ムーンライダーズがアルバム「It’s the moooonriders」レコード発売記念ライブを9月24日(土)に東京・昭和女子大学人見記念講堂で開催した。
レコ発ライブは当初、3月13日の日比谷野外音楽堂で予定されていたが、ニューアルバムのリリースが3月から4月20日に延期となり半年遅れでこの日、実現した。ムーンライダーズがレコ発ライブを開催するのは、2011年のアルバム「Ciao!」リリース時以来、11年ぶりとなった。
開演前、場内にはメンバーとスタッフの間で交わされると思しき会話が流れてくる。バックステージでのやりとりが漏れてる?と思われたが、よく聞くと会話はループされている。なんと、これは開演前SEだった!と観客が気づく頃、客電が落ち、ステージ左右のキーボードにスポットライトが当たり、2台の鍵盤が静かに音を奏でだす。暗い照明の中、メンバーがステージに表れ各々がポジションに着くと、ゆっくりと演奏が始まった。アルバム「It’s the moooonriders」1曲目に収められた「monorail」だ。同曲のヴォイス・コラージュをアジテーションするように、メンバーが生声で再現する。オーディエンスには『今日はレコ発ライブだがら、アルバムの曲順通りに演奏するのね』と思わせておいて2曲目は、普段なら終盤に演奏されるキラー・チューンの「ボクハナク」をもってきた。しかも作者でベーシストの鈴木博文はピアノを弾きながら歌っている。よく見るとベースは、澤部渡が軽やかに弾いているのだ!斬新なアレンジでの人気曲演奏にファンは大喜び。
続いては「岸辺のダンス」。ここからようやくアルバム曲を収録順に演奏していく。4曲目の「S.A.D」から3人編成のブラス隊、クレセント・ホーンズが入る。エンディングで弾かれる白井良明のギターは段々と曲調を変えながら、そのまま次の「駄々こね桜、覚醒」に繋げていく。実にカッコいいシーケンスだ。
この日はキーボードの岡田徹の体調が芳しく無く無念の欠席。岡田のパートは佐藤優介(カメラ=万年筆)が孤軍奮闘で勤め上げた。鈴木慶一は『今日は岡田くんがいないんですが、岡田くんの曲やります。歌詞は澤部くんです』と紹介し演奏されたのは「三叉路のふたり」。ここでは澤部渡(Skirt)がリード・ヴォーカルを披露する。「親より偉い子供はいない」では、曲中に落語家の春風亭昇太が演じる白井良明の父が『オ〜イオイヨシアキちょっと聞いてくれ!』と息子を叱るパートを澤部渡が担当。澤部、リード・ヴォーカルに白井良明の父役と大活躍。
「再開発がやってくる、いやいや」では白井良明が、この日のゲストのDAOKOをステージに迎え入れる。アルバムでは同曲のレコーディングに参加した彼女だが、引き続き次の曲でもコーラスで参加。『こういうおじさんバンドとの共演はどうですか?』と振られたDAOKO。まだ25歳でライダーズ世代ではないが、父親がライダーズ・ファンで、父からレコードを受け継いでよく聴いていたことを明かす。共演には『光栄です。感無量です。贅沢に楽しませてもらいます』と答えると、客席から温かい拍手が送られた。
ステージを降りるDAOKOを『素敵でしたなぁ』と目を細めて見送る鈴木慶一は、『ずーっと新しい曲やってきたんで、もの凄く古い曲やろうと思います。かしぶち君の曲をやりたいと思います』と紹介したのは「Beep Beep Be オーライ」。1977年に発表したアルバム「イスタンブールマンボ」に収められた曲で、2013年に亡くなったかしぶち哲郎の作品だ。
慶一の言うように、この日のいちばん古い曲ではあるが、ここまで演奏した2022年の楽曲群との隔世感は全くない。1977年と2022年が地続きで繋がっているようで、改めてムーンライダーズ曲の普遍性を思い知らされた。続く「D/P (ダム/パール)」ではかしぶち哲郎が書いた詞を澤部渡が歌う。2曲続けてのかしぶち作品の選曲に、古参のファンも懐かしい思いを馳せながらじっと聴き入る。
『6ヶ月遅れのレコード発売記念ライブは妙な感じです』と話しはじめた鈴木慶一は『白井良明さんが娑婆を離れてたからです(笑)』と良明を名指しで糾弾(?!)。白井良明は1月に入院。その間、レコーディングが中断し発売が3月から4月に延期となって、レコ発ライブも半年ずれこんだ。ここで慶一は、ひとしきり健康談義を重ね『長生きの秘訣は笑って暮らすこと!最後にお送りするのは”Smile”です!』と鈴木博文のピアノで「Smile」を演奏し、本編は終了。
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