セットリストは昨年とほぼ同様、曲のレパートリーが増えたわけではないのだが、5人のミュージシャンシップの成長によって一曲ごとの完成度が桁違いで、全14曲1時間強とコンパクトに纏まっているとは思えないほど充足感があるステージだ。エミリー(G)のギターはますます磨きがかかり、特に“Sinner”では、今、こんなに格好良いギターソロを弾きこなす女性ギタリストは他にいないんじゃないかと思ってしまう。また、今回特に著しい成長を感じたのがリジー(G)を中心としたバックボーカルで、3パートで美しいコーラスを響かせたり、勇ましくユニゾンを轟かせたり、はたまた“Gjuha”では宗教儀式を彷彿させるミステリアスなハーモニーを効かせたりと、声楽としての厚み、面白さが格段に増していた。
進化と言えばジョージア(B)の日本語もさらに上手くなっていて、「次の曲はちょっと哀しいです。一緒に歌いましょうか」「今、新しいアルバムを作っています。次の曲は“大きな犬”、英語だと“Big Dog”です」etc.、この国の言葉でファンと積極的にコミュニケーションを取ろうとしてくれていた。
ちなみに恒例の日本語でのメンバー紹介ではうっかりアビゲイルの紹介を忘れ、メンバー全員笑いを堪えながら“The Feminine Urge”を歌い始める、なんてチャーミングな一幕も。
ブロンディの“Call Me”のカバーで会場をさらに温めた後の後半戦は、The Last Dinner Partyの真骨頂たる過剰さが炸裂!彼女たちのエキセントリックの極地を示すナンバー、“My Lady of Mercy”ではエミリーがフライングVを、オーロラが巨大ショルキーを抱えて5人が横一列で並んだその様に、本当に絵になるバンドだと惚れ惚れしてしまう。客席に飛び込んだアビゲイルが真紅の薔薇の手にしてステージに戻ってくるのが、まるで映画のワンシーンのようだ。恐らくThe Last Dinner Partyの最新モードを示唆するナンバーである新曲の“Big Dog”は、マキシマリズム方向に思いっきりブーストをかけたホワイト・ストライプス、とでも喩えるべき恐ろしくヘヴィ&タイトな演奏。これが彼女たちの未来だとしたら、私たちはまだまだこのバンドの全貌を知らないということになるだろう。アンコールの“The Killer”は寸劇も交えつつの徹底してシアトリカルなパフォーマンスで、The Last Dinner Partyは本当に最後の最後まで手を抜かないというか、貫き通すべき美学の在処を確信しているバンドだ。ラストはもちろんこの曲“Nothing Matters”! オーディエンスの大合唱と共に完全燃焼の幕切れとなった。
この日はThe Last Dinner Partyにとって2025年のツアー最初のステージだった。つまりある種のウォーミングアップでもあったにも拘らず、かくも凄まじいパフォーマンスを見せてくれたのだから、大阪、名古屋とさらにヒートアップしていくことは間違いないだろう。
レポート:粉川しの
写真:Masashi Yukimoto
今回の日本ツアーは、本日4月18日(金)大阪・GORILLA HALL OSAKAでの公演、4月20日(日)愛知・NAGOYA CLUB QUATTROでの公演を残している。ぜひ素晴らしいライブをご覧いただきたい。 詳しくはこちら:https://smash-jpn.com/live/?id=4367
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