Hakubi主催ライブイベント、”京都迎撃2021”オフィシャルライブレポート

Hakubi主催のライブイベント『京都迎撃 2021』が8月9日に京都・KBSホールで開催された。

『京都迎撃』は、彼らが初ライブを行った2017年8月10日より、京都・KYOTO MUSEで毎年同時期に実施されてきた公演が、2019年に装いも新たにバンド主催のライブイベントとなったもので、今年はKBSホールで初開催。Hakubiに加え、Ivy to Fraudulent Game、TETORA、a crowd of rebellion、Brown Basketの計5組が出演を果たした。当日は、新型コロナウイルス感染防止対策についてメンバー自ら影アナを行い、フロアには「距離を保とう!」「ソーシャルディスタンス!」「ご協力ありがとう!」と手書きのイラスト入りで立ち位置指定がされるなど、バンドのもてなしの姿勢が端々から感じられる一日となった。

悪天候による公共交通機関の遅延を受け5分押しでスタートした本編では、出演バンドの登場時のコールもHakubiが手掛け、その声に真っ先に呼び出されたトップバッターは、Ivy to Fraudulent Gameだ。1曲目の「blue blue blue」からド迫力の爆音がホールに降り注ぎ、「やっと来れたぞ! 台風の中、コロナの中、覚悟を持って来てくれたから、こっちも覚悟をもってやります」(Gt,Vo / 寺口宣明、以下同)と、ヘヴィでグラマラスなビートを鳴らした「E.G.B.A.」でも壮大なスケールで圧倒。獣のようにステージを徘徊する4人が、後に控えるバンドへのハードルを上げに上げていく。

MCでは、「Hakubiが呼んでくれて、約4年ぶりに京都にやっと来れたと思ったら台風も来た(笑)。それでもこうやって駆けつけてくれたみんなに本当に感謝します」と述べ、洗練されたサウンドデザインとは裏腹のタイトルの「ゴミ」では、寺口がハンドマイクで艶やかに歌い上げ、「今日という日にピッタリの曲」と始まった「革命」では見渡す限りの手が上がるなど、バンドの振り幅をこれでもかと見せていく。

「一番手に選んでもらって最高です、素晴らしい景色をありがとう。これが俺たちとHakubiと皆さんの歴史の始まりだと思うので、これからもよろしくお願いします! でも、今日が終わればきっとまたつまんない日が来るし、生きてれば苦しい日が待ってる。だから俺たちは不安を歌うんじゃなくて、不安に対する在り方、そのときの自分を歌っていきます。また音楽を目印に、こうやって向き合って聴いてください。あと一曲、全てを置いて帰ります」

その音楽で、その言葉で、心を高ぶらせた「Memento Mori」まで全5曲。「また必ず旅の先で会いましょう」と、『京都迎撃 2021』に始まりの記念碑を突き立てたIvy to Fraudulent Gameだった。

「3年前の8月10日に、HakubiとKYOTO MUSEで対バンしました。それから3年間、お互いにいろんなバンドと出会ったと思うし、これは(Hakubiの)片桐(Vo,Gt)から5日前に来たメッセージにも書いてあったけど、今日は友達としてじゃなくて、仲間としてじゃなくて、迎撃対象として、ライバルとして呼んでもらってます。僕らもそういう気持ちで、もらったこの時間、精一杯出し切ります!」(Vo,Gt / 岸本和憲、以下同)

Hakubiとの関係性が伝わるMCから流れ込んだ二番手のBrown Basketは、初っぱなの「最後の夜」から互いに京都で切磋琢磨してきた3年という時間を音にするかのような気迫で、「奇跡みたいな日なんだ、当たり前じゃないんだ」と叫び、会場の熱気と拳を引き上げた「君の声を」に続き、「グッバイワンルーム」でも小細工抜きのストレートなバンドサウンドで迫りくる。

「めっちゃうれしいです、こんなに温かい拍手をもらえて。京都に来て5年が経ちました。それから誕生日とか父の日とか母の日は、普段は恥ずかしくて言えないありがとうを言うチャンス、口実になると思うようになりました。嫌いって何となく態度で示せても、好きという感情は言葉にしないと100%は伝わらない。僕らのそういう気持ちを歌にしました」
そんな「愛しているよ」の真っすぐな想いが見る者にぬくもりを沁み渡らせる。情熱ほとばしるラストの「BY MY SIDE」まで、真っ向勝負のパフォーマンスで挑んだBrown Basketだった。

「無罪者」のエッジィな音像とすさまじい音圧で空間を切り刻むようなa crowd of rebellionの壮絶な幕開けは、ド頭から脳天を叩き割られるような衝撃。「新潟から来ましたa crowd of rebellionです。遊べますか京都!」(Vo / 宮田大作、以下同)と、その手を一切緩めず投下した「Black Philosophy Bomb」でも、重さの中に華がある強烈なスクリーモサウンドで重戦車のように突き進む!

宮田のツンデレMCで時折場を沸かせながら、小林亮輔(Vo,Gt)とのカラーの異なるツインボーカルを軸に、攻撃力と破壊力しかないマッシブなサウンドウォールを「Never Say A Gain」でも構築。真紅の照明を浴びた「O.B.M.A」では、「全員目をつぶれ、イマジネーション=想像力。昔々ラウドミュージックにはこういう遊びがありました」と心のウォール・オブ・デスを巻き起こすなど、ひたすら重い音の打撃とサビの解放感が体を心地良くむしばんでいく。

「非常に楽しいです、どうもありがとうございます! 素晴らしい一日に、あと2曲思い切ってやっていきます。知ってる人がいたら心の中で一緒に歌ってください。聴こえるから!」と、クライマックスは再び轟音の雨に打たれた「M1917」、「『京都迎撃』最高!」とぶち上げたトドメの「Ill」と、最後の最後まで超重量級のライブで侵攻した圧巻のa crowd of rebellionだった。

Theピーズの「ノロマが走っていく」のSEを背に現れ、「音ぺらぺらでも、へたくそでも、今日一番ドキドキさせます。今日はよろしくお願いします!」(Vo,Gt / 上野羽有音、以下同)とぶちまけスタートしたTETORAのライブ。一聴しただけで何とも言えない魅力に引き込まれるハスキーな歌声で聴かせた「知らん顔」、鼓動のようなビートをロールさせる「正直者だな心拍数」、のたうち回るようにエネルギッシュなステージングで魅せた「嘘ばっかり」、夕景のようなオレンジの照明に打たれた「今日くらいは」と、冒頭のMCを体現するような楽曲の連続で、TETORA沼にずぶずぶと引きずり込まれていくようなこの感覚。

「こんな大事な日に混ぜてくれてありがとうございます! 同い歳、今日で4周年のバンド、京都Hakubi。うまく言葉も言えんくて、ずっともがいて、一緒にライブハウスでやってる仲間、戦友。お互い不器用やから、カッコつけることもできへんけど、それ以上に、素直に挑戦して、素直にライブハウスで戦って、素直に悔しがって負けたって認めて、そうやって毎日やってるロックバンドが、私は一番カッコいいと思ってます、一番強くなれると思ってます」

アーシーな魅力に溢れたリフレインが耳に残る「レイリー」、「未来のことも、来年のことも全部、どうなるかなんて毎回毎回の今日で決まるんです。だからHakubiのためじゃなくて、今日のためにライブします!」と宣言した「イーストヒルズ」と、Hakubiと共にシーンでせめぎ合ってきた日々を口にしながら最後の「素直」まで駆け抜け、これぞスリーピースバンドなシンプルでソリッドな魅力を放ち続けたTETORAだった。

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