでも1位を獲得することになった。また、セカンド・アルバムのリリースを受けて、4曲がUKシングル・チャートのトップ10に同時にランクインした初の女性アーティストにもなっている。その勢いは大西洋をわたってアメリカにまで広がり、“Man I Need”は全米シングル・チャートで最高位4位を記録するロング・ヒットとしてチャートにとどまり続けている。現地時間11月15日には音楽ゲストとして『サタデー・ナイト・ライヴ』にも出演を果たしている。



アルバム『ジ・アート・オブ・ラヴィング』を携えて来年4月から開幕するワールド・ツアーにはロンドンのO2アリーナでの6公演、ニューヨークのマディソン・スクウェア・ガーデンでの4公演が含まれている。フェスティバルのヘッドライナーは夢ではなく、時間の問題になった。近年、UKではメジャー・レーベルとの契約を失うことになったレイ、北東部出身のサム・フェンダーといった自らのアーティスト性を犠牲にすることなく、本当の声を音楽にのせてきたアーティストが脚光を浴びる形となっている。そのトップランナーとなったオリヴィア・ディーンがここにきて世界を席巻しているのは、AIも台頭する2020年代に音楽シーンにおける静かな反動なのかもしれない。

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