圭(BAROQUE)が4月17日、東京・SHIBUYA STREAM Hallにてワンマンライブ『MOONPHORIA -帰還の満月-』を開催した。ソールドアウトで迎えたこの日の公演のレポートをお届けする。
新月の夜、舞台の中央にマイクスタンドを立てて、自分が過去に作った曲に背中を押されるようにギタリストだった圭は歌いだした。あれから1年ーー。歳月とともに、いろんなものを受け入れることで月は満ち、満月になった。ギタリストだろうがボーカリストだろうが、いつ作った曲だろうが誰と一緒に演ろうが、自分は自分の音楽を表現していくだけ。この日の圭は、これを清々しい顔で体現。人々を幸せにするような笑顔で終始フロアを照らし、これまでになかったような人間らしい温かみを観ているものに宿すハッピーな一夜を、ボーカルライブで作ってみせたのだ。そんな圭を祝福するように、昨晩から夜空には美しいピンクムーンの満月が姿を表していた。
ジョン・レノンをBGMにメンバーが静かにオンステージ。この日は結生(Gt/メリー)、山口大吾(Dr/People In The Box)、hico(key&Mani)といういつものサポートメンバーに、かつて圭とkannivalismを一緒にやっていたYUCHI(Ba/sukekiyo)が新しく加わった。hicoの白い鍵盤にスポットがあたり、静かに「wailing wall.」の美麗なフレーズを響かせる。いつもの花道の代わりに、舞台中央には圭ソロでは初となるお立ち台がお目見え。そこに立った圭は、ハンドマイクで自身のマインドにこの世に生まれた理由を問いかける。問いかけながらも、答えを確信している迷いのない歌だった。そこから“此処では無い世界求めた”と歌う「17.」へと展開すると、静寂に包まれた場内に、エネルギーが解き放たれていく。多弦ベースから繰り出すYUCHIの強力なグルーヴ、アクティブなパフォーマンスがさっそく圭のギターを始め、バンドを刺激。その音の高まりが高揚感を誘い、客席からは自然とハンドクラップが巻き起こり、「pitiful emotional picture.」では、ギターを背中に回した圭が、ハンドマイクで歌いながらフロントを軽快に動き出す。オープニングをつとめる曲たちは1年前とほぼ同じ顔ぶれ。緊張感が続くなか、新しい姿を「理解」しようとお互いが気張っていた1年前とは違い、今日はステージと客席、ともに「楽しもう」とい気持ちを共有しているように見えた。「今日、俺は楽しみだったんだけど、顔を見てるとみんなもそうなんだというを実感した」と、オープニングからすでに圭もその変化を感じている様子。「この1年、やってきたことすべてに意味があって、作ってきた曲すべてに意味があると分かった」と語りかけたあと、驚きだったのは、このあと圭がバンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHIの大桃子サンライズに提供した「青空に吹かす夜、晴れ渡る日」を歌い出したこと。意外にもこの疾走感溢れるバキバキの歌ものの表現が、圭のいまのモードにフィットしていて、聴いていて清々しい気分になった。ブルーライトに包まれ、変拍子のなかで歌とインストをクロスオーバーさせていく世界観をもった「the blueroom.」、そこから山口のシャープなドラミングの上をベースがファンキーに飛び跳ね、体をバウンスさせていったインスト曲「longing star.」。歌ものからギターインストへと見事に流れていくセットリストを、1本のライブのなかに違和感なく組み込めるようになったのも、いまの圭ならではだ。
続いて、この日はYUCHIがエレクトリック・アップライトベースを構えると、kannivalism時代によくプレイしていたROUAGEのバラード曲「Home sick」をカヴァー。大人仕様にアレンジした音に包まれ、圭の優しい歌声が場内を癒していく。歌い終えたあと「カニちゃんで演ってた曲を時間が経って、また(YUCHIと)一緒に演奏できるのは感慨深いです」と感想を述べたあと「今日はピンクムーンなのでセクシーな演奏でお届けしましょう」といって曲は「moon dreams.」へ。繊細な表現からダイナミックに変化していくバンド演奏で、スケール感たっぷりに月を描いていく。ここではhicoのジャジーなピアノソロにシンクロして、圭のギターが艶めきだし、そこにバネ感たっぷりベースがからんで、肉感的にもセクシーさを表現。バンドの体温がうねりだしたところで、「the salvation.」でロックモードが急激に目覚める。そこから早口な歌でパッキッシュに突っ込んでいく「4letter word.」でテンションを上げていったところで、幻想的なギターのリフレインから始まる「autophobia.」で観客をいっきにクールダウン。そこから夜空へ連れていった「cry symphony.」は、これまで観たどのライブよりも歌とサウンドが美しくエモーショナルに見事に溶け合い、夢と現実の間を泳いでいるような余韻に包まれるパフォーマンスに陶酔。
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