THE STARBEMS interview vol.33

ー今年6月に山下 潤一郎(Ba)が正式加入し、5人編成となったTHE STARBEMS。現体制初の音源「FIGHTING FATE」「JINGLE JANGLE SONG」を無料配信にてドロップした真意とは?【5-1+1≦5】である THE STARBEMSメンバー全員によるインタビューをお届けする。

ー今年のおさらいからですが、3月にゴスケさんの脱退がありながらも、イベントなど精力的に出演し、自主企画「Day Believe Dreamer」で山下さんの正式加入発表がありました。プラスもマイナスも含む変動の経験は、現在のバンドにとっては、心機一転”新生THE STARBEMS”なのか、それとも、地続きのTHE STARBEMSなのでしょうか?

日高 央 (以下、日高):印象としてはどっちだろう…新生ではないかな。

山下 潤一郎(以下、山下):うん、新生な感じではないですね。

越川 和磨(以下、越川):でも、潤さんが入ってからは、バンド活動の在り方が変わったところはありますね。今までは、バンドメンバーとスタッフのフォロー体制がある中でやってましたけど、今はメンバーだけで完結出来るようにしていて、そういう新しさはありますね。それは、無意識に音やメンタリティーにも表れていると思うし。

日高:まずオレ的には、脱退したペーヤン(Ba寺尾順平)とゴスケ(Gt後藤裕亮)とは、ヒダカトオル(BAND SET)からやっていて、メンバー同士のグルーヴが生まれた中、満を持してTHE STARBEMSとしたつもりだったんだけど、実際はお互いに、音楽の趣味やプライベートとか知らないこともあって、色んなズレが生じてきちゃってた。だから、潤が入ってからは、”メンバー同士のグルーヴを高めよう”というところから、メンバーだけで周るようにした部分はありますね。

菊池 篤(以下、菊池):それによって、人としてのグルーヴが合うのは早かったですね。

日高:責任の所在がハッキリした方が、より引き締まるというか。例えば「曲順表を忘れちゃった っていうのをマネージャーのせいにしないとか、「ステージドリンク忘れた。ゴメン、オレの担当だった」っていうやり取りがメンバー内で在った方が、基本に立ち帰れるし。元々は、メンバー全員がそういうスタートだったわけですしね。

ー演奏パート以外についても役割を明確にすることによって、THE STARBEMSに責任を持って参加している状態が今の体制ですね。

日高:そうです。例えば、潤は曲順表でオマエ(高地)は?

高地 広明(以下、高地):運転…

一同:(笑)。

高地:初めは「メンバーだけで周る」ってなったとき、オレが1番歳下だし扱き使われるかなって思ったけど(笑)、全然そんなことなくて。

菊池:ライブのセッティング中に、日高さんが率先してドリンクを置いたり、セットリストを貼ってくたりしてますし。

越川:敢えて自分たちでやることによって、1日の流れも把握出来るし、それをみんなで共有し合えることが、グルーヴが高まる要因だと思いますね。

ー先ほどの高地さんのお話ではないですが、メンバー同士の関係性もフラットな印象を受けます。

日高:1番歳上のオレも、2番目に歳上の潤もイジられちゃう対等さです(笑)。

ー(笑)。そう言えば、グルーヴを高める要素として「日高塾」なるやり取りがメンバー内であったかと思いますが、それは継続されているんですか?

日高:生徒3人中、2人がいなくなったので(笑)、残りは高地だけです。

高地:いよいよ廃校ですね(笑)。

ー(笑)。それでも、今お話されている雰囲気からも、元々バンドが持っていたアティチュードは失っていないというか。

菊池:みんなが地に足がついたことによって、むしろ増したかもしれないですね。

越川:「自分たちがやりたいことをやるには、自分らでケツを拭かんとダメなんや」っていうのを直接的には言って来ないですけど、日高さんが言っているように感じてて。間に人がはいると誰かのせいにしちゃうから、バンドもメンバーもやりたいことを明確にして行動することって、1番の重要なところだから。僕もヒダカトオル(BAND SET)で来たとき、色んなサポートがあった分、甘えてたところもあったんですよね。だから、バンドで完結するやり方が、新生というよりはGET BACK的な感じで、すごく良いヴァイブスがありますね。

ーもしかしたら、これまで預けてしまっていた部分をバンド自身で取り戻した?

菊池:あぁ、預けてた部分もあったかもしれないですね。そういうのを失くしていく作業だったと思います。

ー以前、日高さんから「山下さんは人生のBPMが早い」というご紹介をいただいているのですが、サポートから正式メンバーになることで変化はありましたか?

山下:ないです。それはTHE STARBEMSに関わったときから変わらないですね。

日高:通称、ポコ兄(笑)とオレは付き合いが長いんで、逆にサポート・正式っていう形が良い意味でいらないというか。お互いがいつでも言える間柄だから、嫌なら嫌って言えちゃうし。そういう意味では、オレもBPMが早いかも(笑)。

ー3月のタイミングで、ギターパートが1つ減ったことに対して、越川さん・菊池さんでアレンジの再構成もおこなわれたのですか?

越川:基本的に篤は変わってないですね。

菊池:コーラスくらい?ゴスケが弾いてたフレーズがないと成立しない曲は、僕が弾いたり西が弾いたり分担して。

越川:空いた間を自分が埋めるというか。最初は、装飾的なギターをやらなければと思ってたんですけど、賑やかなところを殺して「ゴスケのことなし!(笑)」って、吹っ切ってやったら案外すっきりしたんです。前のも良かったんだけど、この5人で成立させられる音を表現したら、自然とより男らしくなってソリッドになったというか。実際に、この5人でのライブもかなり重ねていて、色んな人の印象を聞いても「男らしくなったね」って言われるので、ゴスケはなかったことに(笑)。

日高:そんなに違和感はなくて、逆にしっくりきてるというか(笑)。

ー(笑)。いやらしい話ですが、日高さんがギターを弾くという選択肢はなかったんですか?

越川:重くて、ギターは持てないみたいです(笑)。

日高:オレと潤は腰がいっちゃってるんで(笑)。まあ、曲によってはオレがギターを持つのもありだと思いますけど、2ギターでしっくりきたし、今に手応えがあるので選択肢にはなかったですね。前から観てくれている人からも評判は良くて、例えばGASOLINEのGANちゃんとかも「なんで、人数減ってるのに音が厚くなってるの?」って言ってくれてて。パフォーマンス込みでなのかもしれないですけど、逆に良かったと思えますし、今後もこの体制で行こうと思ってます。

ーでは、この体制で臨まれた新曲の話に移らせていただいて、秋葉知伸さんの起用は日高さんからですか?

日高:そうです。Gacharic Spinのレコーディングで秋葉くんがやってくれたのもあって、ニュアンスは伝えやすかったですね。作業もすごく早くて、どメジャーなものからどインディーなものまでやっていて、小回りが利くんですよね。

ー制作にあたり、音のテーマとして依頼されたことはありますか?

日高:具体的なオーダーはしていないんですよ。早くとか(笑)。Gacharic Spinがそうだったんですけど、ドラムと歌以外は各自が家なりリハスタなりで録って、それをPro Toolsで合わせていくやり方にしました。例えばギターは、全部このスタジオ(インタビュー場所)で西くんが録ってくれましたね。

越川:人間関係がうまく出来なくて、人がいるとギター弾けないんです(笑)。

菊池:そうなのか(笑)?

越川:アーティストやからな、ナイーヴ。

日高:まぁ、そういう小回りが利くところがドンピシャでしたね。

ーなるほど(笑)。楽曲についてですが、今まで「DESTINY」が担っていた役割を「FIGHTING FATE」が受け継いで行くのかな、という印象を受けました。

日高:そうですね。最近のラウドモノとかパンクロックのシーンって、結構二極化じゃないですか。例えば、これは悪口ではなくて、SAに代表されるような、ゴリゴリの男っぽいオールドスクールを踏襲しているバンド。或いは、2010年以降の「半分以上、メタルじゃん」っていうバンド。そういう印象がすごくあって、オレたちにはポジティヴめな曲が少なかったから「明るい曲を作ろう」というテーマで取り組んで、その二極化の真ん中にいれる曲になったと思いますね。

ーある意味、それがTHE STARBEMSの王道になった感じがしますよね。

日高:今までもそうだったと思うんですけど、今回はより明るめに振り切っても良いかなと。

ー前作では、一貫したテーマがあったものの、所謂”日高節”を解放したタイミングでもあったと思いますので、この方向には行きやすかったのでは?

日高:曲自体はすんなり出てきましたね。それまでも5〜6曲作っていたんですけど、割と暗めだったんです。もう1つ、明るくフックがある曲が欲しいと思って作ったら、みんなも受け入れてくれましたね。

ーギターに関しては、越川さんが先導されたというお話でしたが、どういった工夫がされたんですか?

越川:とにかくシンプルです。僕がギターのフレーズを考えるときに思っているのが、中学生でも弾けるものじゃないとやりたくないということです。

日高:キッズ魂に火を着けるね。

越川:所謂、口ずさめるフレーズなんですよ。色んなフレーズを弾くヤツが前のメンバーにいましたけど(笑)、ギターで掻き回さんで良くて、歌がどんだけたつかっていう部分ですね。ジョン・フルシアンテとかもそうですけど、シンプルでいて印象的なプレイがライブでも出来れば良くて、特にフィジカルで表現することが多いから、それができる範疇であれば良いかなっていう。

日高:セカンドまでは、メタルの意識もあって、歌とギターが対等なイメージが強かったし、なるべくビークルから離れようっていう自分の拘りもありましたけど、もうメタルとか特定のジャンルが好き・嫌いとかじゃなくて「◯◯っぽさがなくても良いかな」っていう、自信がバンドとしても出来たんだと思いますね。あと、歌詞でも運命的な単語が出てくることで「DESTINY」から続いてるように、地続きのテーマが歌えてるかなと思います。

1

2