coldrain、10月16日/横浜アリーナワンマン公演「15th ANNIVERSARY “15 × ( 5 + U )” LIVE AT YOKOHAMA ARENA」

 言ってみれば、彼らがデビュー当初から掲げ続けてきた「ラウドロック」という音楽自体がそういうものだ。幸せになりたいからこそ不幸の数々から目が逸らせない、楽しくなりたいからこそ楽しくないことと闘わなければならない、優しくありたいからこそ優しくないものを無視できないーーそんな鬱憤が溜まりに溜まった人間が、極端なほどの叫びによって自分を解放する。それが彼らの鳴らしてきたラウドロックの本質であり、彼らがロマンを抱き続けてきたロックの力そのものなのだ。幸せと不幸、優しさと怒り、生への希望と死への誘惑。そんな倒錯の数々を倒錯したまま叫びに変えられるのがラウドミュージックであり、それはそのままロックの根源的な回路と言ってもいいだろう。2010年代に日本の音楽シーンにオルタナティヴな存在として登場した彼らだが、人間の在り方自体が大きな分岐点を迎えて混迷を極めている今こそ、この叫びのような音楽がスタンダードとして鳴り響くのではないか。そんなことを思った。

「ルール面では一歩前進したと思うけど、マスクまで全部取っ払えた時に、この数年でやってきたことをもう一回やろうと思ってます。15×(5+U)の『U』は、coldrainがこれまで関わってきた人のことです。もちろん、こうしてライヴに来てくれるみんなもそう。俺達はそのみんなに夢を支えてもらってる。こんなデカいところでやりたいっていう夢をみんなに支えてもらってると思っていて。みんなにはみんなの人生の目標がある中で、その人生の一部に俺達の音楽があって、それが今ここにいる人の共通点になってる。でも俺達にはこの音楽しかなくて、みんなにはみんなの人生があるだろうに、ルールを守りながら動いてくれて。その人達に対してバンドが何ができるかって言ったら、それぞれの好きな曲をなるべく多くやることだと思ってて。だから、どうしても長くなってしまいます。支えてきてもらってきた分だけ、聴かせたい。いつかはあなたの好きな曲が聴けるようにライヴをしていくと約束します。いろんな目標、仕事、学校……いろんなタイミングで力が必要な時は、音楽に力をもらってください。それでも足りなかったらライヴに来てください。ちょっと早めに言っておくけど、またいつか横浜アリーナやるよ!」(Masato)

 火柱、上空からの火花、映像演出の数々、ラストに舞った銀テープ。これでもかと盛り込まれた演出の数々も観客の目を釘づけにしたことだろう。しかしそれすら飛び越えていくような、率直な言葉の数々、爆音の瞬発力、歌の力強さが終始持続したライヴだった。来年の初頭には「BLARE FEST. 2023」を開催することも発表されたが、このまま止まらないのは大前提で、coldrainはcoldrain自身のみならず、ロックバンドが今この時代に何と向き合い何を守って生きているのかを伝える存在として進もうとしている。<Make me the enemy just because I disagree/Cut me then you’d know that I bleed/Know that I bleed like you>(“Cut Me”)ーー何が痛いのか、何が苦しいのか、何が希望として残っているのか。それをはっきりと歌うためにロックバンドはここにいる。そんなことを徹底的に伝え続けるバンドとして、そして声を上げる場所を守り抜く意志表示として、coldrainは鳴らし続けている。そんなことを思う万感の一夜だった。

photo ヤマダ マサヒロ/Takeshi Yao

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