貴ちゃんナイト

y’s presents 貴ちゃんナイト vol.11

2月16日(土)に東京・下北沢 251にて、ラジオパーソナリティ中村貴子によるイベント《y’s presents「貴ちゃんナイト vol.11」》が開催された。
枕詞にはなるが、このイベントはラジオ・パーソナリティ・中村貴子のリスナーが集うDJイベントとして、2011年に第1回目を岡山でスタートし、第2回目からイベント名を中村貴子本人が受け継いだものである。イベント趣旨として”大好きなミュージシャンを迎えて、いちオーディエンスとして見たい組み合わせにこだわる”を掲げ、自身主催のライヴ・イベントとして行われている。
「vol.11」となる今回は、フルカワユタカ / 百々和宏(MO’SOME TONEBENDER) / 渡會将士(brainchild’s / FoZZtone)という顔ぶれ。中村貴子とは昔から互いにインタビューなどで付き合いがあったが、ここ数年で更に付き合いが深くなったというアーティストが集い、毎回のことながらその顔ぶれの発表時にはニンマリとしてしまう(先行チケット発売タイミングは出演アーティストが伏せられているのだ)。
開場したフロアではSEと共に中村貴子が来場者を迎える。繰り返すが、このイベントは”中村貴子がいちオーディエンスとして”なのである。各アーティストのファンや中村貴子のリスナーと同じ気持ちで、彼女はこの空間にいることが伺えるのだ。

最初に登場したのは渡會将士。ソウルもファンクも融合したような極上のポップネスで、一瞬にして魔法を掛けられたみたいだ。
オーディエンスは各々にハンドクラップしたり体を揺らし、ダンスフロアと化した会場を盛り立てる。これでもか!という程のコールアンドレスポンスの応酬では、全員の心を笑顔にしながら鷲掴みにしていった。
貴ちゃんナイト
一転、中盤の「Weather Report」では、”良い占いを 青信号一回分の幸運を””これからの東京 次第に回復へ向かうそうです”と紡ぎ、彼そのものであるような描写を見事に表現し、優しく背中を押してくれているようだった。
そして、ラストの最新アルバム『PEOPLE』に収められている「Chloe」まで、その魔法が解けないまま、音楽を楽しむダンスは止まらなかった。


続いてエレキギター1本とハーモニカを首に下げて、百々和宏のステージが始まる。荒々しく掻き鳴らすギターは、会場中に響いてその力強さにすっと吸い込まれていくのがわかる。
曲間では、もはやお馴染みと言っても良いだろうか。百々節満載のMCも炸裂し、この日のために考案されたスペシャルドリンク3種類を呑みながら会場の笑いを誘い、まるで彼の部屋にお邪魔させてもらっているかのような、終始笑いの絶えない時間となっていた。
貴ちゃんナイト
それでも演奏を始めれば、優しいアルペジオをつま弾きながら”すきにして”と繰り返し、ハーモニカの旋律と共にそのステージとフロアの距離感をグッと縮め、彼のアイデンティティーが詰まった「ロックンロールハート(イズネバーダイ)」では歌とギターという、アルコールで言えば100%の百々和宏・ロックンロールを披露し、最後には弾き語りスタイルにも関わらず中島みゆきのカバーである「悪女」を立って演奏し、あっという間に百々和宏という音楽で酔わせてくれた。

ラストを飾るのはフルカワユタカ。重いリフを繰り出したかと思えば、モニターに乗ってライト・ハンド奏法で魅せ、ロック・スターの名を欲しいままにパフォーマンスする。
それでいてライヴハウス特有の音圧ではなく、タイトでしなやかな3人のアンサンブルが気持ちが良いくらい爽快で、「I don’t wanna dance」が始まる頃にはフロアの熱気が最高潮に達していた。

「beast」で極上のハッピネスを会場に充満させ、ダンサブルなチューンで盛り上げる。
会場をアジテートしたまま、歌を歌いギターを鳴らすフルカワユタカのパフォーマンスは最後まで圧巻。
途切れることのない歓声を後にステージは終了した。

そしてアンコール・セッションでは、フルカワユタカと百々和宏による「バスストップ」。
貴ちゃんナイト
元々は、フルカワユタカの『Yesterday Today Tomorrow』に収められている荒井岳史(the band apart)との曲だが、やはりこの2人でやると、深いロック色に染まる。でもそれは決して攻撃的な意味ではなく、歌詞の一節にある”ダーリン”のように、フルカワユタカのアコースティック・ギターの音色を百々和宏のギターが優しいトーンで包んでいる深さだ。
貴ちゃんナイト
ラストは、フルカワユタカBANDと百々和宏、そして渡會将士による斉藤和義の「歩いて帰ろう」。
会場全体での大合唱と、イベントを通して、百々和宏とフルカワユタカは渡會将士への”愛あるイジリ”をしていたのだが、そんな3人の関係性とが混ざり合って”音楽って楽しい!”と改めて思わされたセッションだった。

中村貴子主催としては、今回でちょうど10回目。そんな記念すべきこの日も「音楽を好きでいて良かった」と心から思える夜となった。
貴ちゃんナイト
それを彩るように、イベントがオープンしてからスタートまで、そして転換中から終演後までフロアに流れていた音楽は、全てフルカワユタカがセレクトしたもの。
今日のイベントストーリー、そして出演するアーティストと中村貴子へ込められたメッセージが、音楽を通して届けられていたと勝手に解釈したが、今日のイベントを分かち合ったみんなもきっと同じ気持ちなはずだ。それらの楽曲は本文の下部に掲載しているので、是非チェックしてみて欲しい。


text:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330

photo:釘野 孝宏

y’s presents『貴ちゃんナイト vol.11』セットリスト

Floor SE ALBUM [ Lonerism ] ARTIST [ Tame Impala ]

渡會将士

メンバー:Vo.渡會将士,Ba.中村昌史,Key.砂塚恵,Dr.若山雅弘

1.Good Routine

2.Vernal Times

3.マスターオブライフ

4.Weather Report

5.コイコイ月見りゃSeptember

6.Chloe

Floor SE ALBUM [ Sitting Around Keeping Score ] ARTIST [ Spymob ]

百々和宏

弾き語り

1.高架下の幽霊

2.クラクラ

3.ポテトフォーピープル

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