THE YELLOW MONKEY、キャリア最大規模となる東名阪4公演ドームツアー開催発表後、聖地・La.mamaでのプライベートギグにて、デビューシングル含む6曲を披露!

そんな語りに導かれながら始まったのは、これまた初期の名曲のひとつとして知られる 「LOVERS ON BACKSTREET」。こちらは1991年7月にリリースされたインディーズ作品、『BUNCHED BIRTH』からのセレクトだ。そして、やはり同作からの「SLEEPLESS IMAGINATION」がそれに続く。この時空を超えた空間は、まさにタイムマシーン。THE YELLOW MONKEYを愛する人たちの多くが原体験できずにいた時代のライブを、時間を逆戻りしながら味わっているような感覚だ。しかもこれは、単純な“過去の再現”とも違っている。THE YELLOW MONKEYがバンドとしてまだまだ未成熟だった時代の楽曲を目の前でプレイしているのは、まぎれもなく現在の、文字通り日本を代表するロックバンドのひとつとなった揺るぎない4人なのである。

THE YELLOW MONKEY

演奏は同じ選曲モードのままで続き、終盤にはやはり1stアルバム収録曲であり、同時に彼らにとってのデビューシングル(1992年5月21日リリース)にあたる「Romantist Taste」が登場。そしてわずか30分という短い饗宴の終幕を飾ったのは、インディーズ作からの「WELCOME TO MY DOGHOUSE」だった。この曲を歌う前に、吉井は「この地下の、クサい匂いが大好き」と言った。その言葉を聞いて改めて痛感させられたのは、ここまで巨大な怪物バンドとなった今現在も、犬小屋のように狭い空間で育まれた精神や美学といったものは4人のなかから少しも損なわれていないのだ、ということ。実際、菊地英昭がこの日、初めてこのバンドのメンバーとしてこのステージに立った30年前のあの夜と同じギターとキャビネットを持ち込んでいたという事実も象徴的だ。

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4人が全6曲の演奏を終え、その場から姿を消したのは、午後8時を9分ほど過ぎた頃のこと。250人というごく限られた来場者と、YouTubeでその様子を世界中から見守り続けた多くの人たちの目に、この夜の彼らはどのように映っただろうか? ちなみに結果的には、最大同時聴者数は約4万人、視聴回数は約12万を記録するに至っている。

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 実際のライブ中、涙を流しながら笑顔で歌詞を口ずさむファンの姿も目に飛び込んできたし、「こんな近くで観られるなんて信じられない!」といった感嘆の声も聞こえてきた。30周年を記念しての料金わずか30円のライブは、本当にまるで信じがたい夢のような出来事だった。しかし、これが2019年のTHE YELLOW MONKEYを取り巻く現実なのである。そんなひとときを経て、彼らはふたたびアリーナツアーの日常へと戻っていった。吉井は「またちょくちょくやりたいね、これは」などとも口にしていたが、その約束が果たされるのがいつのことになるのかは、まだ誰にもわからない。が、今回の聖地巡礼はファンに対するサプライズ・プレゼントになったばかりではなく、彼ら自身にとっても次の段階へと歩みを進めるうえで、間違いなくとても意義深いものとなったはずである。 

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(文 増田勇一)
(写真 横山マサト)

また、8月21日(水)発売の『ぴあMUISC COMPLEX Vol.14』では、THE YELLOW MONKEYが表紙を飾ることが決定。

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