Kitriの5年間を詰め込んだ、色彩と音楽の空間 『Kitri Live 2024 “Five years pieces”』ライブレポート

このパートでは1曲が終わってもサウンドを止めることなく、言わばクラブのDJのように曲間と曲間をキーボードやシンセで繋いでいった。ダイナミックなビートとループするキーボードのフレーズ、話すような歌い方が印象的な新曲の2曲目を経て、『矛盾律』へ。Monaの浮遊感のある歌声とメロの良さはもちろんながら、だんだん音階が高くなるHinaのコーラスとの融合には衝撃を受けた。<鮮やかな暗闇><ジャングルで神輿>など、相反するものや共存しにくいものを並べた歌詞、<火花で描き出す新たな1ページ><混ざり合って生まれた音>という表現を体現するような音数やギミックの多さ。まさに「音で遊ぶ」という表現がしっくりくる。同時に、ここではないどこかに連れていかれる不思議な気分になった。

このパートの最後を飾るのは『羅針鳥』。『矛盾律』も手がけた神谷洵平アレンジの楽曲だ。同期の指パッチンにHinaのリアル指パッチンを重ねるサウンドメイクも面白い。明るい希望が満ちていくメロディーラインで次なる第三幕への予感を抱かせて、第二幕を締め括った。

ビートが鳴り続ける中でMonaとHinaがはけると会場からは大きな拍手が贈られ、入れ替わりに白い衣装を着た羊毛と吉良がステージにカムバック。衣装チェンジの間、羊毛は即興的かつ超絶技巧のテクニックを惜しげもなく披露する。やがて吉良のあたたかくおおらかなチェロの音色が会場を包むと、白いワンピースに着替えたMonaとHinaが登場した。

第三幕は“Blanc”。“白い、空白、汚れのない”というテーマ。このまま第三幕の楽曲を披露するのかと思いきや、『羅針鳥』のラストの<ここからはじめまして あなたは羅針の鳥 ひたすら胸の中の音を頼りに飛んでいけ>から演奏を再開。『Blanc Noir』が2つのライブスタイルのハイブリッド型であったことから、2つのパートを地続きで終わらせた。

ここで久しぶりにMCタイム。Monaは「素敵な演奏をしてくださっているメンバーを紹介します」と述べて、まずは吉良を紹介する。Monaに「せっかくなので、ご自身でPRポイントをお願いします」と無茶振りされて戸惑う吉良は思わず羊毛に救いを求め、「吉良さんは頼みやすい」というPRポイントを得る。そのお返しに吉良は「羊毛さんのPRポイントはいっぱいありますけど、強いて言うなら、誰のチャーミングなところも見逃さずにすかさずツッコんでくれる」と、素が垣間見えるエピソードで和ませる。羊毛は2022年の『キトリの音楽会 #6 “三人姉妹”』に参加したのが吉良だけだったことについて不満そうにしていたが、その様子もなんだか愛らしく、4人の仲の良さがよくわかる時間だった。

『Blanc Noir』シリーズの“Melody Blanc”ではアコースティックスタイルでライブが行われたように、このパートでは全曲テンポ感を落としてゆったりと披露された。インディーズ時代にリリースした『opus 0』に収録された『リズム』に続き、“純潔・威厳・無垢”という花言葉を持つ『Lily』を極上のアンサンブルで演奏すると、チェロの響きが壮大な世界観を作り上げ、MonaとHinaのボーカル&コーラスの実力が存分に発揮された『実りの唄』を迫力たっぷりに演奏。さらに大橋トリオがプロデュースを手がけた『バルカローレ』、カバーアルバム『Re:cover 2in1』から、たまの『パルテノン銀座通り』を一言ずつ丁寧に、語りかけるように歌い上げた。それはあまりにも繊細で、いつまでも聴いていたくなる素晴らしい時間だった。

本編最後の曲は、2作目のEP『Secondo』から、『終わりのつづき』。奏でられるピアノもチェロも歌声もただただ優しく、美しい。<願いごと たくさんある 諦めない 触ってみるまで>という歌詞は、5周年という節目を迎えたKitriの今後の活動やクリエイティブに対する決意のようにも感じられて、じんと胸が熱くなった。

盛大に贈られた拍手はすぐさまアンコールへと変化する。ステージに呼び戻されたMonaとHinaは「7月にリリースされた新曲を歌いたいと思います」と、TVアニメ『義妹生活』のED主題歌『水槽のブランコ』を、同期も用いながらふたりだけで堂々と歌い上げた。後半に登場するMonaのポエトリーも、Monaを追いかける形でコーラスするHinaも本当に素晴らしかった。

改めて羊毛と吉良を呼び込むと、MonaがKitriの自画像を描いた5周年記念グッズのTシャツを着て登場。嬉しそうに頬をゆるませたMonaは改めて「5周年ということで、まず地元の京都でライブをやらせていただけてすごく嬉しいですし、私たちの音楽を聴きに来てくださるのが励みになっています。いつも言ってるんですけど、面白い曲をどんどん聴いてもらえるように頑張っていきたいと思っています。5年目、まだまだ始まりなので、新しいKitri、変わらないKitri、どちらのKitriも見ていただけたらと思っています」と挨拶した。

5周年ライブを締め括るのは、2022年に公開された映画『凪の島』の主題歌として書き下ろされた『透明な』。囁くように歌うMonaの声に、連弾しながら優しく寄り添うHinaのコーラス。楽曲にきらめきを与える羊毛のマンドリン、間奏で躍動感を増して抜群の存在感を発揮した吉良のチェロ。泣きそうになるほどの切ない高音とメロディー、そして透明感はどれをとっても最高に幸せで、音の一粒も取りこぼしたくないと思ってしまうほどだった。

全ての演奏を終えた4人はホッとしたように笑顔を浮かべ、三方にお辞儀をしてステージを去る。そんな4人の背中が見えなくなってもなお、客席からの拍手はしばらく鳴り止まなかった。

こうしてKitriのメジャーデビュー5周年を記念した『Five years pieces』は、大団円で幕を閉じた。クラシックをベースに置きながら、様々なジャンルをクロスオーバーさせ、新しく面白い音楽を生み出してきたKitriの実績と実力が存分に伝わる濃密なライブであり、機材を操りながら変幻自在にアレンジを織り込むポテンシャルの高さを、改めて感じられるライブでもあった。自分たちの音楽の可能性を信じて進むKitriの歴史は、これからも続いてゆく。

Kitri Live 2024 “Five years pieces”
2024年9月21日(土)京都教育文化センター

【セットリスト】
1.Akari
2.水とシンフォニア
3.人間プログラム
4.赤い月
5.ヒカレイノチ
6.時の詩
7.新曲1
8.ココロネ
9.新曲2
10.矛盾律
11.羅針鳥
12.リズム
13.Lily
14.実りの唄
15.バルカローレ
16.パルテノン銀座通り
17.終わりのつづき
EN1.水槽のブランコ
EN2.透明な

セットリストプレイリスト
https://kitri.lnk.to/Fiveyearspieces

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