圭(BAROQUE)インタビュー

圭(BAROQUE)インタビュー『SIN DIVISION』

最新アルバム『PUER ET PUELLA』(2019/7/30リリース)から約3カ月後に新作アルバムのリリースを告知したBAROQUE。2人になって3枚目となるこのアルバムは『SIN DIVISION』と題され、現時点での情報は、収録される楽曲タイトルのみである。
この僅かな期間で制作をおこなった過程、そしてアルバムで描かれた世界についてを圭(Gt)より話を聞くことができた。

—『PUER ET PUELLA』リリースから僅か3ヶ月というタイミングで、ニュー・アルバム『SIN DIVISION』のリリース告知という、衝撃のニュースが舞い込んできました。

まさかですよね(笑)。以前から、2人になったBAROQUEで3枚のアルバムを想像していることは明言していた通りで、2枚目となる『PUER ET PUELLA』をリリースするまでに4年2カ月も費やしているんです。もちろん、思い描いた作品にするための時間でしたし、納得した作品になったのも事実ですけど、先日のインタビューでも話した通り、やっぱり自分の中では悔しさもあって。もっと短期間で『PUER ET PUELLA』のクオリティを超える作品が、自分で作れるかというチャレンジをしたかったんです。

—しかも“4カ月で”と仰っていて、伺ったときは半分冗談に受け取っていました。

これまでは、どれだけ時間が掛かっても自分が納得したものを出すスタンスだったし、ある種それが当たり前になっていたんですね。ただ、去年の終わりくらいから残りの人生であと何作生み出せるかをふと考えたときに、このペースだと僅かだなという想いも芽生えてきていて。だったら、生きているうちに出せるだけ出したいし、短期間でも納得できる作品を生み出せる自分になりたいと思ったんです。7月中旬に『PUER ET PUELLA』のマスタリングが終わったんですけど、それからチャレンジした結果、その冗談を超える2カ月半くらいで全曲作りましたね。

—前作を超えた楽曲を生み出すだけではなく、その制作スパンが早いというのは『PUER ET PUELLA』の後だけに半信半疑だったのですが、そういった想いがあったんですね。

それを妄想で終わらせないように、タイミング的にはツアーも始まったりしてたんで、限られた時間で作らないといけないっていう現実は充分わかっていて(笑)。これを実現させるには人間業では無理があるので、悪魔と契約するじゃないですけど、その期間は完全に人間を辞めようと自分に誓うくらい、集中していましたね。

—(笑)。3枚のアルバムという想像では、あくまでコンセプトだったと思うので『PUER ET PUELLA』も然り、楽曲自体はゼロからの構築ですよね?

全てゼロからですね。『PUER ET PUELLA』の中には1年・2年掛けた楽曲もありましたけど、今回は長くて1カ月半くらいとかなんで。今振り返ると、今回は自分の中で音楽的な明確なヴィジョンがあったんだと思うんです。

—それは『PUER ET PUELLA』の制作時にはないものですか?

『PUER ET PUELLA』は探りながらでした。『PLANETARY SECRET』からの4年間で培ってきたものが『PUER ET PUELLA』を完成させたんですけど、『SIN DIVISION』を作る要素も同時に得ていたんでしょうね。ファンとの信頼関係も強固になってきてるので、躊躇なく自分を曝け出せる精神状態になれたことも大きいです。

—圭さん自身もそうですが、それはBAROQUE自体が楽曲と対峙するときに、とてもナチュラルな状態にあるということなのかなと。

良い意味で、自分の中から湧き上がってきたものに対して、素直に表現できていて、その生まれた曲にも自信がありますね。

ーそうして生まれた『SIN DIVISION』というタイトルだけ拾ってしまうと、ある種の物恐ろしさがありますね。

『PLANETARY SECRET』では哲学的な生命の誕生、『PUER ET PUELLA』では現実的な人の一生を表現して、『SIN DIVISION』は罪の境界線、みたいな意味があるんですけど、人の罪や変態的な欲望、地獄、悪魔とは?といった、現実の中でも人が普段は隠しているようなものがテーマですね。

—混同しないようにしたいのですが、『PUER ET PUELLA』と『SIN DIVISION』は同じ現実でも、対になるようなテーマではないと受け取って良いのでしょうか?

『PUER ET PUELLA』は天国ではないので、”天国と地獄”みたいな関係性ではないですね。『PLANETARY SECRET』が生命の誕生だとして、そこから分岐点があるとしたら、『PUER ET PUELLA』は苦難があっても道を踏み外さない健全な人生のストーリーだと思うんですけど、『SIN DIVISION』は道を踏み外してしまったストーリーというか。『PUER ET PUELLA』の主人公は何だかんだ愛に満たされた人生で、それと比べると『SIN DIVISION』の主人公は何て可哀想で哀れな人生なんだろうって感じたりもしたんですけど、どっちの人生に行くにも紙一重なのが現実とも思えて。

—STAR WARSでいう、ジェダイとシスの関係みたいな?

まさに、ジェダイが暗黒面に落ちるのに近いですね。3枚で1つの関係性があるものという大きなテーマに、『SIN DIVISION』のテーマが必要だったんです。よく自分で例えるんですけど、黒い本の『PLANETARY SECRET』、白い本の『PUER ET PUELLA』、赤い本の『SIN DIVISION』っていうイメージなんですね。最初、自分の人生観を色濃く出した白い本の『PUER ET PUELLA』と違って、赤い本の『SIN DIVISION』で描くテーマは、自分では本当の意味で理解できないだろうと思っていたんです。例えると、ホラー映画のようなフィクションを作るように臨む感覚なんだろうなと。でも、結局理解していないまま説得力があるものを作ることはできないので、普段は気付いていない自分の闇や悪魔的なものを探って見つめることが、『SIN DIVISION』を生み出すにあたって必要でしたね。

—それは3枚の関係性の拘りにも繋がっていくのだと思うのですが、普段は『SIN DIVISION』のテーマにあるものを表に出していない以上、隠しておいても良いものだったりもします。敢えてその部分を出すことが、圭さんが描く現実に必要だったと。

そうですね。自分が人間や世界を見たときに、この3巻で描いたものどれか一つでも欠けていると真実味があるように思えなかったからですね。躊躇なく表現できる勇気を持った今だからこそ、赤い本を作る準備が出来たんじゃないかなと。ただ、そういう心理を理解するための内容が悪魔のように恐ろしい物なだけに、自分の電池が切れるまでひたすら作り続けるんですけど、なるべく短期間で終わらせてしまいたいという気持ちもありました(笑)。

—地獄に没頭するわけですからね(笑)。でもそのくらい、2019年に描いた最後のピースである『SIN DIVISION』は重要な作品であり、『PLANETARY SECRET』と『PUER ET PUELLA』が、本当の意味での完結はしないということなのかなと。

やっと完結するなという感覚はあります。2人になって、それでも本気でBAROQUEを進化させていくのか?っていうときに3枚のアルバムを作るっていう構想と、同時にその使命感のようなものもあって。これまではその使命を全うしようという所までしか考えていなかったですけど、『SIN DIVISION』を作ったことでやっと次に進めるなという感覚もあります。この先、更に描きたい世界の構想もできていてもう作り始めているので、レコーディングが終わったらお祓いにでも行かないと(笑)。

圭(BAROQUE)インタビュー

—(笑)。先日も仰っていましたが、自分自身にあった色んなフィルターを払拭した後は、こんなにも溢れてくるんですね。

ただ、僕が極端なのかもしれないですけど(笑)。『SIN DIVISION』の楽曲には、これまでのBAROQUEからすると実験的な要素もあるんですけど、それに自分でブレーキを掛けなくなれているからですね。あとは、ここ数年ギターを自分の体の一部になるように向き合いながら演奏していたんですけど、同じように楽曲を作る上で、それがコンピューターであっても体の一部の楽器として演奏したくて。今まさにレコーディング中ですけど、ギターのレコーディングは作曲の段階からもしていて、自己完結している部分が大きいですね。1つ例を挙げると、『SIN DIVISION』はバンドサウンド以外にダンス・ミュージックや民族音楽にもインスパイアされてるんですけど、今回は半数くらいの曲がトラックは僕が全て演奏して怜が歌う、メンバー二人だけで完結しているんです。そういった曲をトラックメイカー的に自己完結できるようになったのも、このスピード感に繋がっていると思いますね。

—極端に言えば、ライヴと同じようにBAROQUEの2人とサポート・メンバーがいれば、レコーディングも成立させられるようになったんですね。

根本は僕が曲を作って怜が歌う、そこをよりピュアに突き詰めている感じですね。

—圭さんが同じ表現手段の1つとして、ギター・コンピューターと向き合っていることが大きく作用している。一方で、楽曲のパッケージされた音源と生々しいライヴとでは、相反する部分もあるのかなと思ったのですが?

それについては、別物でもあるし同じだとも思います。2人だからこそ挑戦できるサウンドだったり、更に進化させた要素を『SIN DIVISION』では表現しました。音源はある時点のゴールでそこからまたライブで形を変えていくものだと思いますが、極論突き詰めれば音楽を表現するという意味では、あまり変わらない感覚かなと最近ツアーをやっていて感じます。ライブでは即興で演奏する事が増えたんですけど、それは言ってみれば瞬間的に作曲してるって事ですし、レコーディングでも決め込んで演奏しなければいけないわけでもない。どちらも同じ感覚で創造したいという気持ちがあります。

—『SIN DIVISION』のテーマ性をBAROQUEらしく表現するには、それが必然的だったのかもしれないですね。

まさにそうで。所謂ダークな部分は、ロックの始まりの1つでもあるし、ヘヴィ・メタルなんかもそうですよね。ヴィジュアル系でも、それを体現して確立しているバンドはたくさんいて、BAROQUEとしてダークな部分を個性的に表現することは、やり甲斐のある挑戦だなと。もっと突っ込んで言えば、既存にあるフォーマットのサウンドを突き詰めても、既に確立されているので。だとしたら、そうではない別の観点で表現することを模索していく中で、今回のサウンドは必然的だったと思います。

—それを実験的と言うと、どうしても実験という言葉の印象に引っ張られがちですが、強く言っておきたいのは、あくまで斬新さがもたらした結果でもあるという。

以前だったら、出す勇気を必要とした楽曲達かもしれませんね。これまでのBAROQUEの歴史に於いても、なかなかの衝撃だと思います。だから、怜にも「今までのBAROQUEで見せたことない面を見せてるけど大丈夫かな?」って確認したら「このアルバムめっちゃいいから大丈夫!」って言ってたんで、まぁ、大丈夫なんじゃないかと(笑)。そのくらい、これまでのキャリアでも見せたことがない世界ですし、それを表現したかったですね。

—『SIN DIVISION』というタイトルからも、その斬新さはこれまでのBAROQUEからは安易に想像できないサウンドという解釈でも良いのでしょうか?

どうだろう、僕的にはBAROQUEで見せたことがない一面ではありますけど、自分のルーツもあったり開けてない引き出しだったり。ただある1曲の一節を除いてメジャーキーを廃して、全てマイナーキーや聴きなれない音階が支配しているんで、それだけでもだいぶ違って聴こえる気はしますけどね。まぁ、その曲のテーマが求めるままに作ったら自然とそうなっていきました。ただ、不思議とこれまで以上にキャッチーな部分もあるな、というのを僕と怜では驚いていました。

—『SIN DIVISION』はそういった部分が大きなポイントとなって、行動の部分というよりは心理の部分を表現しているんですね。

いろんな映画を観たり本を読んだりして、それこそ犯罪者が書いた本をいくつか読んだりもしたんですけど、罪を悔やむ人もいれば悔やまない人もいて。人の罪の意識や心理って、冒頭でも言った紙一重なんですよね。最近で言えば、災害が起こってパニックになったときの人の心理や行動も当てはまると思うんですけど、自分だけをとにかく守ろうとするのか、そこでまわりの人と協力していくのかとか。そういう部分にさえ、人の怖さや欲望が出やすいと思うんです。マジョリティから外れたマイノリティに、罪の意識なく攻撃するとかもそうですし、実は現実で目にしていることの心理ですね。

—まさに罪の分岐点。

そこから悪魔以上に残酷になれるのも人間。『SIN DIVISION』で大切にしたいと思ったのは、そこに至った心理描写の部分なんです。今回、理解していく中ですごく悩んだこととして、悲しかったり暗かったりする罪の世界を作品にすることが、果たしてどういった形で誰かの役に立つことができるのかっていう。自問自答を繰り返していたんですけど、そういう部分をコントロールするのは、人の理性や愛が作用していることに改めて気づいて。自分と重ねても、そういう音楽を聴くことで浄化していた自分もいたし、地獄に落ちてもおかしくないような憎しみも過去もあったし。愛を失ってしまった人間こそ、本当の醜い悪魔なのかなって。もしかしたら、人よりも本来の悪魔の方が純粋なんじゃないかとも思いました。

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