原田知世 一夜限りの新作『L’Heure Bleue』発売記念コンサートレポート

「去年の今頃は、NHKでドラマ『半分、青い。』の撮影をしていました。その時点ではニュー・アルバムを作るなんて考えてもいませんでした。ドラマの撮影が終わって、短い期間で制作したのですが、素晴らしい作品ができました。今回はいろいろなアーティストの方に、短編映画を作るように物語をつむいでください、とお伝えして歌詞を書き下ろしていただきました。それにゴローさんが素敵なメロディをつけてくれて、どの曲も歌うのがとても楽しいです」
というMCをはさんで、再び新作から「わたしの夢」と、代表曲「くちなしの丘」を披露。どちらもキセルの辻村豪文が提供したナンバーで、楽曲のノスタルジックな世界観は原田と相性抜群だ。その透き通る優しい歌声に、会場内は柔らかな雰囲気で満たされた。前半のクライマックスは「Hi」と「Giving Tree」という幻想的な2曲。特に、ノイジーなギター・サウンドが印象的な「Hi」では、ベルリン在住の世界的ダンサー、ハラサオリによる振り付けを身体全体でドラマチックに表現しながら歌った。

原田知世

(c)三浦憲治

休憩をはさみ、蛍光グリーンと白のセットアップが華やかなドレスに着替えて登場した第2部は、原田にとって90年代の2大ヒット曲「シンシア」と「ロマンス」からスタート。清々しく晴れやかな原田の歌唱に、観客も熱い拍手で応えた。つづいては、再び大人のムードに戻って「うたかたの恋」と、精緻な照明や映像によって曲の世界観が一段と広がった「夢の途中」。今回のステージでは、曲ごとに次々と異なる表情を見せてくれたのが印象的だった。本編ラストは、元チャットモンチーの高橋久美子が作詞した「2月の雲」と「銀河絵日記」。「銀河絵日記」ではステージ全体が銀河に包まれたかのような演出も見事で、会場内を温かい空気で満たしステージをあとにした。

アンコールは、土岐麻子が作詞を手掛けたアップテンポの「ping-pong」と、ストリングス・アレンジが美しい代表曲「時をかける少女」。2曲を歌い終えてメンバーとステージを去った後も、観客の拍手は鳴り止まない。再びステージに戻ってきた原田は、バラード・アレンジの「銀河絵日記 – piano version」をしっとりと歌い上げ、ステージを締めくくった。心にしみるパフォーマンスに客席からは惜しみない拍手が送られた。

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