L’Arc~en~Ciel、初のクリスマスライヴで11万人を笑顔に

12月19日(水)、20(木)の2日間にわたり、L’Arc~en~Cielが東京ドームで1年8か月ぶりとなるライヴを開催、各日55,000人、延べ11万人を動員した。『LIVE 2018 L’ArChristmas』と題し、コンセプトは「マジカルクリスタルナイト」。クリスマスを目前に控えた季節に似合う、冬の曲を中心にセットリストを構築。20年以上ぶりに披露する楽曲も複数盛り込んだ、コアファン感涙の驚きに満ちた選曲。L’Arc~en~Cielらしい美意識に貫かれたステージセット、映像、照明が織り成す幻想世界に引き込んだ。本レポートでは最終日の様子をお伝えする。 東京ドーム正面ゲート前には、代々木公園で行われていた「L'ArChristmas Park」のシンボルだった高さ5mの巨大クリスマスツリーを設置。柱にはメンバーの巨大な写真が貼られている。それらは撮影スポットとなっていて、ファンは入場前から特別なムードを楽しんでいる様子だった。 公演は、氷の世界を純白のトナカイが駆け抜けるファンタジックなオープニング映像で幕開け。目を閉じたメンバーが一人一人封じ込められている氷が割れ、眼を開くと、順にポップアップで登場。大歓声に包まれた会場に響いたのは、大ヒット曲『winter fall』。トナカイの角のようなフォルムの白い大樹がステージにはそびえ、根元にはクリスタルのオブジェが並び、そこにライトが灯ったり炎が揺らめいたりして、冬の寒さ、冷たさとそれゆえに感じられる温もりをも表現していく。続く『Caress of Venus』ではレーザービームが放射され、心地よさそうにリズムに乗りながら歌い演奏するメンバーの姿に、会場も一層沸き立つ。ミリオンヒット曲『snow drop』でどよめきが起こると、予め観客に配布されていたL’edバンドが点灯。LEDスクリーンに映し出されていた銀世界と会場全体とが地続きの、青の世界に染められていく。hyde(Vo)は「L’ArChristmasへようこそ! 1年8か月ぶり。揃いましたね、これ。L’Arc~en~Cielです! どうですか、この、並び。これ、トランプだったらかなり強い手だと思います。これは既にクリスマスの奇跡が起こっている、ということでは?! 平成最後のL’Arc~en~Cielを存分に楽しんでいってくれ! こんな師走の平日に来てくれてる皆さんは、かなりのマニアだとお見受けしたので」と挨拶。「今日は久しぶりの曲をご用意させてもらいましたので、最後まで一緒に楽しもうぜ!」とまずは「BLESS」を披露。バンクーバーオリンピックのテーマ曲としても親しまれたこの名曲を、東京ドームという大会場でありながら、どこかアットホームさを感じさせる、親密でエモーショナルな歌と演奏で届けた。 この直後、ken(G)のギターリフで空気は一変。『接吻』が始まると、hydeは帽子を脱いで代わりにサングラスを装着。エッジィなロックンロールを良い意味で荒っぽく鳴らし、妖しく高下するメロディーを退廃的に響かせて、それまでの流れとは全く異なるヘヴィさを見せつけた。続く『fate』は『接吻』の余波を受け、感情の昂ぶりや強さ、切々と問い掛けるような鋭さの際立つパフォーマンスを展開。一音一音が明瞭かつ抑制的なプレイであると同時に、秘めた情熱を感じさせる躍動感に溢れたyukihiro(Dr)のドラミングも効いていた。 ここまで、どの曲でも大歓声やどよめきが起きていたが、20年以上ぶりの披露となる『Dearest Love』が始まると、会場はすっと息を呑むように聴き入った。サングラスを外したhydeが吐息を交えながら切々と、ファルセットも多用して清らかな歌声を響かせると、tetsuya(B)も極めて美しいコーラスで寄り添う。<何もかもが燃えてゆく>と歌う歌詞に先んじて、ステージは燃え盛る炎で赤く染まり始めていった。曲が内包するテーマを浮き彫りにする、忘れがたい演出だった。 やがて、氷った冷たい海の中で煌めく光のような、透明感のあるギターの音色が響き始める。心象風景を思うがままにスケッチするようなkenの詩的なギターソロはやがて、『MY HEART DRAWS A DREAM』のイントロへと発展した。hydeがセンターステージへと歩み出て、大きく両手を広げると、yukihiroの刻むリズムだけを残し演奏を止め、ファンの合唱にメンバーも耳を澄ます。その場に居合わせることで、大きな愛をごく自然に噛み締めることのできる、稀有な曲である。そんな幸福感の中、アカペラでスタートしたのは『Hurry Xmas』。コーラスするtetsuyaにhydeが近付き肩を抱くと、会場は大歓声。LEDのツリーが出現し、客席のL’edバンドも赤白緑のクリスマスカラーで点灯。ジャジーで軽やかなこのクリスマスパーティーソングには、理屈抜きの楽しさがあった。 エンジン音を皮切りとする『Driver’s High』では、花火が炸裂してボルテージが上昇。kenはセンターステージへ移動、yukihiroがメインステージを守り、hydeとtetsuyaはそれぞれ花道両端へ。視界が一気に開けて行くような明るさと疾走感が歌と演奏から迸っていた。その勢いのまま、『DIVE TO BLUE』へと雪崩れ込むと、メロディアスかつ滑らかでありながら凄みも感じさせるパフォーマンスで圧倒。カラフルなバルーンがアリーナにいくつも弾み、その中から小さな風船が溢れ出していく。一旦メンバーはステージから姿を消し、10人ほどのサンタクロースがアリーナに登場。大きな白い袋からプレゼントを客席に投げ入れる、という微笑ましい演出を見せた。 センターステージに、サンタクロースの群れに紛れて一瞬だけサンタ衣装をまとったhydeを筆頭に、メンバーが再登場。「クリスマスっぽくアレンジしました」(hyde)という言葉通り、kenとtetsuyaがハーモニーを響かせる美しいコーラスを添えた『未来世界』アカペラヴァージョンは、しっとりとした珠玉の仕上がり。tetsuyaはアップライトベースでメロディーを慈しむように指を運び、情感豊かなフレーズを奏でていく。「メリークリスマス!」と歌に織り込んで曲を終えると、スクリーンには宇宙の映像が広がり、20年以上ぶりに『静かの海で』が披露されたことに驚嘆。精巧に設計されたライティング、スペイシーな映像、そこに重ねて映し出されるメンバーの姿…それらすべてが合わさって、曲の世界を美しく具現化。<feel heavenly>とメンバーも観客もコーラスすると、まるで讃美歌に包まれるような厳粛な心地に。この上なく神秘的な体験だった。宇宙的な質感はその後エレクトロなSEへと受け継がれ、『trick』へと突入。4人はギターを構え、花道のスライディングステージに立ち、順にヴォーカルを執っていく。メインステージへとたどり着くと、最後にhydeが歌唱。4人が横一列に並んでパフォーマンスする姿は、凄まじいオーラと迫力。いつまでも歓声が絶えなかった。 歴代のレパートリーに並んで、近年の楽曲群も実験心に富んでいるのがL’Arc~en~Cielの凄み。4人それぞれに抑制と解放のバランスが絶妙だった『X X X』、怒涛の転調と動き回るフレーズがひしめいているのに、まるでシャンパンの海で揺蕩うような夢見心地に誘った『Wings Flap』。この2曲で見せた洗練と官能、妖艶さは成熟した大人のバンドならではだと言えよう。『Link』を放つと、ゴールドやオレンジの銀テープが噴出。弾けるような明るさと、終盤が近付いて来た寂しさとが入り混じり込み上げてくる。メンバーも観客もジャンプやハンドクラップを繰り返し、全身を音楽に委ねていた。「皆さん楽しんでるかな? 僕も楽しめております。皆さん素晴らしい!」と笑顔を浮かべるhyde。「今回は、1年8か月ぶりにL‘Arc~en~Cielが揃ってるんですけど、その時(2017年4月の東京ドーム公演)に〝聴きたい曲″を募集したわりにはあまりやれなかったので、反省して、その上位から冬っぽい曲を選んで今日はやらせてもらってるんですけど」と明かすと大きな拍手が起きた。「次の曲はアマチュア時代からやっている長い曲です。案外クリスマスっぽいなと思ったので、選びました」と、『White Feathers』を披露。眩い白い光に照らされるステージに羽根が舞い落ちる中、しっかりと呼吸を全員で合わせ音を奏でていく4人。たとえ実際に羽根が降ってくる演出がなかったとしても、聴き手の脳裏に羽根を想い浮かばせたであろう、豊かなイメージ喚起力があった。 余韻に浸っていると、サンタクロースが再び登場して花道で手拍子やウェーブを先導、場を温めた。ややあって、最新シングルである『Don’t be Afraid』が鳴り始める。ダークさと華やぎを併せ持つドラマティックなナンバーを披露し終えると、tetsuyaがマイクを執った。初日のMCでは、「初めてのクリスマスライヴらしいです。“初めて”って感じせえへんよね? “ラルクリーム”とか、ダジャレのグッズつくってたのに、『L’ArChristmas』は初めてなんですよ。 なんで思いつかへんかったんやろう?」とtetsuyaは笑わせ、2日目は、国内外2万人のライヴビューイング参加者に向けても挨拶。また、なぜサンタクロースが赤い服を着ているのか?についてhydeと対話、観客ともコミュニケーションを図った。クリスマスらしい煌めきに満ちた『twinkle, twinkle』で会場を沸き立たせた後、アカペラで歌い始めたのは『I Wish』。観客が手拍子しながら声を合わせて行き、hydeはセンターステージに立ち、更に多くの声を求めるように手を広げる。コーラスを歌い続ける観客とバンドとが寄り添い合い、穏やかな一体感に包まれた時間だった。 「皆の笑顔を見られて、今日はここに立てて、幸せとか、皆からのプレゼントを(もらったと)感じたので、すごく感動して、最初から泣きそうになっちゃって…ありがとうございます。皆が笑顔になるのが楽しいから、サンタクロースの気持ちが分かりました。僕たちからのプレゼントは皆にちゃんと届いたかな?」とコメント。盛大な拍手が送られた。「クリスマスということで、『神様っているのかな?』って考えてみました。でも、神がいなかったとしても、クリスマスってたくさんの人に夢を与えることができてるじゃないですか? 信じるとか信じないじゃなくて、今日僕たちがこうやって出会えた奇跡、そして愛し合った時間。これはたしかに存在してた。とても重要なことだと思います。導いてくれたこの日に感謝します」と、L’edバンドで『L’ArChristmas』との文字が客席に灯される中、マイクを握り、最後の曲「雪の足跡」へ。オルガンの醸し出すノスタルジー、yukihiroの落ち着いたドラムのリズム、tetsuyaの粒立ったベース フレーズ、kenの情感豊かなギターの音色、hydeが全身の力を込めて歌う劇的なメロディー。ステージには雪が降り、アリーナには紙吹雪が舞い散った。最後に「Silent Night」の一節を短く織り込んだアレンジで曲を終え、「どうもありがとう! メリークリスマス!」(hyde)と挨拶。全ての音を鳴らし終えた後、力を出し切った、とでも言うように深く頭を下げたyukihiroの姿も印象的だった。 メンバーはステージを去り、一人残ったtetsuyaがバナナを客席に投げ入れ、何度もダッシュしては全方位の観客とコミュニケーション。「ありがとう、まったね~!」と深い礼。約3時間の、まさしく夢の時間は幕を下ろした。 L’Arc~en~Cielらしい美意識が隅々まで行き渡っていて、ゴージャスだが決して華美ではなく、エレガントでシック。媚びは皆無だが、ファンへの愛は充分過ぎるほどに伝わってきた。冬の寒さ、雪や氷の冷たさをモチーフにしながら、クリスマスならではの胸の高鳴りや切なさ、人を愛おしく想う気持ちそのものまでをも浮かび上がらせる、総合的な表現。L’Arc~en~Cielにしか実現しえない、魔法のようなステージだった。 カメラマン:今元秀明、岡田貴之、緒車寿一、加藤千絵、田中和子

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