杉山清貴

杉山清貴 40周年イヤーに100周年を迎える日比谷野音でライブ! 夏を迎える都心で音楽の風を吹かせる!! 『The open air live “High & High” 2023』レポート

5月21日、今年でデビューから40年を迎える杉山清貴が、20年以上続けている野外ライブを日比谷野外大音楽堂で開催した。すでに5月10日、ベストアルバム『オールタイムベスト』と、オリジナルアルバム『FREEDOM』をリリースするなど精力的に周年活動を進めている杉山だが、数え切れぬ思い出を重ねてきた思い出の地・日比谷野音も100周年を迎えるということでこの夜は本人にとってもダブルでメモリアルな時間に。セットリストもそれにふさわしく40年以上の蓄積を感じさせるものだった。

杉山清貴

 ステージに登場した杉山は開口一番、客席に向かって「みんなも一緒に歌ってね」と声出し解禁ライブであることを伝え、最初に野音で響かせたのは「Kona Wind」。杉山のアコギと共に、バンドメンバーと合唱するサビ始まりのRemasterバージョンだ。続いて「水の中のAnswer」「あの空も。この海も。」と80年代に誕生させた楽曲でオープニングから観客を惹きつけた。
最初のMCでは、「(新型コロナの)規制から解放され、この日を迎えて嬉しく思います」「何が楽しみってこの野音が100年でおいらが40年、こんな日にライブができるなんて最高」と思いのたけをぶつけていく。さらには、「自分のライフスタイルの音楽を今日は持ってきました」「そう、“海”、“南の島”。鬱々とした気持ちを海に投げて、楽しい夏を、という気持ちでのメニューを用意しました」とこの夜の楽曲について期待を持たせ、集まったファンもその言葉に喜びを爆発させる。

杉山清貴

 そして、宣言してから「夏が来たね」「Mr. Happy Walk」という2009年のアルバム『Veteran』からの2曲を披露すると、「タイをはずして」と1987年楽曲に舞い戻る。30年を軽々と飛び越えるセットリストに、杉山が確立してきた音楽性を実感させられる。さらには、「自分でもいい曲だな」と自画自賛してみせた「long time ago」で若かりし日に失った恋を歌い上げ、いつまでも変わらずに透明感ある歌声が、一層の切なさを聴く者の心に湧き上がらせる。歌唱後には本人も思わず「気持ちいいね。もう一回いく?(笑)」と軽口をたたくほどにノッテいる様子だった。
その後、1996年から始めた日比谷野音での野外ライブについての思い出や、最新アルバムの『FREEDOM』のレコーディングについてなど、久々のファンとの時間をトークでも楽しんでみせる。
中盤に用意された楽曲は、杉山が「新しい生き方を見つけようと行ったハワイ」で出会ったジャワイアン=ハワイアンレゲエに触発され、1992年にリリースしたアルバム『Island Afternoon』から「HAWAIIAN ISLAND STYLE」と「MACAPUU」。その後、杉山にとって愛してやまない「夕暮れ時に合わせて用意した楽曲」という「Sunset Beach」「サンセット・ラブソング」で甘い時間を演出すると、「空から降りてくるLONLINESS」では、夜空から星が舞い降りるようなライティングの中、両手を広げながら杉山は伸びやかな声を響かせる。思わず、歌い終えた杉山からは「いい曲ですね」の言葉が。「音楽の流れが変わっていく中で、こうして自分が好きな音楽にあらたに出会える」という喜びを語っていった。

杉山清貴

ここから杉山いわく「後半の盛り上がる時間」に突入。杉山自身が「That’s 杉山ワールド」と称するブロックであり、世界を震わせる杉山流のシティポップスを次々と送り出していく。「A HOT SUMMER DAY」から「Nightmare」を経て、「Too good to be true」を歌い上げ、シティポップスの旗手としても進化し続ける杉山清貴の魅力に圧倒される時間でもあった。そして本編最後の「LIVIN’IN A PARADISE」では、ステージを左右に動きながら、身体を揺らし、拳を挙げ、杉山が70’sロックな楽曲をかっこよく歌い上げた。

杉山清貴

メンバー全員がステージを去っても客席からアンコールを求める拍手は鳴りやまず、応えて一番に飛び出してきたのは杉山だ。客席に向かって「自分だけが楽しみ過ぎちゃって、みなさんを置いてけぼりにしちゃいませんでしたか?」と声をかけたあと、今秋から今冬にかけてのバンドツアー決定、そして来年の春にはオメガトライブとしてのラストツアー決定を報告。「来年65歳になりますが、結構いろいろなところに行くと思います」と会場に期待を満たせたあと、ソロバージョンでの「ALONE AGAIN」、そして「じゃあもう一曲やって帰ろう!」の言葉の後で「ALL OF MY LOVE」を会場にプレゼントした。
『“High & High”』というライブタイトルが語るように、デビュー時から音楽に対して「高く高く」舞い上がろうとしてきた杉山らしく、絶えない意欲に満ちたライブはこうして幕を閉じ、杉山の情熱を浴びた観客は大きな満足の中で初夏の夜の夢に終止符を打った。
TEXT:清水耕司
PHOTO:粂井健太

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