Tempalay

「生きていてください」、『ゴーストツアー』ファイナルでTempalayが鳴らした生命力(2021.5.13 Tempalay@Zepp Haneda)

5月13日、Tempalayが「ゴーストツアー」のファイナルとなる東京公演をZepp Hanedaで開催した。最新作『ゴーストアルバム』からの楽曲を中心とするセットリストが組まれた今回のツアーでは、アルバムのほぼすべての楽曲でベースをプレイしたBREIMENの高木祥太をサポートに迎え、最新のバンドの姿を披露。この日は演出に盟友Margtも迎えた特別な内容で、全12公演に及んだツアーを最高の形で締め括った。

Tempalay

不穏なサイレンが鳴り響く中、ステージ前方の幕が開くと、明滅するフラッシュとレーザーによるド派手なライティングですぐにTempalayの世界に引き込まれる。これまでとは上手・下手を逆にして、上手からJohn Natsuki、高木、小原綾斗、AAAMYYYが並び、一曲目は“シンゴ”からスタート。音源より少しだけテンポを落として、4人の呼吸を確かめるような演奏が印象的だ。

Tempalay

バンドの背後には全面に巨大なスクリーンが配置され、そこに映し出されるサイケデリックな映像とともに、“人造インゲン”や“のめりこめ、震えろ。”といったアッパーな楽曲が演奏されると、かなりの没入感がある。民謡のようなヴァースと、AAAMYYYのクールな歌声によるコーラスの対比が面白い“ああ迷路”では、〈あの管制塔〉という歌詞が、羽田空港と隣接した会場とのリンクを感じさせたりも。

動きの多いプレイでバンドのフィジカルに貢献する高木との化学反応は大きく、リモートを中心としたアルバム制作時は、実際に一緒に演奏する機会こそあまりなかったというが、ツアーを通じて4人のアンサンブルが磨かれたことは明白。高木と初めて一緒に作った曲だという“EDEN”は、ミニマルな前半から一転、歪んだがギターがロックなリフを弾く後半でよりヘヴィな演奏を聴かせる。

Tempalay

そんな現在のバンドのグルーヴが爆発したのが、“未知との遭遇”からシームレスに流れ込んだ“my name is GREENMAN”。この曲では全員がこれまで以上にパワフルな演奏を聴かせ、AAAMYYYのコーラスもいい意味でラフなのが曲の雰囲気にマッチしている。小原に紹介され、重低音でのベースソロを聴かせた高木は曲中にステージを自由に動き、小原やNatsukiと向き合って演奏する様は、さながら往年のハードロックバンドのようだった。

Tempalay

“忍者ハッタリくん”のイントロではエアロスミスの“Walk This Way”のリフを弾き、あの曲が体現していたハードロックとヒップホップの融合は確かに現在のTempalayとも通じる部分があって、ニヤリとさせられる。一転、「コロナ渦で会いたい人に会えなくなって、ばあちゃんの気持ちになって作った曲」だという“春山淡冶にして笑うが如く”は〈体に気を付けて無理はしないでお元気で〉という歌詞で、ハートウォーミングな雰囲気に。

Tempalay

アルバムの曲順通り、アンビエント感のある“Odyssey”、“何億年たっても”が続き、AAAMYYYとNatsukiの共作による“フクロネズミも考えていた”は、シューゲイズな轟音パートが圧巻。さらには、複雑な拍子の“へどりゅーむ”を畳み掛け、音源同様に子供の声の「頑張って練習しました」というサンプリングで終わるユーモアは実に彼ららしい。新作からの曲が続けて演奏されることで、表現の広がりがはっきりと伝わってくる。

Tempalay

高木がBREIMENの新曲“赤裸々”を一節歌い、そこにAAAMYYYがコーラスを加えるシーンから、改めて現在のバンドのいい雰囲気が感じられつつ、小原は今回のツアーを振り返り、「『ゴーストアルバム』とはこれでおさらば。成仏して、みなさんに憑依し続けるでしょう。ツアーはすごく疲弊するけど、朝起きるとやっぱり寂しくて、また何かやり出して……そうやって7年やってきました」と話し、スタッフやMargtに労いの言葉をかけ、最後はオーディエンスに「ぜひ生きていてください。幸せに、適当に」と語りかけた。

Tempalay

意表をつく曲展開とポップなメロディーの組み合わせによる“GHOST WORLD”でのメンバー紹介に続いて、小原とAAAMYYYの歌から始まる“冬山惨淡として睡るが如し”では、スポットライトによって背景に2人の影が映し出され、リズムが入るとともに4人にオレンジ色のピンスポットが射す演出がじんわりと感動を呼ぶ。ライブで聴くこの曲は音源以上にストレートなロックバラードで、もっと大きな会場で聴きたいとも思った。

スライドショーには JavaScript が必要です。

二胡の旋律とスクリーンに映し出された夜景の組み合わせが幻想的な“大東京万博”から“そなちね”へと続け、「これがアンコールです」と最後に届けられたのは“Last Dance”。ツアーが終わりを迎える一抹の寂しさと高揚感がそのまま伝わってくるかのような演奏が素晴らしく、小原とAAAMYYYが先にステージを下りると、残ったリズム隊が終わりを惜しむかのようにヘヴィなグルーヴを聴かせ、最後はNatsukiが一人でシンバルを叩きまくり、ツアーファイナルが終了。『ゴーストアルバム』という作品は、生きているか死んでいるかわからない、幽霊のような気分で過ごした2020年の反映でもあったが、この日のライブはそれと真逆と言ってもいい、肉体的な実感を伴う、強い生命力を感じさせるものだった。

文 :金子厚武
写真:井手康郎(GRACABI)

1

2