Aqua Timez FINAL LIVE「last dance」

2003年に結成、2005年8月にCDデビューし、「等身大のラブソング」「決意の朝に」「千の夜をこえて」「虹」など数多くのヒット曲を送り出してきたロックバンド、Aqua Timez。
2018年内にて解散することを発表していた彼らが、最後のライブとなる『Aqua Timez FINAL LIVE「last dance」』を11月18日(日)、横浜アリーナにて行った。
チケットは発売と同時にソールドアウト、会場には解散を惜しむ13000人のファンが集まった。

音楽誌『ROCKIN’ON JAPAN』編集長・小栁大輔氏によるライブレポートは次の通り。

ラストライブは17時12分に始まった。最後のライブの、最後のスターターに選ばれたのは、インディーズ時代にリリースした作品『空いっぱいに奏でる祈り』からの“上昇気流”だった。OKP-STAR、大介、mayuko、TASSHIとひとリずつ名前を呼び、「一緒にここまできたんだよ」と語りかける太志。それ自体がポジティヴに弾むように進んでいくビートに合わせ、会場に集まった13,000人が手拍子を重ねていく。ひとりひとりの音が心なしかこれまでよりもくっきりとクリアな輪郭を伴って届いてくるように感じる。2曲めの“MASK”を終え、最初のMCへ。「緊張している自分を感じながらやってる」と言う太志。「全員で作り上げましょう」という言葉から、大介のミュートビートが始まる――“ALONES”。「人のためじゃなく、自分のために笑っていいよ」というフレーズが歌われる曲だ。「ALONE=独り」であることを引き受け、そんなひとりひとりのままで一緒に歩んでいこうという考え方、すべての人を絶対に肯定してみせるというAqua Timezのメッセージが横アリいっぱいに、今夜もいつものように、広がっていく。

続く“Velonica”のイントロではOKP-STARがベースソロを聞かせ、これもまた彼らの大きな武器として長年その音楽世界を支えてきたデジタルと生音が分厚い音像を織りなすミクスチャーサウンドが放たれ、太志から溢れ出してくる言葉が刻まれていく。しかし、横アリ中に飛び交うド派手なライトが安易な感傷を吹き飛ばしていく。

美しいアルペジオに乗せて、「俺にとって、大ちゃんの最後のアルペジオに乗せて何を言おうかって考えてたんだ。あなたたちがいるから、俺たちはあの日のままでいいんだって思えた。すべて受け止めてくれよ」と語る太志。“生きて”が始まり、無数の手が力強く振られ、目の前に壮大な景色が広がる。ステージから放たれた肯定が、13,000人の心と重なり、さらに大きなポジティビティを生んでいく。ひとりひとりが、それぞれを励まし合いながら進んでいくようなAqua Timezのライブは今日もやはり、悲しくなるくらいに当たり前にAqua Timezのライブなのだなと思う。

「みんながいたからAqua Timezの曲は報われたんだよ」———そんな言葉から歌われた“つぼみ”では、5分割されたLEDモニターにメンバーの姿が映し出される。その感動的な演出は、“千の夜をこえて”にも受け継がれ、より一層のエモーションを呼び起こしていく。

メランコリックな“歩み”、ひと言ひと言の歌詞が映し出される映像とともに歌われた、まるで絵本のような“LOST PARADE”、そして、「旅が終わる時、記憶を失うのがルールだとしても、私はあなたの涙を乾かす風になりたい」と歌われる“カルペ・ディエム”へ。言葉と美しいメロディ、優しい歌声、彩り豊かなの5人のサウンドが織りなす、Aqua Timezだけの時間は刻一刻と過ぎていく。

13年の歴史を振り返るVTRに続いて、モニターに浮かびかがったのは「back to 2005」の文字。そしてぱっとアリーナ後方が照らされると、サブステージには5人が立っている。淡い照明に包まれ、軽やかに歌われた“等身大のラブソング”。軽快な裏打ちのビートに体を揺らしながら、言葉のひとつひとつを受け止めていくオーディエンス。その楽しく、切なく、笑顔とも泣き顔とも呼ぶことのできない表情が印象に残っている。

「1曲目で、OKPさん、それとmayukoさん。この女子2名、泣いてました」と笑わせる太志。バンドとファンの思いをつないできたミドルナンバー“ヒナユメ”では一際大きな歓声と穏やかな手拍子が5人を包み込む。この曲を終え、会場内を練り歩きながらメインステージに戻っていく5人に、あらん限りの声援と、オーディエンスひとりひとりからの言葉がかけられている。

白く透明な明かりの中で、5人は“小さな掌”を奏でた。「言葉じゃ伝えきれないけど、ありがとう」———。太志はいつも、それこそ何年間も、同じ、たったひとつのことを伝えてきたんだなと思う。そして、その無骨で不器用で、言いようもなく誠実な思いが、このシンプルにまっすぐに飛び込んでくるメロディと言葉を磨き上げてきたのだなとしみじみと思う。

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