海の底バンド

平岡恵子とスーパーバンドの融合、海の底バンドの自主企画<The Circle>はまるで“前例のない音楽会”

シンガーソングライターの平岡恵子(a.k.a桃乃未琴)をフロントに据え、上田健司、名越由貴夫など総勢8名もの錚々たるミュージシャンを擁する音楽集団、海の底バンドが去る2019年11月29日、下北沢CLUB251にて自主企画<The Circle #2>を開催した。ゲストに佐藤タイジ(シアターブルック)・TIGER・稲泉りんを迎え、音楽の未開の地へと導いたディープで愉快な一夜をレポートする。

海の底バンド

バンドのテーマ・ソングであるインスト・ナンバー「Theme For Imaginary Bremen」で幕を開け、ヘヴィーな轟音がまるで結界を張るかの如く場内を充溢していく。暗闇の中をしばし彷徨い、やがて光が見えてきたかのように音の潮目が変わると、そこは竜宮城か、はたまた桃源郷かーどこか別世界に辿り着くや否や、アッパーなファンク・ナンバー「Bottom Of The Sea」のイントロへと続き、フロアの後方から聴衆の間をかき分けてボーカル・平岡恵子が水を得た魚のような躍動と扇動のダンスと共に現れた。

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「踊ろうよ!」のリフレインにオーディエンスの身体はプリミティブに呼応し、一気に狂騒の渦へと巻き込まれていく。続く「今日の人間」はボトムの効いたサウンドで狂気を孕んでシニカルに、「待ってたい魔法」はドリーミーな極上ポップでスウィートに、くるくると変容していくつもの顔を覗かせる。さらには平岡が手掛けたセンチメンタルなメロウ・チューンをベーシスト上田健司のリード・ボーカルで紡ぐ「おっかない黄昏」は、甘美なムードに追い打ちを掛けてそっと心の琴線に触れ、メランコリックな世界へと没入させる。
予測のつかない硬軟自在の展開にオーディエンスは歓喜と驚嘆で翻弄され、巧みなグルーヴに心地良く呑み込まれていく。

海の底バンド

ここでゲスト・コーナーへ突入。平岡が「ゲストを観るために自分がここにいるぐらいの気持ち」との前置きで、トップバッターに稲泉りんが登場。井上陽水が忌野清志郎との合作で生んだ名曲「帰れない二人」を披露、陽水バンドのコーラスを長年務める稲泉が、彼女自身の色で見事に染め上げる歌の世界と堂々たる貫禄の歌いっぷりに誰しもが心酔となる。次にミラーボール級のオーラを放ちながら煌びやかに現れたのはTIGER、平岡の熱いリクエストに応えロッド・スチュワートの「アイム・セクシー」を投下し圧巻のパフォーマンスでオーディエンスの耳目を釘付けに。

海の底バンド

続いて佐藤タイジが呼び込まれ、プリンスの「I Would Die 4U」のカバーで瞬時に場内の空気を自らの世界へかっさらう圧倒的存在感を見せつける。次曲は意表を突いて山下達郎の「SPARKLE」を披露、稲泉・TIGER・加藤哉子による百花繚乱のコーラス陣が彩りを添え、スタイリッシュにタイジ流のロック・エッセンスを加えたカバーはとびきり格別で、いずれも“海の底ファミリー“ならではのプレミアムなセッションにオーディエンスも眼福この上ない。さらに、MC時のゲストと平岡の心置きないやり取りは時に爆笑を誘うなど、演奏・歌唱の凄みとのギャップが甚だしくもこのイベントならではの醍醐味だ。

海の底バンド

さらにライブは中盤戦へ。フロア中央にスタンドマイクがセッティングされ、ステージと対面する立ち位置で平岡がアコースティックギターを手に「White Rhythm」の弾き語りをスタート。360度ぐるりと観客に囲まれる中、前後左右に聴き手へ目線を送りながら、即興歌詞を織り交ぜ軽やかなリズムに乗せてさらりと胸を打つメッセージを紡いでいく。

海の底バンド

引き続き同じセッティングでステージ上のミュージシャン勢と向き合うユニークなスタイルで、平岡の情緒的な持ち味にゴスペル調の円熟味が新境地に至らしめた「粛々と」、“桃乃未琴“節が炸裂する「コーヒー猿」を連投。曲中で「今年も楽しかったねー!」の全身全霊のシャウトは、バンドメンバーも観客も皆同じ海の底にいる同志、高揚感が最高潮に達した瞬間だ。

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