今回は「これだけは言える」
ー光と影ではないですけど、コントラスト具合がある意味鮮やかなので、歌詞の中にある”わずかに光った流れ星”のような情景で印象付けるポジティブさが散りばめられていると思います。
例えば「俺たちは宇宙一になるんだ!」みたいな、メチャクチャ明るいことを言っているわけではなくて(笑)、スタートがかなり下から来てるんで、ポジティブさが際立つのかも知れないです。
ー一方で「Youth」の歌詞もそうですけど、ストーリーに「これが答えだ!」みたいな押し付けがましいものはなく、かと言って曖昧とは違う、”僕らの今に嘘はないたろう”という1つの肯定があることで、日常のストーリーでの答えに導かれるんですよね。
まず、自分たちが普段言わない言葉とか体験しない風景とかだと、僕自身が感情移入できないのでそういう言葉は排除をしてるんです。僕の歌詞って「結局、どっちなの?」っていう、曖昧さを言われてた前作までがあったんですけど、今回は「これだけは言える」みたいな書き方になってますね。もちろん、今まで通りの色んな答えや方向性があるのは変わらないし、「絶対、こうだ!」って言い方する人は基本キライなんですけど(笑)、1つの意思表示が今作からは現れていると思います。
自分に合わないものは歌えない
ー同じ時間、夢、未来、言葉があったならという漠然さも、ある意味肯定できてしまう。
そうですね。変わらないで思ってることがずっとあるんだったら、それは嘘じゃないってことだし、それだけで自信を持っていいことなのかなと思いますね。全てが確信的でなくて、漠然としたものを追いかけていたとしても、それはちゃんとした目標だとも思うから、肯定していきたいですね。自分たちに置き換えると、アクシデントがあった俺たち3人でさえも、続けていくために肯定できる歌を作る必要があったから、そういう意味でも感じたことを歌えていると思います。
ー先ほど「弾き語りで作っていった」旨を伺いましたが「somewhere」もですか?
あ、全曲じゃなかった(笑)。これは美代くんが原曲を作ってきてくれて、最初は歌詞もあったんですけど新たに作り直しましたね。元々あった歌詞と、今回の歌詞は全然違うんですけど、やっぱり既にある曲を歌うだけのシンガーにはなれないので、歌い回し1つを取っても自分に合わないものは歌えないですね。
ー先ほども仰られてましたが、感情移入が出来ないものは歌に限らず、ギターであってもプレイが出来ないんでしょうね。
気持ち良さがないんですよね。絶対に”何だこれ?”って思うと表に出てしまうし(笑)。
ー(笑)。続く「Escape Summer」や「インスタントテレビマン」のようなノスタルジーな情景には、必ず1人ではない”君”が存在していますが、その”君”は巡って同一人物だったりとも読み取れるのですが?
なるほど…。結局、自分が共感できる言葉が歌詞になっているんですよね。例えば、僕はずっと子供でいたいので「Escape Summer」にそう書いてますし(笑)。ただ、それだけじゃなくて、同じ類の人間だからというのを信じているからなんですけど、誰かの言葉が自分の言葉になることもある。それは、自分も他人も最終的に辿り着きたい所は、”幸せになりたい”とか、一緒だと思うんですよ。
ーそこに辿り着くために、色んな術や経験があって。特に今回は、受け入れて肯定することで辿り着くことになるんでしょうね。
自分が今まで味わった気持ちが、曲を作る原動力になっているので。フィクションとノンフィクションが混ざり合って、最終的には美しいものにしていくんですけど、そんなに輝かしい日常を送っているわけではないので(笑)。
普段の話し方で自分の作品を話せるようになっている
ー素の自分の部分ですよね(笑)。
記憶って良い意味で曖昧だし、「こうだったね」っていうのを美しい歌にして残せば、すごくいい人生だったって思えるし(笑)、そういう歌を残していきたいですけどね。実は前のアルバムのときまでは、インタビューになった瞬間に”ズーン…”ってなることが多かったんですよ(笑)。
ー(笑)。落ちた精神状態ということですか?
普段、話しているときと、精神世界のことを話そうとするときのギャップがすごいあったんですよ。嘘みたいな話ですけど、先の話をしようとすると、急に暗い感じになったり、すごく言葉が出にくくなったりしてたんです。でも今作になって、普段の話し方で自分の作品を話せるようになっていることが起こっているんですよね。
ー見せ方を気にせず、精神的な脅迫概念の解放によって得た”自由”が、こういったインタビューの場でも作用するほどの作品であると言えますね。
確かに、もう追われることはないですし、等身大の自分で作れたんだと思います。