9月22日、東京・新宿ピカデリーにてDIR EN GREYのLIVE FILM、『残響の血脈 ~mode of Withering to death.& UROBOROS~』公開記念舞台挨拶付き上映が二回にわたり実施され、ともに満席の盛況となり、この作品に対するファンの関心の高さをうかがわせた。
今年、メジャー・デビュー25周年を迎えている彼らは、去る3月には『EUROPE TOUR24 FROM DEPRESSION TO ________ [mode of Withering to death.&UROBOROS]』と銘打たれた欧州ツアーを行なっている。これはツアー・タイトルにも含まれている『Withering to death.』(2005年)、『UROBOROS』(2008年)という2作品を軸とする演奏内容の公演を交互に繰り返していく形式によるもの。彼らはこれまでにも国内では過去作品をテーマに据えながらのツアーをシリーズ的に展開してきたが、国外での実施はそれが初となり、広く注目を集めていた。
本作品は、同ツアーの最終公演地にあたるドイツはベルリンでの二夜公演の模様を追ったもので、各夜のライヴの一部始終のみならず現地でのメンバーのインタビューなども盛り込まれ、一夜ごとに個別の作品として、二部作のような形式で制作されている。彼らのライヴ映像作品はこれまでにも数多くリリースされてきたが、映画館の大きなスクリーンと音響でそれを味わうことができるとあって、制作・公開について報じられた当初から、ファンの期待感も当然のように高まっていた。
今回は9月から10月にかけ、双方作品が連続ロードショー公開されることになったが、まず9月20日には『mode of Withering to death.』の上映を迎えた。そして冒頭にも記したように、同22日、新宿ピカデリーにて公開記念舞台挨拶の機会が設けられた。上映時と同様、いわゆるライヴ時のような“声出し”は禁じられていたものの、メンバー全員が揃って登場する貴重な機会とあって、劇場内には不思議な緊張感の伴った空気が充満していた。
本記事では、同日の15時半からスタートした2回目の舞台挨拶についてお伝えしていく。定刻通りに薫、Toshiya、京、Shinya、Dieの順に姿を現したメンバーたちは、濱﨑幸一郎監督とともに登壇。最初に濱﨑監督は「昨年10月頃にドキュメンタリーを撮るという企画がふわっとした形で持ち上がり、せっかくならば意図のあるものを撮りたくなった」と当初の動機を説明。それに続いた「よりコンサートに近い体験ができるものにしたいと考えた。それ以前にまず僕自身がDIR EN GREYをスクリーンで観てみたかった」という発言に、来場者の多くは共感をおぼえていたことだろう。
その後、司会者からの質問に答える形式で話が進行。京が突然、床に座り込んでアイスコーヒーらしきものを飲みながら隣のShinyaの靴にいたずらを始めるなど、司会者も来場者も反応に困るような場面もみられたが、そうした部分もまた、型に嵌まらないこのバンドらしい一面といえるかもしれない。ちなみに京はその後、楽屋でみつけたというみたらし団子を食し始めてみたり、フォト・セッションの際に映画の告知ボードの裏側にまわってみたりと予測不能な行動に出ていた。以前から「カテゴライズ不能/不要なバンド」とされてきた彼だが、何よりも不可能なのは彼の言動を予測することかもしれない。
とはいえ勿論、そうした場面ばかりに終始したわけではなく、ことに薫の発言からは映画に伴う音像へのこだわりの強さがうかがえたし、試写会の際に音の迫力と劇場の環境でそれを聴くことの心地好さについて実感したというDieは、直後に鑑賞を控えている来場者に向けて「真剣に観れば観るほど眠たくなる危険性があるから、眠らないように」と注意を呼び掛けていた。
こうして事実関係を追っていくだけでも、DIR EN GREYがいろいろな意味においてギャップに富んだバンドだということがご理解いただけるはずだが、実際、濱崎監督も、自身が彼らに惹かれた理由のひとつがそこにあることを認めていた。「ひとたびカメラが回り始めると、どうしても監督とバンドという位置関係になってしまうが、なにより5人それぞれの人柄が大好きなので、それが滲み出るような作品にしたかった。ステージでの彼らが人間離れしているだけに、インタビューでは人間味あふれる言葉を引き出すことでコントラストを表現したかった」という監督の言葉はことに印象的だったし、実際、監督がそうした視点の持ち主であるからこそ、この作品が成立し得たのだともいえるはずだ。
終盤、Shinyaからは「何回も観に来てください」、Toshiyaからは「DIR EN GREYがヨーロッパにどんな足跡を残してきたのかを見て欲しい」といったメッセージが発された。そして薫の口から明かされたのは、この作品のいわゆる“声出しOK上映”が検討され始めているという朗報だった。具体的な調整等はまさにこれからのようだが、声をあげ、合唱し、ヘッドバンギングもOKという形で上映されることにでもなれば、この作品はますます体験型の作品として価値を高めていくことになるのではないだろうか。
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