浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS 新木場スタジオコーストでNEW ALBUM「Sugar」を携えた全国ツアーファイナル!!

5月12日(土)、新木場STUDIO COAST。2月14日リリースの最新アルバム「Sugar」を携えた浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSの全国ツアー「Sugar Days Tour 2018」がツアーファイナルを迎えた。

最高の夜だった。5月12日、新木場スタジオコースト。2ヵ月に渡って日本中のライヴハウスを駆け巡った浅井健一&THE INTERCHANGE KILLSのが終了。その大団円はじつに爽快なライヴとなったのである。

 場内が暗転し、オープニングSEであるビージーズの「メロディ・フェア」(映画『小さな恋のメロディ』の主題歌だ)が流れると、ステージ後方にとのメッセージが掲示され、湧き起こる歓声の中を3人が登場する。ライヴはその美しい旋律を打ち破るように、轟音とともに開始。この夜の1曲目「Watching TV」……ものすごいソリッドで図太いサウンドだ。最新アルバム『Sugar』収録のこの曲は、長い海外生活で英語が堪能なドラムスの小林瞳が発音のレッスンをするような、ユーモラスなところもあるナンバーである。しかし3人の演奏は攻撃性満点。その一体感に、冒頭から早々とツアーの成果を見た気がした。

「ハロー・東京エンジェルス! レッツ・パーティー!」

 ベンジーこと浅井健一がそう叫ぶと、続いて高速パンク・チューンの「Vinegar」が炸裂し、フロアのボルテージは一気に上がる。そして今回のライヴでは、そうした快感を後押しするように、曲によっては映像がフィーチャーされていく。たとえば少年が車やバイクを爆走させたり、キャラクターがコラージュされたり……そのアニメーションのイラストはベンジー自身のペンによるものだ。これが曲の世界観を拡大させていくのである。

「今日はみんな、観に来てくれてありがとう。懐かしいやつ、やるわ。みんなで騒ごうぜ!」

 そう言って唄われたのはBLANKEY JET CITY時代の「パイナップルサンド」。鋭く激しいこのロックンロールは、ベンジーがインタビューで「今の3人でやる<パイナップルサンド>、全然違うんだよね。たしかに昔の曲なんだけど、新鮮な感じがあるよ」と語っていただけはあるもので、まさにKILLSバージョンにアップデートされている。これは他の曲にも言えることで、たとえば「SKUNK」はやはりBLANKEYの曲だし、「FIXER」や「危険すぎる」などはソロ名義の、「DEVIL」はJUDEのもの。いずれも彼が叫んできたロックンロールの、とりわけハードでパンクな楽曲である。

 こうしたナンバーのパフォーマンスを高いレベルで実現させているのは、やはり中尾憲太郎と小林瞳の存在が大きい。つまりベンジーのロックンロールを爆発させるにはそれに見合うビートがどうしても必要で、そのためにはプレイヤーの力量と、彼との相性が不可欠なのだ。その点で、このリズム隊は満点。結成から2年が経過し、お互いの呼吸をつかんだ上に、本ツアーでさらに切磋琢磨した3人は今、最強の状態にある。

 そして、その最強の理由のもうひとつが、グル―ヴィーな楽曲が連なる中盤のブロックの深みである。BLANKEYの「ヘッドライトのわくのとれかたがいかしてる車」、新作から「Ginger Shaker」、さらに「水滴」と続く箇所は、タフでアグレッシヴなだけではない、しなやかで繊細な3人のプレイが堪能できた。しかも強く生きることを唄った「Ginger Shaker」、この世界で生きることとそこでの幸せや愛に言及した「水滴」には、現在のベンジーの背中が見えるような言葉がある。そこから後半の「すぐそば」につながっていくさまは、歌と音が豊かな広がりを見せていく、本当に素晴らしい時間だった。

 「Beautiful Death」ではまたしてもポップで、しかもコミカルなイラストが映し出され、興奮はいよいよピークに。そこからクライマックスまでの怒涛の流れには、ベンジーの「全員でブッ飛ぼうぜ!」という言葉が火を点けた。ガッシリと組み合った3人の演奏は乱れることなく、重たい銃弾のようになってフロアに次々と突き刺さる。まったく最上のロックンロール・ショー。そのエクスタシーの終着点は「DEVIL」だった。

 アンコールは2回。一度目のそれでとりわけ心に残ったのは、これもひさびさに唄われたJUDEの頃に書かれたスローナンバー「何も思わない」だ。<もうやめないか 憎み合うのは もうやめないか 殺し合うのは/みんな同じだよきっと>という歌詞は、先ほどの歌の言葉たちと通じる部分がある。愛や幸せの存在を願うベンジーの心は、当時から今まで、ずっとあるものだ。

 そして再びのアンコールでは、まず「DERRINGER」「SALINGER」とBLANKEY後期のロックンロールでまたもフロアが過熱。最後の最後は、KILLSの前作から「Finish Field」だ。ベンジーの少年性が表れたようなこの曲で、ツアーはすべてを終えた。彼は「ありがとう、東京エンジェルス! またどっかで会おうぜ。その時まで全員元気でな!」と、もうひとこと、「憲太郎と瞳にも大きな拍手を」と言って、舞台を去った。時とともに、熱気は少しずつ落ち着いていく。熱く、かけがえのない時間の名残が漂っていた。

 素晴らしい夜だった。3人の演奏はもちろんのこと、映像も、それからツボを心得た照明と、バンドのダイナミズムを見事に表現した音響も。全部含めて、第一級のバンドのツアーにふさわしいスタッフワークだったことを書き留めておきたい。

 さあ、次の3人はどんな姿を見せてくれるのか……? 興奮が晴れていく中、それを思うだけで、胸が高鳴った。ライヴ中にベンジーは「今日でツアー終わっちゃうけど、もちろん、またやるよ」と言っていた。その時には、よりパワーアップしたKILLSのロックンロールが味わえるはずだ。

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