Sting、昨夜の幕張公演はアンコールを含め全20曲をパフォーマンス

6曲目の「ブラン・ニュー・デイ」では、「スティーヴィー・ワンダーのパートを吹く大役を任せた」と、シェイン・セイガーを紹介。実際、そのクロマチック・ハーモニカでの演奏は見事なものであり、10ホールでのブルージィなプレイとあわせて、彼は現在のスティングのライヴ・パフォーマンスに大きく貢献していた。巨匠トゥーツ・シールマンスとも共演しているスティングに認められたハーモニカ奏者として、彼の今後にも注目していきたいと思った。

Sting

Photo: Yuki Kuroyanagi

じっくりと聞かせる「セヴン・デイズ」のあと、「ホェンエヴァー・アイ・セイ・ユア・ネーム」では、オリジナルではメアリー・J・ブライジが歌っていたパートをメリッサが歌い切り、「フィールズ・オブ・ゴールド」ではルーカスが繊細なギター・ソロを聞かせる。そして、シャギーとのセッションから生まれた「イフ・アイ・キャント・ファインド・ラヴ」では、ジーンを大きくフィーチュア。さらに、スティングとドミニクが書き上げた「シェイプ・オブ・マイ・ハート」ではふたたび息子のルーカスがあの印象的なイントロを美しく弾きこなす。若いメンバーにもさり気なくスポットを当てた曲がつづく、じつによく練り上げられた構成だった。

12曲目、ザ・ポリス後期「アラウンド・ユア・フィンガー」でのヴォーカルへのアプローチはオリジナルとは大きく印象を変えたもの。一瞬、違う曲かと思ったほどだが、スティングは『マイ・ソングス2』の構想を固めつつあるようで、ひょっとしたらこういう方向性もあるのかと期待を抱かせてくれる仕上がりだった。つづく「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」では、大きな身振りでオーディエンスをコーラス・パートに誘い、そして中盤、ボブ・マーリィの「ゲット・アップ、スタンド・アップ」を鮮やかに歌いこむ。

ポリス以前の作品ということになる「ソー・ロンリー」、アルジェリアの音楽から刺激を受けて書いたという「デザート・ローズ」とつづき、いよいよコンサートも終盤。ジョシュのスネアに導かれて聞こえてきたのは「見つめていたい」だった。

この80年代のロックを象徴する名曲についてスティングは「9thコードを多用した結果、歌詞に多義性を与えることができた」と語っている。実際、極端にいうと、熱烈なラヴ・ソングともストーカーの気持ちを歌った曲とも解釈できるのだが、幕張のステージでの印象は、もちろん前者。彼はすべてのオーディエンスに向けて優しくI’ll be watching you. と語りかけ、いったんコンサートを締めくくった。

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