1つのライフワークとしてずっとやっていきたい
- (笑)。実際に聴くと、楽曲のバリエーションが豊富です。そこで敢えて伺いますが、この『FRIENDSHIP』はアコースティック形式とバンド形式のものに分けられるとも思ったのですが、これはそういうコンセプトで最初から構想さていたんですか?
その通りで、実は第1期と第2期で分かれた制作だったんです。その第1期に当たる時代は、バンド形式ではなくアコースティックのミニ・アルバムにしたいと思ってて。斉藤和義くんとか難ちゃん(難波章浩)、津田(津田紀昭)くん、Mike Parkには”アコースティックで”っていうオーダーをして、アルバムの最後に収録した『HOME』の5曲をその時代に作ったんです。やっぱり、踊れることや盛り上がってダイブとか、お客さんを煽ってすごい汗だくの激しいライヴも良いんだけど、それは既にKEMURIでやっている。そんな経験をしているからこそ、例えば5~6人の前で歌を歌うような景色の中に、いつか自分がいれたらいいなと思ったことがあって、もう少し歌をしっかり歌いたいっていうのがあったんです。
- そう伺うと、アコースティック形式の必然性や、ソロとしての在り方にも納得出来ますが、その後の2期目でもその流れを引き継ぐこともできたと思うのですが、敢えてバンド・サウンドを求めていったんですね。
それが不思議でね(笑)。ソロの制作期間をちょっと停止してた間に、クラッシュやボブ・マーリーとか、昔の音楽をすごく聴いてて。もちろん、KEMURIでバンドはやってるし管楽器が隙間なく入っている良さを知っているんだけど、少人数編成でスカやロックステディ、レゲエの括りで音が作れないかなって思い始めたんです。
- ある種、回帰的な部分もありそうですね。
そうなんですよ。自分の中では、結構ツートン回帰みたいなところが大きくて。スペシャルズやセレクター、マッドネス辺りは聴きまくったんですよね。今のPro Toolsとかのデジタル録音に関して全然否定はしないんだけど、もうちょっとラフなだけどエネルギーがるものに惹かれ担ですよね。
- それって、KEMURIの始まりもそれに近しいものだったんじゃないですか?
そうね。当時はそこまで考えてはできてなかったんだけど、そういう時代ですよね。例えば今回の録音って、Pro Toolsを使ってるんですけど、バンドの時はガイドのクリックを出してないんですよ。全部、1フロアをでパーテーションで区切って録音したから、音が被りまくりなんだけどライヴ録音なんです。
- それはチャレンジですね!あってもカウントくらいとか?
カウントもなしなの。だから『Rusty Nail』なんかは、「せーの、ドンドン!」って始まるんだけど、そのコンセプトで作ったんです。エンジニアもメンバーも「面白いからやってみましょう」って、快く言ってくれたからできたんだけどね。
- ある意味、ミュージシャンシップというか。ガチガチのクリックに合わせても良いけど、その場の雰囲気で拍子に対して多少の揺れみたいなものが、最高のグルーヴになっていく醍醐味みたいな?
そこなんですよね。その場にいた人しかわからない感覚なのかも知れないけど、その時に感じた”正しいと思えるもの”を求めていたいっていう。まだこのバンドでライヴをやってないからどうなるか分かんないんだけどさ、1つのライフワークとしてずっとやっていきたいと思ってる第1作目が、この『FRIENDSHIP』なんです。
- 当然、各個人のセンスも問われるし、その現場の緊張感もすごそうですね。
そうですね。いろんな意味でのフィーリングが合わさっていたし、レコーディングはすごい面白かったですよ。例えばダブのパートは、エンジニアが後からミックスしてるわけじゃなくて、ライヴを想定して足元でやってるとか。あとリズムだけを聴けば、テンポが一定じゃない部分もある。ただ、それが曲のグルーヴとして正しければ、よほど外れ過ぎていなければ正解だと思ってたし、聴いてても嫌な感じが全然しないからそのままやってみようみたいな。それを是として、もう1回音楽と向き合ってみようかなって。
- このグルーヴをもたらしたメンバーですが、レコーディングでは初めてとのことですが、ふみおさん自身は顔見知りだったんですか?
美代ちゃんは偶然の出会いなんですけどね。去年、KEMURIのツアーでsmorgasと宇都宮でライヴをやったんですけど、smorgasのサポートメンバーで美代ちゃんが来てたんですよ。
観たらめちゃめちゃドラムがカッコよくて、リズムも跳ねてて最高だったから、その後すぐに「今度、ソロの録音をするから、その時はよろしくお願いします」って。ベースのたっちゃんにはその前から声を掛けてたんだけど、すぐ連絡して「ドラムが見つかったよ」って。「曲は?」って言われて、「いや曲まだできてない」って(笑)。
- (笑)。でも曲在りきではなく、人・プレイ在りきっていう方がバンドマンですよね。
そうですね。美代ちゃんは、ナチュラルにスイングするんですよ。それをもっと意識してもらって、スクエアな8ビートにならないようにその感覚のままやってもらいたいって伝えたんです。あとはKEMURIでは絶対に出せない、ルックスのすばらしさね。
- (笑)。男性にはなかなか超えられない美しさ。
女性っていうね。で、せっかく美代ちゃんに決めたから、テレキャスターを弾く女性もいないかなって思ったわけ。美代ちゃんに相談したら、「一緒にやってるバンドのギターがテレキャスター弾くんですけど」って。それでBimBamBoomを観たら、愛ちゃんも16ビートをすごく理解できてるし、出してる音もすごく良かったし。それで愛ちゃんに決めて、今出そうとしてるテレキャスターの音がすごく好きだから、基本的にそれを追求してもらいたかったのと、シングルコイルのテレキャスターの音もやってもらおうとなりました。
- そうやって伺うと、バンド編成の曲がこの音になった理由がとても頷けます。
そうなの。クリックなし・カウントなしにしてもそうなんだけど、レッチリのチャドとかポリスのスチュワート・コープランドが使ってるキャノンタムっていうのを使いたくて、美代ちゃんに相談したら持ってたんですよ。美代ちゃんは「使ったことがないから、どうやって入れたらいいのか分かんないんだけど、面白そうだからやってみますか」ってセットに組み込んでくれて。どれだけの人に理解されるか分からないけど、1からやるからこそ、やりたいことを本当に思う存分にできたんですよね。