Post Malone、初の単独来日公演のライブレポートが到着

ハイライトのひとつがスツールに座って歌った、「Feeling Whitney」。「ウーウーウー」のコーラスが大合唱になって、美しかった。80〜90年代のスーパー歌姫で、2012年にドラッグで中毒死したホイットニー・ヒューストンに想いを馳せる曲である。ダイハードなホィットニー・ファンとしてはずっと複雑な気分になる曲だったが、こうやって若いファンが彼女を知るきっかけになるのかも、と思い直した。

レコーディングだと超ポップな「Wrapped Around Your Finger」はしっとりしたアレンジだった。ポスト・マローンは、ジャンル・ベンディング(genre-bending)のアーティストである。ふたつ以上のジャンルを入れた作風を指す、もともと小説や映像作品の用語で、2010年代から音楽でも聞かれるようになった。歌とラップ、そしてポップ・ロックもヒップホップを入れ込んだ彼はまさにそうなのだが、途中で曲調がガラッと変えたり、どっちつかずの中間を狙ったりするのではなく、ヒップホップの曲ではしっかりラップし、ロックの曲ではギターの音色に合わせて歌い上げて、曲ごとにメリハリを効かせる。それが安定感につながるし、いい意味で彼の音楽はわかりやすい。

“早死にしたくない”と歌う「Too Young」の前に、「今年で28才なんだけど、父親になってさ!」と、友達に話す調子で報告するポスティ。もともと、いい奴キャラではあったけれど、今回、ずっと感謝モード全開で「愛」の人であったのはそういうことか、と合点が行く。筆者は、『Twelve Carat Toothache』と『Austin』の日本盤の対訳を担当した。1年の間に、歌詞での希死念慮が薄まった理由もわかった気がした。

何回も言っていた「カンパイ!」、時折見せる風変わりなダンス。ミスフィッツのひとりのまま、歌唱力と自分に合ったメロディ、歌詞を作る才能でスーパースターになったポスト・マローンは、新型のヒーローである。

「Congratulations」の大合唱と、アンコールでの「Sunflower」と「Chemical」で場内のヴォルテージは最高潮に達した。「Sunflower」は、大ヒットした『スパイダーマン:スパイダーバース』と『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の両方で使われるほど、愛されている曲。途中のファンにギター演奏をさせた演出でもひまわりが出てきたが、そういえばポスト・マローンもひまわりみたいな人だった。

ライブ写真:Masanori Naruse
文:池城美菜子

セットリストをプレイリストにして公開中
https://umj.lnk.to/THESETLIST_PM2023

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