新潟県・苗場スキー場にて2019年7月26日~28日にかけて開催されたFUJI ROCK FESTIVAL。
今年は、THE CHEMICAL BROTHERS、SIA、The Cureをヘッドライナーに迎え、来場した13万人(前夜祭を含む)の音楽ファンを熱狂させた。
台風の影響による大雨で、2日には<GREEN STAGE>~<WHITE STAGE>間の道が浸水し、一時封鎖されるという前代未聞のハプニングも起こったが、国内外のアーティストたちが熱狂のパフォーマンスを繰り広げた。
ここでは、編集部によるフォト・レポートをお送りする。
ALVVAYS
カナダはトロントからやってきた、シューゲイズ・ドリーム・ポップ・バンド、ALVVAYS(オールウェイズ)。
バンドが紡ぐ、甘酸っぱさ満載のメロディーの上を浮遊するフロントウーマン、モリー・ランキンの儚い歌声は気持ちいいの一言。
熱狂続きの苗場とフジロッカーの熱を冷ましてくれる砂漠に出現したオアシスのごとく、オーディエンスを包み込むようなステージだった。
温かくて、優しくて、懐かしくて、何だか胸がギュッと締め付けられる感情しか生まれてこない、彼らの魅力である「浮遊感とノスタルジック」を存分に味わえたライブだった。
JAY SOM
「Baybee」で幕を開けたJAY SOMの初来日ライブ。
原曲のファンキーなベースラインは健在だが、後半メリーナとギタリストのオリヴァーがかき鳴らすロックなギターがなんとも痛快。
続く、故エリオット・スミス的な哀愁漂う美メロ・ナンバー「Ghost」も緩急をつけた大胆なオルタナ風アレンジが加えられており、冒頭2曲から原曲と一味も二味も違う、遊び心ある自由な演奏で観客をノックアウト。
中盤は、80’sラウンジ・ミュージックの残り香も感じさせるメロウな「Tenderness」やシューゲイザー的ギターが爽快な「Superbike」など、今月リリースされる最新アルバム『Anak Ko』からの新曲がメインに披露された。
「The Bus Song」〜「Pirouette」の流れで、約10分間に及ぶ壮大なジャム・ナンバーとなった後者のスペイシーなグルーヴ感、メンバーによる歯切れのいいギター・カッティングとうねるベースの駆け引きは圧巻だった。
SHAME
ファット・ホワイト・ファミリー(Fat White Family)やゴート・ガール(Goat Girl)といった面々とともにサウス・ロンドンのシーンを牽引する怒れる若者たち、シェイム(Shame)が<FUJI ROCK FESTIVAL'19にて2度目の来日を果たした。
2018年にUSの名門〈デッド・オーシャンズ〉よりリリースした1stアルバム『Songs of Praise』(賛美歌)は、荒々しくもエモーショナルなポスト・パンク・サウンドと政治的なアプローチでも話題となり、若干20歳前後という若さにも関わらず、世界を股にかけるツアーバンドの域まで駆け上がった。
今日のライブパフォーマンスは言うなれば「暴動」。
FUJI ROCK FESTIVALのステージでも臆することなく、上裸姿で叫び、飛び跳ね、暴れ回る。
そんな圧倒的なステージを前に、白昼のRED MARQUEEに駆けつけたオーディエンスと共に熱狂の渦を作り上げていた。
Stella Donnelly
Stella Donnellyが3日目のRED MARQUEEに登場した。
口いっぱいにヌードルを頬張った、デビューEP『Thrush Metal』のジャケ写が日本でも大きな話題となり、一連のミュージック・ビデオで見せる、キュートかつコミカルな演技に男女問わず多くのオーディエンスを虜にしてきた彼女。
それもあってか、会場には多くのオーディエンスが駆けつけていた。
『Beware of The Dogs』から、セカンド・レイプについての楽曲”Boys Will Be Boys”や、不逞の男性を告発する”Old Man”、自身の中絶経験について綴った”Watching Telly”などを披露。
それを、レコーディングにも参加したサポート・メンバーとともに、コミカルな踊りなどを交えて楽しげに歌った。
THOM YORKE TOMORROW’S MODERN BOXES
初日のWHITE STAGEのトリはTHOM YORKE TOMORROW’S MODERN BOXES。
ライダースジャケットを着たTHOM YORKEはシンセを操り、ベースを弾き、マイクを持って歌う。
そして、にこやかに会場を見渡して「コンバンワァ!」と挨拶する。今夜の彼はとても穏やかだ。
「Impossible Knots」「Not the News」「Traffic」といった最新作『ANIMA』からの楽曲を軸に「Black Swan」「The Clock」「AMOK」などソロキャリアの中で生み出してきた作品を織りまぜるセットリストで、機械的なサウンドと人力のグルーヴが混ざり合い、オーディエンスの熱狂とともに循環していく。
ラストはTHOM YORKEが音楽を担当した映画『サスペリア』からの「Suspirium」。美しいピアノの旋律で余韻を残しながら幕を閉じた。