THE PREDATORS 2年半ぶりのワンマンツアー最終日をライブレポート

THE PREDATORS「Arabian Dance Tour」のツアー・ファイナル、2018年2月8日(木)・東京Zepp DiverCity公演を観た。山中さわお(the pillows)、JIRO(GLAY)、高橋宏貴(ELLEGARDEN、Scars Borough)というスーパーなトリオ・バンドの宿命で、本体のバンド・スケジュールの隙間を縫う活動だけに、前回は結成10周年を迎えた2015年以来2年7ヵ月ぶりのツアーだ。チケットの争奪戦を勝ち抜いたファンが尋常じゃない歓声で3人の登場を待っている。

客電が落ち、メンバーが姿を現すと怒号にも似た絶叫が湧きあがる。オープニング曲は2005年の結成時にリリースされた1stアルバムの冒頭曲「爆音ドロップ」。続いて、高橋が加入した2010年に発表された3rdアルバムのタイトル・チューン「THIS WORLD」。JIROが拳を突き上げ、挑発的に閃光を放つ赤と白を基調としたライティングがさらに場内の興奮を煽っていく。「久しぶりじゃないか! 久しぶりに暴れてやろうかと3人集まったぞ! 俺たちTHE PREDATORS、仲良くしようぜ」。山中のMCで極上の宴の幕は切って落とされた。

高低のボーカルを重ねる山中とJIROのサビが絶妙な「SHOOT THE MOON」、「2018年もクレイジー・ババアに気をつけろッ!」と「Crazy Babar」、JIROがイントロの印象的なベース・ラインで場内のボルテージをグイッと引き上げる「Monster in my head」と、前半から矢継ぎ早に畳みかけるセットリスト。曲の尺は短いのに、ギター、ベース、ドラムというミニマム編成であらゆるロックの初期衝動を突き続けるTHE PREDATORSというモンスターに、詰め掛けたファンは縦に横に上下に揺れてそのバイブスをステージ上に注ぎ返す。

「今回もJIROくんがTHE PREDATORSに相応しいカッコいい新曲を書いてきてくれた! 腰をシェイクする準備はいいか!」と山中がシャウトして、ツアーに先駆けてリリースされた「Arabian dance」。2012年のツアーで担当楽器を入れ替えて披露され、今回のシングルに収録された「TRADE」も正規のパートで演奏された(前々回のツアーで演奏されたときには山中がドラム&ボーカル、JIROがギター、高橋がベースという編成で披露された)。続くMCで「実はこのツアー、初日から波乱の幕開けというか…」と切り出されたエピソードは、高橋がツアー初日の前日に39度の高熱を出し、身近なスタッフがインフルエンザを発症していたことから、高橋も感染の疑いがあり、検査結果の確証が夜23時になるまで出ない事態だったことを告白。インフルエンザだった場合は当然ライブは延期になるが、「集まった人のためになにかサービスを、JIROくんとトーク&ミニ・ライブでもやろうか、みたいな。当然、重苦しい空気感じゃない? これをなんとか変えなければならないと思って、俺が最近ハマってるゆりやんレトリィバァのドラえもんネタ、あれで高橋くんのネタ考えて登場しようとか(笑)。そのあと2人でアコースティック・セッションやるのかなとか。でもみんなも知っての通り、THE PREDATORSの曲ってアコースティックに向かねえじゃん(笑)」。そんな波乱はインフルエンザでなかったことでなんとか乗り越えての船出だったこのツアー。続いて高橋作曲の「Spooky trouble」、ツアーで欠かせないナンバー「ROCK’N’ROLL LAY DOWN」、「God Game」、「Desperate Donor」を惜しげもなく繰り出していく。

そして「みんな、THE PREDATORSのコピー・バンド、THE GLADATORSって知ってる?」との問いかけから披露されたMCは爆笑の連続。2010年のJIROの誕生日パーティを機に、GLAYのJIRO以外のメンバーが結成したバンドで、最初はサプライズ企画だったが活動が恒例化して、THE PREDATORSのパロディのミュージック・ビデオが複数存在することが明らかに。「Arabian dance」に至っては、ついに本家THE PREDATORSより先にビデオが制作されるなど、TAKURO、TERU、HISASHIのTHE GLADATORSに賭ける熱くユニークな想いが語られ、爆笑に次ぐ爆笑が沸き起こった。

1stアルバム収録の「Dizzy Life」は冒頭でサビを切なく歌い上げるアレンジが加わり後半に向けてワイルドに加速する様が秀逸。「Risky Revolution」で山中の高音のシャウトに高揚感が喚起される。「じゃあラスト・スパートの前に俺はTHE PREDATORSらしいスイッチを入れる!」と、結成初期からお馴染みのツノ帽子を装着し「Nightless City」へ。可愛らしいジングルが流れて「Hurry up! Jerry!」。そして高橋のタイトでヘヴィーなドラム・ソロで沸いた流れのまま「LIVE DRIVE」へ突入。さらにうねりは「WILD TIGER」へと引き継がれ、狂気の宴はこの日最高潮のグルーヴを醸し出した。

アンコールに促されて3人がステージ上に登場。山中が「毎回新曲をレコーディングしてワンマン・ツアーをやるっていうとまた次のインターバルも長く開いてしまう。それも寂しいねってことで、もうちょっとね、今よりもフットワーク軽く、もっともっと小さいライブハウスでもワンマンじゃなくてもスケジュールみつけて集まってやりたいねって話してるから、そのときは会いにきてくれ」と語り、THE PREDATORSの宿命であるインターバルに対する気持ちを語った。その流れで披露された「Trinity」は、THE PREDATORSの他の曲とは一線を画し、センチメンタルでロマンティックな歌詞とメロディ・ラインで胸を締め付けられる。3人の心理状態、この旅が終わってしまう切なさが伝わってきてグッときた。思えば、本体のバンドが日本のロック・シーンで巨大で影響力のある存在でありながら、そんな3人が周期的に集い、独自の音楽性を積み上げ、ツアーと作品を重ねて13年に渡り活動を継続していること、そしてその関係性も笑顔が絶えない楽しさに満ち溢れていること。楽しそうに、そして軽やかに。これは奇跡だ。冗談を言い合うユーモア溢れる繋がりと唯一無二の音楽性。実に贅沢な奇跡を目の当たりにしている幸運にうっとりしてしまう。

ビールをそれぞれ手に再度ステージに現れたメンバー。今回のツアーで起きた抱腹絶倒のエピソードが次々と披露され、山中、JIRO、高橋が全国各地をこのバンドで旅した楽しさと充実感が伝わってきた。互いのキャラクターにぐいぐいとツッコミを入れるそのMCや笑顔の隙間に、ツアーが終わってしまった一抹の淋しさが垣間見れて、改めてTHE PREDATORSの仲の良さが心の底から素敵に思えた。

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