ウクライナの国民的バンド・KAZKAと共演、コラボ楽曲初披露 平和への祈りを音楽で捧げた、SUGIZOソロツアーファイナル

アンコールの声を受けて再登場すると、SUGIZOはKAZKAの招聘についてコメント。キーウから陸路でポーランドに渡り、日本へとやってきた彼ら・彼女らを「命懸けで音楽を届けたい、という想いで来てくれた」と讃え、「このステージでお届けできたことを心から光栄に思っています」と感慨を述べた。「日本在住ウクライナ日難民の方々がたくさん来てくれています」とフロアを示すと歓喜のリアクションがあり、会場は温かなムードに包まれた。ウクライナに限らず「あらゆる国で苦境に立たされている人たちがいる」とSUGIZOはシビアな現状認識を語り、日本で、安全な状態で音楽を楽しめるのは当たり前ではなく、どれだけありがたいかを細胞レベルで痛感していると語った。

アンコールで披露するのは、「今だからこそ、表現しなければならない曲」と「SUGIZOの過去のメロディーをリアレンジして、歌詞を変えた曲」だと告げたSUGIZO。メンバー紹介を差し挟み、KAZKAを呼び込むと、サーシャはウクライナ国旗を手に登場。まず1曲目にSUGIZOとChloeがKAZKAに参加して披露する「I AM NOT OK」は、「戦争の時にウクライナ人が感じる気持ち」を表していると言い、「早く戦争が終わってほしい、世界中が平和になってほしいとお祈りしています」と語った。スクリーンに投影されたのは、戦禍の実情を生々しくドキュメントした、同曲のミュージックビデオ。SUGIZOはギターを奏でながらメンバーに代わる代わる近付いて、寄り添うようにプレイした。

2曲目は、SUGIZOとKAZKAが音のデータをやり取りして共につくり上げた楽曲「ONLY LOVE,PEACE & LOVE」を初披露し、全員でセッションした。ポジティヴな気持ちに導かれるような主旋律と、力強くピュアなコーラス。SUGIZOのギターが穏やかにコードを奏でていく。スクリーンには老若男女、とりわけ多くの子どもたちの微笑みの写真で溢れていき、出演者とオーディエンスが鳴らすハンドクラップが響いた。音楽ジャンルはもちろんのこと、人種、国籍、宗教の差異が生む境界線をすべて乗り越えて、平和への祈りを共に捧げた温かな時間であり、場所だった。

ラストは「Rest in Peace & Fly Away」の後半を、再びMAIKOのピアノと共にヴァイオリンで演奏。鎮魂の祈りで包み込む形で、ライヴは幕を閉じた。「素晴らしいファイナルを迎えられました、本当にありがとう!」とSUGIZOが挨拶し、全員でラインナップ。オーディエンスを含めた記念撮影をした後、KAZKAからサプライズでSUGIZOに花束が贈られた。公演の前々日にあたる7月8日がSUGIZOの誕生日だったことを耳にして用意したと明かし、KAZKAメンバーで歌ってくれたのは初めて聴くメロディーだったが、おそらくウクライナのバースデーソングだったのだろう。SUGIZOは少し照れ臭そうだったようにも見えたが、晴れやかな笑顔でKAZKAメンバーとハグを交わし、「ありがとうございました!」と改めて感謝を述べた。新しい歳を重ねられることは、もちろん当たり前のことではなく、戦時下はなおさら言うまでもない。ライヴ全体がそうであったように、この一幕もまた、平和への祈念を象徴するものに思えた。また、今回のライヴも楽器演奏の発電に水素燃料電池車を使用。LUNA SEAは水素燃料電池を電源とした世界初のライヴを2017年に成功させており、発案者であるSUGIZOは、自身のライヴやTHE LAST ROCKSTARSのライヴでも同試みを積極的に取り入れて来た。脱酸素の観点から注目されているサスティナブルな電気であるだけでなく、音質も良いとの実感をたびたび語っている。ツアー完走後も立ち止まることなく、LUNA SEA、THE LAST ROCKSTARS、SHAGとしての活動をますます活性化。音楽家として、社会活動家としての活動が相互に作用を及ぼし合いながら、SUGIZOの道程は続いていく。

Text:Tae Omae
Photo:Keiko Tanabe

1

2