SHAG、初の配信特化型公演『LIVE STREAMING FROM TOKYO EPISODE Ⅲ ~THE SHAG STRIKES BACK~』ライヴレポート

セロニアス・モンクによる永遠のスタンダード「Round Midnight」のカヴァーは月の満ち欠けを表現する映像と併せて類家、別所、SUGIZOによるムーディーに哀切を帯びて幕開け、そのまま「Initiation of Rebellion」へ。KenKenと松浦が牽引する圧倒的ドープなダブ世界。この時点で既に、曲ごとの切れ目に対する意識や時間の認識がいつしか失われてきており、そこで鳴っている音にただただ陶酔していたのだが、「D Jam」でそのトリップ感覚は更に深化。SUGIZOの手振り身振りや合図となるフレーズだけを事前に共有し、メンバーはその瞬間の自身のフィーリング、そして相手の音から触発されて生まれた音を次々に、生き生きと畳み掛けていく。本編最後は、SHAG再始動にあたり大きなインスピレーション源となったマイルス・デイヴィスの「Bitches Brew」のカヴァー。同曲が収録された同名アルバムはジャズとロックを融合させより高みに昇華した金字塔であり、音楽が社会に対する反骨精神と密接に結びついていた約50年前のアティチュードを今こそ取り戻すべき、というSUGIZOの思考を象徴する作品でもある。メンバーは幾度も顔を見合わせ互いの呼吸を感じ取りながらタイミングを掴み、音を一斉に鳴らしたり時にはあえてズラしたりして、スリリングな即興演奏を展開。その瞬間にしか生まれない合奏の形は予測不能で、だからこそ尊く、その熱量は画面越しにも有り余るほど伝わってきた。

一旦ステージを去った後再登場すると、SUGIZOは「師匠・近藤等則氏、去年惜しくも亡くなりました。巨匠に向けてこの曲をお届けしたいと思います」と紹介し、アンコールとして「PRAY FOR MOTHER EARTH」を披露。氏と共に生み出した深遠で壮大なバラードである。即興演奏の真髄を学んだ偉大な師に捧げるレクイエムは物悲しくもドープなグルーヴが心地よく、映像と照明による相乗効果も素晴らしく、魂が光に包まれ、宇宙の涯に還っていく旅路を幻視するかのようだった。高揚と静けさの共存する空気感の中で、SHAG初の配信ライヴは幕を閉じた。

結成30周年を迎えたLUNA SEAのメンバーとして、X JAPANの一員として、加えてソロアーティストとしても途切れなく活動を続けており多忙を極めるSUGIZOが、2020年代に再始動させたこのSHAGというプロジェクト。ロック、ジャズ、ファンク、ソウル、ニューウェーブ、あらゆるジャンルを分け隔てなく混ぜ合わせ、より自由なインプロヴィゼーション表現を繰り出すジャムバンドは他に類を見ない存在だ。また、この日ヴィジュアル面を一手に担ったVJは初期SHAGを長く手掛けてきた鬼才高岡真也、そしてミキシングはSUGIZO達が全面的信頼を寄せる日本ダブ界の巨匠Dub Master X。彼ら英俊豪傑を擁しSHAGは即興音楽プロジェクトの域を越え、刺激に満ちた前衛クリエイター集団になりつつある。愉楽の坩堝のような音のサイケデリアに身を委ねるのが心地良いだけでなく、再始動の背景には、上述のようにSUGIZOが社会に投げ掛ける真摯な問題提起もある。コロナ禍で一層分断が進み差別が蔓延するこの時代に、真の自由と人権を求めるうえで音楽は欠かせない存在である、というSUGIZOのメッセージに耳を澄まし、今後一層活動を加速していくSHAGの次なる動きを注視したい。

本配信は2形態のチケットが発売中で、いずれもアーカイヴ視聴が可能である[※日本時間 5/27 23:59まで。チケット購入は同日21:00まで]。形態①は、LIVE配信視聴のみの通常チケット(¥4,500)、形態②はLIVE+アフタートーク配信を視聴でき、全メンバー直筆サイン入り生LIVE写真セット(集合+各ソロの計7枚)が特典として付くチケット(¥10,000)となっている。アフタートークでは終演直後にSHAG全員で初座談会を実施。視聴者からリアルタイムで寄せられたコメントを紹介しながら、ライヴの感想やSHAGの魅力、メンバー同士への想いを語った貴重なトークが繰り広げられていたので、是非ご覧いただきたい。

Text by Tae OMAE
Photo by Keiko TANABE

▼SUGIZOオフィシャルサイト
https://sugizo.com

▼SHAG特設サイト
https://sugizo.com/feature/THE_SHAG_STRIKES_BACK

1

2