ライブはすでに中盤。時間が停止したかのような静寂空間が広がるなか、「sanctuary.」が始まると、真っ暗になったスクリーンに白い月が浮かび上がる。反射した光が降り注ぐ「cell structure.」でベースを中心に徐々にバンドが躍動しはじめ、映像の光とピアノがきらめきを増していったところで、スクリーンの映像は宇宙空間から地上へと落下し、真っ白い靄に包まれた森林に切り替わる。その真ん中に縦長に切り取られた海が映し出され、演奏が始まると、神秘的なシンセと圭のエフェクティブなギターとともに映像は海中へとダイブ。自然界初の超常現象がいま目の前で起こっているような錯覚に陥る未知なる音の世界を、彼らはアンビエントとシューゲイザーに即興性が混ざり合ったこのメンバーならではの研ぎ澄まされた演奏で、現代アートを描くようにサウンドを構築してみせた。神秘的なキーボードとともに、うごめきだした圭のギターがクラブシーンに繋がるビートをとらえ、展開していった「the sin.」でバンドは一気に熱量を放出。ステージは真っ赤な照明に包まれ、白いスモークが何度も吹き出すなか、圭は激しくギターを弾き倒してスパーク。そのあと、柔らかで耽美的なピアノに誘われ始まった「eve.」では、圭のギター・ソロのエネルギーを受けて映像のなかではなにもなかった場所に、薔薇が次々と開花。「in the light.」が始まると、映像にはこれまで感じなかった温もりを感じさせるような木漏れ日が差し込み、生命の息吹、その誕生を祝福するような明るいタッチのメロディーがギターから次々と生まれ出ていく。照明に照らされ、どんどん明るくなるステージ。そこに「embrace.」が流れだすと、ピアノとギターが奏でるメロディーが音符となって優雅に歌い踊り出し、極上のファンタジックワールドが場内に誕生。そうして、ラストに「utopia.」を演奏すると、映像は再びオープニングの海へと戻って、ライブは終了した。
アルバム『utopia.』を立体的芸術作品として鑑賞した本編で、圭ならではの“エッジーなアンビエント”ライブをとことん堪能した後、「cry symphony.」で幕開けしたアンコールは圭がハンドマイクを持って歌う歌ものライブを展開。歌、楽曲を通して美メロメーカーの圭の魅力がたっぷり感じられるカラフルなメロディーが場内に解き放たれていくと、スタンディングで体を揺らすオーディエンスの表情もとたんに緩んでいく。歌とともに、ここでは本編では封印ぎみだった圭の饒舌なトークも解禁。そのなかで、2022年は『utopia.』を1月26日にリリースすることをまずサプライズで伝えたあと、その後は「今日もインストの『utopia.』と歌ありをやったけど。その2つの俺を“融合”させるためにちょっとお休みしようかな」と考えていることをファンに告げた。しかし「じゃあ次はいつ会えるの?」とファンを不安にさせないために「2021年は4月12日、新月の日に“輪廻の新月”というライブをやって、そこで初めて歌ったんだけど。2022年は4月17日が満月。その日渋谷ストリームホールがとれたからライブやります」といい、予期せぬライブ告知でファンを大いに驚かせた。さらに、2022年は自身の誕生日も満月であることを自慢げに話し「2022年のニックネームは“Mr.フルムーン”だから」といって場内を和ませた。そうして、BAROQUEが休止して以降「みんなに支えられて、頑張りたいなと思えた1年だった」と2021年の自分を振り返ったあと「2022年は休みの間に何かをつかんで帰ってきて。みんなを支えて、引っ張っていきたいと思います」とファンに向かって高らかに宣言。そうして、最後にいまやソロのライブのクロージングソングの定番となった「ring clef.」をピアノとギターを演奏しながら歌って、2021年の活動を締めくくった。
文●東條祥恵
ライブ写真●上溝恭香(TAMARUYA)
圭 NEXT LIVE
2022年4月17日(日) 渋谷ストリームホール
*To be announced
圭ファン旅行 旅SYNERGY伊東編
2022年2月4日(金)~2月5日(土)
詳細・お申し込みはこちらから
https://sk-tours.jp/kei2022-synergy/
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