伊藤ふみお(KEMURI)インタビュー

ソロをやるには相当な理由付けが自分の中で必要だった

伊藤ふみお

- それがなぜKEMURIじゃなくてソロなのかっていう部分ですね。それは歌詞にも表れてることだと思いました。特に『Rusty Nail』では、所信表明的な受け取り方もできるなと思っていて。

色んなことがあっての今じゃない?だからその色んなことのどこを切り取るかっていうのは、すごく注意深く意識しました。自分の中で最初は”錆びた釘”のイメージだったんだけど、カクテルの”Rusty Nail”に繋がって。それから自分の中で掘り下げて、上っ面だけ取ると結構ポジティヴというよりは、暗いネガティヴなマイナー調の曲によくあった歌詞だと思うんだけど、”錆びた釘”って出てきた時の気持ちや”Rusty Nail”を飲んだときの気持ちを真剣に考えて。それに対してはポジティヴとかネガティヴとか元気が出るとか、優しいとか綺麗とか汚いとか、一切気にせず自分に対して説得力のある歌詞を書いた感じです。

- その中で例えば『Silly Love Song』では、より身近な人の存在の情景が浮かぶフレーズがあって、それはソロだからこそ見せれる景色なのでしょうか?

それは”伊藤ふみおしか見てない景色”を言葉にしていった感じですね。例えばKEMURIのときだと、津田紀昭の曲には津田紀昭と伊藤ふみおが共有した景色、Tの曲にはTと伊藤ふみおが共有した景色っていうテーマがあるんですよ。だけどソロは、基本的には伊藤ふみおだけっていう感じ。

- 1期のアコースティック編成は、その”景色を共有”するが含まれるんですか?斉藤和義さんとの『Beautiful Dreams』では、細野晴臣さんの『恋は桃色』に近い印象があったのですが。

嬉しいですね。最初は全部英語だったんだけど、飲みに行ったり話したりして日本語に書き換えたんです。そういう意味では、僕から見た”斉藤和義が見ていた景色”の歌詞になったと思ってます。最初はドラムも入ってなかったんだけど、日本語の歌詞で歌い直したときに、クリックを使わないでドラムを彼が入れて。

- ここでも!難波さんとの『LOVE』でもそういった経緯はありますか?

それこそ、KEMURIのツアーでNAMBA69に出てもらったときに、楽屋で「こんな感じなんだけど」って聴かせてくれて。その時も『I LOVE YOU』って歌詞が最初にあったから「じゃあこれは『I LOVE YOU』で難ちゃん作りましょう」って始まったんです。あとはK5が本当に素晴らしいギターを自分で色々と考えてアレンジしてくれて。

- まさに『FRIENDSHIP』のタイトルそのものを表しますね。このタイトル自体は最初から決めていらっしゃったんですか?

後からですね。制作中にだったから途中からって言った方がいいのかな。

- 敢えて伺うのですが、ふみおさんは『FRIENDSHIP』という言葉をどう解釈されているんですか?

“支えてくれるもの”っていうよりも、その存在がいるお陰で自分が頑張れるっていうか。そういう意味で”奮い立たせてくれるもの”だと思ってます。あいつもやってるから俺も頑張る、あいつに負けたくないから俺も頑張るみたいなね。いつも仲が良いとか悪いとかじゃなくて、自分のいる世界で何か共通なものを持ってる人や存在かな。

- とても逆説的ではあるのですが、ふみおさんのソロアルバムなんだけれど、そういう周りの人がいないと出来なかったアルバムな気がします。

本当にそうですよ。人によっては、自分の楽曲をドラムのリズムパターンからおかずまで、全部を作り込む人もいるわけじゃない?それに比べたら、みんなが良いプレイをやってくれて、それは自分が100%好きなことでもあって。不満なことなんて何にもないですから。ただ、それの始まりも自分を奮い立たせるような人に出会えたからね。楽曲を提供してくれたり、演奏で協力してくれたり。頑張んなくちゃと思うような人に会えたから出来たアルバムですね。やっぱり、ソロをやるには相当な理由付けが自分の中で必要だったんですよ。”なんで伊藤ふみおのソロをやるのか””なんでKEMURIじゃ駄目なのか”、その辺がすごい釈然としたから今日を迎えられてるし、これからはKEMURIとソロの両軸でやってきます。

- それに対しては、バランス云々じゃなくて”両方大事なんだよ”っていう、とてもフラットな気持ちでそれぞれに向き合えている表れな気がします。

本当にそうですね。『FRIENDSHIP』はスカと呼ばれるような曲が多いけど、KEMURIはスカパンクで。それはスカタライズのスカとは全然違うし、スカパラのスカとも違う。今回の4人のバンドメンバーだからこそ出せたグルーヴと、2019年の伊藤ふみおのスカだと思うんですよね。

- ある種、伊藤ふみおのファーストアルバムだと言っても良いのではないでしょうか。

本当にね。今までやってきた3枚はそれとして、これだなっていうのは出来ましたね。2019年の伊藤ふみおのスカ、レゲエ、初期のパンクかな。クラッシュやボブ・マーリーやポリスといった人たちへ、大きな括りの中での音楽へ、愛と尊敬をたくさん詰め込めた『FRIENDSHIP』になったと思います。


インタビュー:3月27日
text / Photo Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330

FRIENDSHIP

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CD+DVD 3,900円(+税)品番:CTCR-14959/B
CD 2,900円(+税)品番:CTCR-14960
1. Rusty Nail
2. Brave Heart for Glory
3. Long Train Running
4. POSITIVE (津田紀昭(KEMURI/THE REDEMPTION)作曲)
5. Pizza Margherita
6. Beautiful Dreams(斉藤和義 作曲)
7. Silly Love Song
8. YOU (Mike Park(Skankin’ Pickle/The Bruce Lee Band/The Chinkees)作曲)
9. Lonely Shadow
10.Shooting Star
11. LOVE (難波章浩(Hi-STANDARD/NAMBA69)作曲)
12.HOME(Instrumental)
DVD収録
・Brave Heart for Glory(MUSIC VIDEO)
・FRIENDSHIP recording documentary

Fumio Ito show 2019 vol.1
『FRIENDSHIP』

開催日:4月7日(日)
開場:18:30
開演:19:00
会場:新代田FEVER W/THE REDEMPTION,SKA PUNK ZOMBIES
ゲスト出演:コバヤシケン、田中’T’幸彦
チケット:adv 4000円(税込) Door 4500円(税込)
ぴあ146-947
ローチケ72874
e+https://eplus.jp/sf/detail/2897900001-P0030001

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