J インタビューvol.50

ソロデビュー20周年を刻んだベストアルバム「J 20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017> W.U.M.F.」をリリースするJ。過去・現在・未来を繋ぐこのアルバムに込めた想いをJ自身に語ってもらった。

—「J 2016 LIVE 10 days of GLORY -10 Counts for Destruction-」開催前に伺った際、「20周年に向けて、何かを壊して、また新しいものを生んでいける様なツアーでありたい」とお話いただいていましたが、「放火魔 大暴年会」まで、Jさん自身にかなりの刺激をもたらしてくれたのでは?

J:まさにその通りで、色んなバンドと一緒にライブをやらせてもらって、そのまま年末を迎えたわけなんですけど、彼らから刺激を貰うことによって、やる以前の自分とは確実に違っている気がするんだよね。キャリアも一切関係なく、色んなタイプの音楽を奏でるバンドと、ひとつのステージの上で本気でお互いにライブをやるというのは、純粋にいちミュージシャンとしての力量が問われるし、”今の自分”が見えてくる。そういう意味でも、この対バンツアーによって得られたものは大きかったし、自分の経験値としても、次のステージに向かえるようなエネルギーになってると思います。

—その「次のステージへ向けて」というのが、20周年の節目になっていて、且つ「J 20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017> W.U.M.F.」のリリースが控えている状況でした。ツアーと並行して、ファンからの”リクエスト応募”も展開されていましたね。

J:うん。今年でソロを始めて20周年、そんな年への加速レーンというか、そういったライブの連続が「J 2016 LIVE 10 days of GLORY -10 Counts for Destruction-」だったわけで。そんな中、今回のアルバムはファンの皆からのリクエストで曲を決めていくことにしたんだけど、俺にとっても初めての試みだったし、気にもなってたから色々とチェックはしてたんだけど(笑)。本当に色んな曲がピックアップされてたし、色んな時代の俺自身の曲、もっと言うと”俺自身”が網羅されてたから、純粋にすごいアルバムになりそうだなって。なんかね、自分自身が自分のことを1番良くわかってなかったりするじゃない?

—そうですね(笑)。自分自身への先入観や色眼鏡がどうしても入ってしまいがちですし、寧ろ、ファンの皆さんからの反応が、かえってリアルに映りますよね。

J:そう。LUNA SEAからもそうだし、ソロが始まってからのこの20年間もそうだしね。もっと言うと、LUNA SEAを生で見たことないような皆んなからも、本当に色んな曲を選んでもらったからこそ、出来たアルバムなんだよね。それは、まさに俺自身の今ってものを映したアルバムになってるんじゃないのかな。

—実際、過去に2枚のベストアルバムをリリースされていますが、それとは違う”Jさん自身の今”という観点からも、新曲「one reason」はすごく必然的でありながらも、ごく自然に収録された気がしています。

J:ベストアルバムというのは、簡単に言ってしまえば自分の過去を集めたアルバムになる訳だよね。でも、俺自身は未だに渦中なわけだし、それだけじゃ何か面白くないなって。どうせ作るんであれば、今までもベストアルバムを作ってきたけど、それとは全然違った熱を放つものにしたかったし、過去と今と未来を繋げるアルバムになったらいいなと。そう思ったときに、今の俺が書く新しい曲で、しかもこの20周年ってものに対する想いが刻み付けられたものを収録したかったんだよね。

—”いつまでも終わる事のない”という一節に、常に”終わり”と隣り合わせでいるJさんが、それでも開きたい景色だということを想起させられましたし、その想いの濃さが音にも表れていると感じました。

J:そうだね、今の俺自身が鳴らすべき音というか…。当然ね、97年から始まったソロアルバムの中で、それのどれとも違うんだけど、それのどれとも似てるという音であって欲しいなと思ったんだよね。ずっと俺自身が鳴らしてきた音が、今ここに辿り着いた。で、「ここから先も続いていくんだ」というベクトルでいるからこそ、前を向いてる曲であって欲しかったし。そこには、今の俺が燃えられるフレーズやビート、そして歌の内容であったりが、濃ければ濃いほど良いし、そうじゃなきゃいけないんだろうなと思いながら作ってたんだ。

—そう伺うと、新曲「one reason」が収録されることで、ベスト・アルバムのたがが外れて、より最新アルバムと定義できるものになったと思えましたし、加えて「ACROSS THE NIGHT」のリ・レコーディング、「Sixteen」「GO with the Devil」「Evoke the world」「Heaven」「Graceful days」「Tomorrow」のニュー・ヴォーカル・ヴァージョンと、所謂、ベスト・アルバム特有の違和感みたいなものが皆無だったんですよね。

J:それは自分でもすごく望んでたことなんだ。例えばレコーディングした時代も違えば、そのレコーディングした背景も違う。そんな20年間をひとつに纏めるって、すごく大変なことだったりするでしょ?で、実際に昔の曲たちでも「今の俺だったら、こう表現するのにな」って思う曲も、たくさんあったのも事実だった。だからこそ、その中で何曲かピック・アップして歌い直すことで、”今の俺”ってものを表現できたと思ったし、そして「PYROMANIA」のリクエスト投票1位だった「ACROSS THE NIGHT」については、全てのテイクを録り直したんだ。

—過去の曲たちではあるけれど、そうやってレコーディングをすることで、Jさん自身もこのアルバムを楽しめていけるし、何より楽曲を”過去”という存在のままで収録せずにすみますね。

J:そう。で、実は「ACROSS THE NIGHT」に関しては全てをを録り直したんだけど、昔の声やコーラス・テイクを使ってたりもするんだよね。

—過去と融合させたんですね!

J:まさにそう。俺自身がやろうとしたことは、過去を消しゴムで消すような作業ではなくて、その曲をさらに燃え上がらせるようなことをしたかったんだよね。ある人にそれを言ったらさ、「ものすごい面倒くさいことをしてるよね」って(笑)。

—確かに、現在進行形の表現だけなら録り直すだけで済みますが、混在させる作業も増えますよね(笑)。ただ、冒頭でおっしゃった”過去・現在・未来”というパッケージが、こういった要素でも表現できたんだなと。

J:結果的にね。ただ、俺自身は望んではいないけど、やり直すことによって勢いとか、そのときにあった情熱みたいなものが、消されてしまうこともあるからね。それでも、今の俺がその曲に対しての感覚というものにトライしないと、過去に留まってしまう作品になってしまうような気がしたんだ。もちろん、「ACROSS THE NIGHT」に関しては、今のメンバーで録り直すことで、ビルド・アップできると思っていたし、こう言ったら怒られるんだろうけど、もしそうならなかったら収録しないだけの話だから(笑)。そうやって臨んだ結果、やっぱり素晴らしいものになったし、97年のテイクと今現在のテイクと2つ持った自分は、楽しみが2つに増えた気がしているんだ。

—きっと比べるものではない分、ソロ活動をやり続けてきたからこその、自分自身へのギフトのような存在ですよね。

J:そうね。実際、俺自身の考えってそうだったから。

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