桑田佳祐 AAA 2018「平成三十年度! 第三回ひとり紅白歌合戦」

桑田佳祐、Act Against AIDS 2018

桑田佳祐によるパシフィコ横浜での「Act Against AIDS(AAA)」コンサートが5年ぶりに開催された。今回は、2008年、そして前回の2013年に行われ、大好評を博した桑田佳祐による名企画「ひとり紅白歌合戦」の第三回目。すでに発表されている通り、平成という時代が終わろうとしているこの時期をひと区切りとし、東京オリンピックを迎える2020年の7月末に、AAA活動がその役割を終えることに伴い、桑田の「ひとり紅白歌合戦」も今回でついに完結することとなった。

これまでのひとり紅白同様、今回もボリュームたっぷりのステージを展開。古くは戦後間もない昭和20年代の名曲から、最近の平成のヒット曲に至るまで、アンコールも含めなんと全55曲を熱唱(曲目は別紙を参照)。どんな時代のどんな歌手の曲でも、どんなジャンルのどんな曲調の曲でもすべて自分のものとしてしまう力量は、まさに国民的歌手・ミュージシャンとしての桑田佳祐の面目躍如。「ひとり紅白歌合戦」自体、桑田佳祐の発明による企画だが、ゆえに桑田佳祐にしかできない企画であることが改めて明らかとなった。4時間弱にもわたるそのステージの中で、数々の極上エンタテインメントが披露され、桑田からのさまざまな素晴らしいメッセージが発せられた。

序盤ブロックで歌われた『涙くんさよなら』は、昨年末、本家「紅白歌合戦」内で放送された、朝ドラ「ひよっこ」のスピンオフドラマの中で、桑田が浜口庫之助に扮して歌った曲。昨年浜口が生誕100年であったことから、彼へのリスペクトも含め歌われた曲を今回も披露。桑田の唄に合わせて、バンドのバックメンバーがひとりひとりステージに登場する様に、会場は大きな歓声に包まれた。

  「フォーク&ニューミュージック対決」と題されたコーナーでは、松山千春の『大空と大地の中で』、加藤登紀子の『知床旅情』が続けて歌われた。曲紹介では「今年、大きな地震があった北海道。みなさんへ歌でエールを!」とナレーションが流れた。桑田の細やかな気遣いを垣間見ることができた選曲、そしてパフォーマンスであった。

桑田は93年のAAA発足当時から、ライブを中心に様々な形でその活動に携わってきた。その完結編としての意味合いももつ今回のコンサートの中では、もちろんエイズ啓発に対するメッセージも随所で発せられた。

『世界の国からこんにちは』では、「巡り会い 愛し合う 時が来たなら 大切な 大切な 人を守ろう」「お互いに お互いにエイズを  知〜ろ〜う!!」と、また洋楽のヒット曲『Havana』でも、「真剣に もっと大切に愛し合い パートナーを大切に」「性はもっと豊かなもので思いやりの気持ちを持って互いの命を守ろうよ それが愛というものなんだ」というフレーズを替え歌にして、AAAのメッセージを歌の中に込めた。

桑田佳祐は前川清の長年のファンであり、過去の「ひとり紅白歌合戦」でも二回とも“内山田洋とクール・ファイブ”の曲を披露している。その際桑田がコスプレをし、クール・ファイブのそれぞれのメンバーに扮した映像が流れて会場の大爆笑を誘うという演出はもはや定番だが、今回も期待通り『中の島ブルース』で、五人五役を演じた“ヅラ山田洋とクールファイブ”が画面に登場し会場を沸かせた。さらにその映像内に途中からは、同様のコスプレをした大泉洋が登場。ユーモアたっぷりの表情で、「五人」の桑田と絡み、一際大きな笑いが会場中に巻き起こった。まさに“ヅラ山田洋と大泉洋とクール・ファイブ”誕生の瞬間であった(笑)

コンサート中盤、紅組でも白組でもない「特別枠コーナー」として、ザ・ドリフターズのテーマと共に現れたのはなんと法被姿のサザンオールスターズのメンバー。ドリフのメンバーも顔負けのギャグも織り交ぜつつ、『いい湯だな』をメンバー全員で歌い終わるとメンバーからは「来年はツアーでお会いしましょう!」といううれしい言葉が飛び出し、とともに「サザンオールスターズ来年もよろしくお願い致します」というメッセージがビジョンに映し出され、会場全体が大きな歓声に包まれ、来年の全国ツアーに向けたファンの大きな期待の高まりがうかがわれた。

本編終盤では、今年惜しまれつつ亡くなった西城秀樹の名曲『YOUNG MAN (Y.M.C.A.)』で会場全体が、「Y.M.C.A.」の振り付けと共に大盛り上がり。盛り上がる気持ちの一方で、ビジョンに映された秀樹の姿に哀惜の念を禁じえなかった人も多かったはず。さらに「Y.M.C.A.」の連呼が「M.O.M.O.K.O」に変わるとともに『YOUNG MAN』からメドレーでつながったのが、さくらももこが詞を書き桑田が曲をつけて歌ったちびまる子ちゃんのテーマ曲『100万年の幸せ!!』。ビジョンに映ったのはもちろん、ちびまる子ちゃんをはじめとした、さくらももこが生み出した数々の登場キャラクターであった。極上にショーアップされた歓喜の中に、亡き人たちへのリスペクトを込めるという桑田佳祐にしかできない、すばらしい哀悼の表現に多くの人が涙したに違いない。

アンコールが始まると、桑田佳祐自身の声でナレーションが流れ始めた。「流行歌。ヒット曲。」という出だしで始まったその口上は、現代社会と流行歌・ヒット曲の関係、そして「大衆音楽作家」としての自分の役割を、冷静に俯瞰しているかのような内容であり、その口上は次のような表現で締められていた。

「Act Against AIDSの活動自体は2020年に終焉を迎えるが、世の中にはその他にもさまざまな問題が山積みとなっている。流行歌。ヒット曲。大衆と、ほどよくがっぷり四つに組み、新たな音楽を作り続けていくことを、私は辞めないだろう。そして、そうした問題にこれからも向き合っていこうと思う。平成三十年というひとつの時代の節目に、私はそう思いを新たにするのだ。」

ひとり紅白歌合戦という偉業を完結させ、AAA活動にひとつの区切りをつけつつも、桑田佳祐の新たな決意表明が今回のステージから滲み出ていたということができるだろう。

カメラマン:西槇太一

最後の桑田佳祐AAAコンサートをWOWOWで放送!

桑田佳祐 Act Against AIDS 2018「平成三十年度! 第三回ひとり紅白歌合戦」

12月25日(火)夜7:00~WOWOWで放送

関連NEWS

  1. 桑田佳祐

    桑田佳祐「男はつらいよ」最新作主題歌歌唱&OP出演、山田監督のラブレターで実現

  2. 桑田佳祐 & The Pin Boys

    桑田佳祐 & The Pin Boys、2月12日リリースのニュー・シングル『悲しきプロボウラー』完全生産限定盤に「スペシャルカードステッカー」同梱決定

  3. 桑田佳祐

    桑田佳祐、『KUWATA CUP 2020』開催 予選会スタート、テーマソングも制作

  4. サザンオールスターズ

    桑田、サザンの音楽とスポーツ・芸術花火が生んだ感動再び 『KUWATA CUP 2020』『茅ヶ崎サザン芸術花火2019』への期待

  5. 紅白で伝説をつくった桑田佳祐、新たに2つの大記録達成

  6. 桑田佳祐

    桑田佳祐が「WE LOVE RADIO」特別番組に出演

  7. 桑田佳祐「ひとり紅白歌合戦」初回盤の詳細明らかに

  8. 桑田佳祐 24年ぶりにスペシャルユニット、ボウリングを愛するすべてのひとへ

  9. 桑田佳祐

    桑田佳祐、『Keep Smilin’~“出来ることから”ちょっとずつ~』始動 サザン&ソロ作品MVフルバージョン公開

  10. 桑田佳祐

    桑田佳祐 民放共同企画“一緒にやろう”応援ソング「SMILE~晴れ渡る空のように~」レギュラーラジオ番組でオンエア

  11. 桑田佳祐

    “桑田佳祐&The Pin Boys”の新春楽曲、どストライクな限定盤のポスターデザインが公開

  12. BRUTUSがアミューズ特集号を特別編集、桑田佳祐から全社員に送られたメッセージを掲載

  13. 桑田佳祐

    桑田佳祐 & The Pin Boys『KUWATA CUP 2020』書き下ろし新曲「悲しきプロボウラー」リリース

  14. サザンオールスターズ

    サザンオールスターズ 972曲をストリーミング配信 全シングル、全アルバムに桑田佳祐のソロ作品も

  15. 桑田佳祐「ひとり紅白歌合戦」さらなる大反響を受け、再放送決定