y’s presents 貴ちゃんナイト vol.9

目を閉じていたって全てを見せる”貴ちゃんナイト”

ラジオ・パーソナリティとして高い人気を誇る中村貴子のリスナーが集うDJイベントとして、2011年に岡山で幕を上げた“貴ちゃんナイト”。
”大好きなミュージシャンを迎えて、いちオーディエンスとして見たい組み合わせにこだわる”ライブ・イベントへ昇華させた第2回目からは、その名を本人が受け継ぎ、自身主催のライヴ・イベントとして回を重ねてきた。
「vol.9」となる今回も、ホリエアツシ(ストレイテナー / ent) / セカイイチ / THE BOHEMIANSと、中村貴子ならではのアーティストが集った。
開場と同時に、本日の出演者でもあるホリエアツシ(ストレイテナー / ent)選曲によるSEで幕が上がると、フロアで迎える中村貴子の元へ、その想いの詰まった手紙を手に駆け寄るリスナーたち。
1人1人とのコミュニケーションには、ラジオの電波に乗せて届けてきた、互いに愛する音楽を確かめ合うような時間が流れていた。
ステージに上がった中村貴子からイベントの概要、もはや恒例となりつつある出演者の好きなお酒や出身地、バンド名に因んだ”「貴ちゃんナイト」スペシャル・ドリンク”を紹介する。
Patti Pageの「I don’t care if the sun don’t shine」が鳴り響くと、vol.9のトップバッターを引き受けた、THE BOHEMIANSが登場した。

デビュー・アルバム『憧れられたい』のリード曲となった“THE ROBELETS”から始まり、貴ちゃんナイトに相応しい、真っ赤なジャケットに身を包んだ平田ぱんだが、拳を突き上げるたびに目に映る手首に巻かれた赤い時計は、中村貴子への愛が見え隠れしていた気がした。
「今夜の大事なスタートを任されてます、オレたちがTHE BOHEMIANS、ロックンロールバンドだ!」と高らかに宣言し、続けて「ここに立っているということは、間違いなく貴子さんはオレたちのことが好きだぜ!」とドロップされたのは”私の R・A・D・I・O”。
ラジオから流れている曲をカセットテープに録音するときは、中村貴子のナレーション込みだったと話す平田ぱんだのMCは、ここに集まったリスナーズもきっと同じで、その愛おしい行為を代弁してくれているようだった。
最新アルバム『kaiser strong majestic love』から”あういえ”で、最高に熱いロックンロールをお見舞いし、そのゴキゲンなビートをガツンと響かせたまま、ラストの”bohemian boy”になると、フロアの温度は湿気を帯びるほど上昇し、熱い空間を見事に作り上げて、ステージを後にした。

そして、自らセレクトしたSEが流れる中、ホリエアツシ(ストレイテナー / ent)が登場。

弾き語りスタイルで臨んだホリエアツシは、ストレイテナーの『Behind The Scene』に収録された”彩雲”でスタート。ギターがカラフルに絡むオリジナルで景色と変わり、その王道なコード進行が逆に力強く感じさせられる。
ストレイテナーと、Twitterで企業公式アカウントを4コマ漫画化した漫画『シャープさんとタニタくん』とのコラボレーション曲、”月に読む手紙”では、そのTwitterでのやり取りを“手紙”に置き換えた歌詞が、アコースティック形態が故に心のど真ん中に刺さるようで、紡がれるギターの音色と声が、より鮮明に響いてきた。
中村貴子との出会いは10数年前にもなり、the pillowsのライブの打ち上げ会場であったエピソードを交え、披露されたのはthe pillowsの”ハイブリッド レインボウ”。
物販スペースで笑顔を見せる山中さわお(※当日、開場から終演まで、物販スペースでオーディエンスとコミュニケーションを取っていた)と同様、フロア中に暖かな感情が溢れていた。
一転、entの最新アルバム『ELEMENT』から”How To Fly”へ。シューゲイズもエレクトロも飲み込んだようなサウンドに、極上のポップ・メロディーが乗る。
「最後にハッピーな曲を」とラストの”Zoe”まで、entにはホリエアツシの趣向が詰まった音楽で溢れていて、この会場に心地よく響かせていた。

続いて、トリを務めるセカイイチが音出しを始める中、そのまま岩崎慧がおもむろに”Stand By Me”を歌い始める。
この楽曲は、先にホリエアツシからMCで、そのエピソードが語られた(ここでは割愛させていただき、会場にいたオーディエンスのプレミアムな内容とさせて欲しい)のだが、中内正之、吉澤響、そしてホリエアツシも加わりもアンサンブルを奏でる。
「セカイイチ始めます!」とファンキー且つグルーヴが心地よい”HARD-CORE-GEEK”でスタート。
ライブ会場限定シングルとして発表された新曲”Lay me down”では、ファンクロック全開ながらも、深く夜を彩る魔法をかけ、「貴ちゃんナイトの夜に!」と”Daylight”をドロップ。
「Daylight Daylight」のコールアンドレスポンスに続き、フリースタイル・ラップを披露し、一気にセカイイチの世界に引き込む。
畳み掛けるように、『Round Table』からのロックチューン”Looking Around”をお見舞いし、ラストの”Round Table”まで余すことなくフロアを躍らせたセカイイチ。
惜しみない拍手が向けられる中、圧倒的なグルーヴの余韻を残し、本編は終了した。

そして、鳴り止まないアンコールに呼び込まれて、再びセカイイチがステージに上がるとホリエアツシが呼び込まれ、中村貴子からのリクエスト曲でもあり、ホリエ自身も「セッションはしんどいと思っていたけど(笑)、曲を聴いた瞬間に歌いたいと思った」と語った”バンドマン”を披露する。
バンドマン同士だからこそ歌い合える歌は、この特別な夜だからこそのギフトとなった。
ラストは、平田ぱんだも呼び込まれ、貴ちゃんナイトだからこそ実現できると言っても過言ではない、the pillowsの”RUNNERS HIGH”。
「目を閉じていたって全てが見えた」の一節にあるように、ラジオというフォーマットは目に見えるものではない。
しかしこの夜のように、中村貴子という1人のラジオ・パーソナリティが見せて繋いでくれた音楽への愛は、こうやってみることができる。
参加されたミュージシャンも、ここに集ったオーディエンスも、改めてラジオの持つ魔法の威力を見せつけられたに違いない。

全てのステージが終了し、再び中村貴子がステージへ上がる。
出演アーティストへ感謝を述べ、出演者とリスナーズとの記念撮影でこのイベントを締めくくった。
「幸せな時間を過ごすことができました。これからも、みんな音楽を好きでいましょう!」と、笑顔で語る中村貴子。
次の「貴ちゃんナイトvol.10」でも、どんな魔法を私たちに掛けてくれるのか、今から楽しみで仕方ない。



テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330
写真:岡村直昭

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