ロンドン市長のサディク・カーンはロンドン全域の草の根のライヴハウスを応援するために地下鉄と組み合わせた地図を公開している。
この地図はミュージック・ヴェニュー・トラスト、フィーチャード・アーティスト連合、アウターネット、『メトロ』紙、ユニバーサル・ミュージックによるコラボレーションとして公開されたもので、有名なロンドンの地下鉄路線図に音楽情報を組み合わせたものとなっている。
記事執筆時点でロンドンには179ヶ所の音楽会場があり、2024年には420万人以上が会場を訪れ、32万8000組のアーティストが出演し、7000人の雇用が生まれ、3億1300万ポンド(約610億円)の経済効果をもたらしている。
こうした音楽会場はアーティストがその名を知られるようになるプラットフォームともなっていて、2024年にUKで最も売れたアルバムの10枚のうち、7組のアーティストはロンドンのライヴハウスに出演している。チャペル・ローンはガレージに出演しているほか、コールドプレイはダブリン・キャッスルでライヴを行っており、ノア・カーンはザ・ソーシャルに出演している。チャーリーXCXは東ロンドンの数々のクラブに出演を果たしている。
今回の新たなマップではそれぞれの路線がシールドに変更されており、ベーカールー線は曲名に、セントラル線はジャンルに、ディストリクト線は2025年に観るべき25組のアーティストに、ジュビリー線はアルバム・タイトルに駅名が置き換えられている。
メトロポリタン線はインディ・レーベル名に、ノーザン線は大御所アーティスト名に、ピカデリー線は最近のアーティスト名に駅名が置き換えられている。
主なアトラクションとして、25ヶ所のライヴハウス、25ヶ所のナイトクラブ、25ヶ所のレコード店も掲載されている。
これは5月13日付の『メトロ』紙に独占掲載されており、アウターネットでは屋外ヴィジョンに1ヶ月間表示される。『メトロ』紙はフィーチャード・アーティスト連合と協力して、注目アーティストのインタヴューも掲載していくという。
「ロンドンにおける草の根の音楽シーンは世界に認知されています」とロンドン市長のサディク・カーンは述べている。「才能あるアーティストの卵たちに彼らの生業を発展させていく機会を提供することから、ロンドン市民に素晴らしい夜を提供することまで、私たちの音楽施設は夜の生活に欠かせない存在であり、私たちの経済を大いに後押ししています」
「しかし、近年は大きな困難に直面しています。だからこそ、私たちはロンドンにおける草の根の音楽シーンのあらゆる部分を支援するために、この都市の様々なパートナーと協力しています。この地下鉄地図の特別版は、音楽シーンがこの首都に大きな影響を与えていることを示す素晴らしい方法だと思います。音楽会場を支援して、みなさんのためにより豊かなロンドンを築いていくためにできることを続けていきます」
今回の活動はスカンク・アナンシーのスキンも支持しており、「グラスルーツなくしてメインストリームの音楽は生まれない」と述べている。アイアン・メイデンのブルース・ディッキンソンは6月に公演を行うスタジアムの近くにあるストラットフォードのカート&ホーセズというパブでキャリアを始めたことを振り返っている。
「ロンドンの多様な音楽シーンと草の根のライヴハウスは、新しいアーティストを育て、サポートし、音楽ファンを集め、生涯続くような情熱と思い出を作るために不可欠なものです。それを大切にして、認め、保護する必要があります。世界中でもどこにもこんな場所はありません。ぜひ外に出て、楽しんでください」
ミュージック・ヴェニュー・トラストのCEOであるマーク・デヴィッドは次のように述べている。「ロンドンは世界でも素晴らしい音楽都市の一つであり、新しいサウンド、新しいジャンル、素晴らしい新人アーティストが常に再発明されています。ロンドンにおける草の根の音楽会場のネットワークは首都の音楽を繁栄させるために不可欠なものであり、手頃な価格で様々な種類の音楽、コミュニティ、人生を変えるような体験を提供しています。ロンドンにおいては一週間毎晩、街の至るところで、誰もが楽しめる何かがあるのです」
しかし、ロンドンにおける草の根のライヴハウスは危機に瀕している状況もあり、昨年2024年はUK全体で2週間に1軒、ライヴハウスが閉店しており、半数近くが赤字、200軒が非常事態にあり、「ツアー文化が崩壊する」可能性が指摘されている。