the pillows 「RETURN TO THIRD MOVEMENT! Vol.1」ライヴレポート

98年のツアー中にライブで演るのは止めてしまったから久しぶりに演奏する曲と前置きして「THAT HOUSE」、そして山中自身が「本当にどういう状態で作ってたんだろうな」と振り返った「Black Sheep」、さらに「Nowhere」とセンチメンタルな3曲を披露。そしてメンバー紹介へ。サポート・ベーシストの有江嘉典は、「参加し習得してきた曲と雰囲気が違う曲が多くて体に入れるのに苦戦した」と語り、佐藤シンイチロウ(ds)は「ツアー初日にオープニングSEがこれまでと違う知らない曲でびっくりした」と言って、山中から、「知ってる曲だわ、当時やってたじゃねぇか」と突っ込まれて笑いを誘った。真鍋吉明(g)は「今回のツアーで演奏中に当時の記憶がバーンと蘇ってくる」と語り、「TRIP DANCER」のPV収録したあとにスタジオに戻ってレコーディングした音源のミックス作業をしたエピソードを披露。「今だったら絶対入れない。当時すごい頑張ってたんだなぁ」と振り返り、「貴重なレアな機会だったと思います。本当にこういう企画を考えてくれた山中くん、ありがとうございました!」と、メンバー間の絆を垣間見れる一幕も。

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続いて山中が「ちょっと前に誕生日がきて49歳になったんだけれども、49歳のオジサンがとってもチャーミングな可愛いラブソングを歌っちゃうよ」と照れて演奏された「パトリシア」。さらに「like a lovesong(back to back)」で、曲に合わせて一糸乱れぬ手のフリで応えたBUSTERSとの掛け合いが素晴らしく、後半のサビ、ブレイクして“これはキミのうた!”と大合唱と客電が場内を明るく照らした“あ・うんの呼吸”に鳥肌が立った。そして「ハイブリッド レインボウ」、「LITTLE BUSTERS」とthe pillowsを代表するナンバーが続いて詰めかけた人全てのボルテージが最高潮を迎えた。拳を振り上げるさまはいつものツアーと同じ光景かも知れない。でもなにか“特別なもの”に感じられた。

拍手に促されてメンバーが再びステージに姿をみせると、アンコールは「これはオレが育った北海道小樽の端っこの街で、同級生の親友とギターを練習して、バンド組もうぜ、東京に出てプロになろうとか、わかりやすい少年の夢を持ったときから今現在までの、その彼との友情を記した曲」と山中が前置きして「ぼくのともだち」という新曲からスタート。続いて「次は東京に来てピロウズを始めてからできた友達の歌」として1997年にシングル「ONE LIFE」のカップリングとして発表された「cherry」が披露された。

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「いい夜になったかな」と山中が名残惜しそうに語り始める。「このツアーはなんだかいつもと違う気分でステージで歌った。懐かしい曲だけじゃなくて定番の曲も、いつも演ってる曲なのに今回の曲順の中で歌うとね、その20年前の歌詞を生み出した瞬間のような感じで、なんとも言えない感情で、その感情をもってステージに立ってる時間はなにかオレにとってはいいものだった、ありがとう」と、いつになく胸の内を素直に吐露したようにみえた。「20代の頃はなりたい自分になれてなくてとても苦しいときだったと思う。そしてその苦しみから生まれたであろう曲たちがこんなに長い時が経っても、全国どこに行ってもその曲を聴きたいって言ってくれる人たちがいてくれて、幸せです、ありがとう」。この日一番大きな拍手で感謝の気持ちを返すBUSTERS。「みんな知っての通り、偏屈ですぐ敵を作ってしまうような生き方をしてきてしまったけど、そのときの曲がなんかこういう感じだったら、オレの偏屈にも意味があったのかなと思って嬉しいよ」。このひと言が、このツアーの存在意義なのだと思った。勝手な想像だけど、今現在もthe pillowsは新曲を作り続けツアーをやり続けている。当時の状況と比べたら圧倒的に理解者が全国にたくさん存在している。でも山中のいう、苦しくて偏屈で敵を作ってしまう生き方を貫いてきた先に、今のようなバンドにとって素敵な地平が広がっていた。そのときでなければ生み出せなかった曲を、今必要としているBUSTERSに届ける機会をきちんと作ってみよう。そんな想いが、こんな特別な場所が実現するための牽引役だったのではないか。

 

「このツアーに相応しい曲で締め括りたいと思う」と「About A Rock’n’Roll Band」。まだまだ興奮冷めやらぬ拍手に引きずり出されて「Locomotion, more! more!」でもうひと盛り上がりが展開されて、ようやく客電が点いた。

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特別な場所はまだ終わりじゃない。2018年5月から、7thアルバム『RUNNERS HIGH』、8thアルバム『HAPPY BIVOUAC』を完全再現する「RETURN TO THIRD MOVEMENT!Vol.2」がスタートすることが発表された。ニュー・アルバムを体に染み込ませて参加するのが通常のツアーとするならば、この第2弾はどんな気持ちで臨めばよいのだろう。僕は第1弾を3回観る幸運に恵まれたが、20年前の自分と向き合い、その時期を乗り越えて今現在を生きる自分とも向き合うことでとてもたくさんのことを考えたツアーだった。客席を観る限り、20年前には生まれてなかった、あるいはライブに行くには幼すぎたと見受けられるBUSTERSもたくさん来場していた。この日2,000人居たとするならば2,000通りの感受性を持って噛み締められたであろうこのステージ。第2弾が全国各地でどんな受け止められ方をされるか、想像しながら帰途に就いた。

自分の生き方も問われているような不思議なツアーだ。絶対に参加したい。

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