THE BOHEMIANS インタビュー

9月28日に7枚目のオリジナル・アルバムをリリースしたTHE BOHEMIANS。

自ら”最高傑作”と掲げるこのアルバムは如何にして生まれたのか?それを生んだTHE BOHEMIANSとは?平田ぱんだ(Vo.)とビートりょう(Gt.)からその全てを語ってもらった。

ー「kaiser strong majestic love」のオフィシャルコメントに、りょうさんから「ひとつの挫折からスタートした」というコメントから始まっているんですけども。

ビートりょう:カッコつけて(笑)。

平田ぱんだ:挫折、してないです(笑)。

ー(笑)。実際に音を聴くと挫折感が全くないというか。むしろ、突き抜けている感じがしますけど、制作過程ではあったわけですよね?

ビートりょう:そういう過程はあります。けど、毎回作るのはギリギリだったり、スムーズにいつも行ってる訳じゃないんです。結果的に「気づいたら出来てんじゃん」というような作り方をしてる。

ー曲作り自体も、制作期間と呼べるタイミングまではアイディアの断片を取っておくとか?

ビートりょう:例えば、ギターを持っていないときとかでも、フレーズがちょっとずつ生まれたりするじゃないですか。作曲は、それをまとめる作業というか。何て言うんだろう、日々そういうのを浮かんだら貯める作業をしてるかな。

ー歌詞に関しても同じですか?

ビートりょう:そうですね。でも、大抵歌詞は最後につけるんですけど、それが間に合わなくて”平田ぱんだに委ねる”みたいなパターンが多いです。逆に歌詞も同時にできるのも稀にあって、今回でいうと”GIRLS(ボーイズ)”は同時にパパッと出来た感じがありますね。

ーオフィシャルコメントにも書いてありましたね。同じく記載されていたんですが「ビートりょうがソロアルバムを作ったらきっとこうなる」というコンセプトについては?

ビートりょう:それは彼がそんなことを言い出したんですね(笑)。

平田ぱんだ:いやー、サボりたくて(笑)。前作がとっても良かったんで、僕はもう満足。でも、1年に1回アルバムを出さなくちゃいけないから、僕はもう家で寝ていたい、出したくない。

ビートりょう:出したくない(笑)

平田ぱんだ:「今こそ、全てをやるときがきたぞ」と。家で寝てるから全てを委ねた。

ビートりょう:寝てるだけで、ロックなアルバムが出来るっていうのをやってみたかった。

平田ぱんだ:最終的には歌いもしない、ただ椅子に座ってるメンバーになりたいです。

ー存在してるだけでロック(笑)。

平田ぱんだ:そうです。マイケル・ジャクソンが、突っ立てるだけで失神者が出るなんてすごいけど、僕はそれを超えた座ってるだけで失神者が出るってところまでいきたい。

ー序の口だと(笑)。

ビートりょう:一瞬だからな、ステージのなかのね(笑)。

ー(笑)。が、納得の行く曲が中々生まれない中、結果的にはりょうさんのみならず、平田さんの楽曲も加わることに?

平田ぱんだ:いや、それ嘘です。僕は助けるつもりはなかったです。ただ、アルバムが延期すると、ウチのボスが言うから「ヤバイ」つって(笑)。まあ、いつものパターンです。

ーそうやって作り上げたアルバムですけど、所謂ロックの華やかさや、煌びやかさみたいなものがガツンときました。

平田ぱんだ:ロックなんて、そんなもんだと思います。自然にやっていけばそうなるもので、そうじゃ無い人が間違ってるんだと思います。ロックにおける挫折とか悩みなんか、あって無いようなもんですよ。”たかがロックバンドじゃないか”と。僕はそう思いながらやってます。だから嘘です。そして自然にやってれば、こういう風になるはずです。悩んで下向いてやってるロックは、本来のこういうロックに対して、アンチでやってるからカッコ良かっただけであって。

ー一方で、普通にやれば出来るというお話をされたものの、なかなかそういったバンドがいないのも、事実だと思うんですね。

平田ぱんだ:そうですね。それは、誰でも出来るを追求しすぎて、”こういうのがカッコ悪い”みたいなのが出来上がっちゃったからだと思うんですよ。90年代に、着飾ったり煌びやかにする方がダサいみたいなのが確立されたじゃないですか。

ーええ。

平田ぱんだ:あっちの方がメインになっちゃったから。”何がオルタナだ”って思うんですよ。

ー変な言い方ですけど、70年代〜80年代にスタンダードとして確立された、ロックが持ってる煌びやかさというのが、90年代に失速したじゃないですか?

平田ぱんだ:うん、逆にオルタナになりましたね。それは僕たちもで、さわおさんにも言われたんですけど「お前ら、逆にオルタナだわ」って。

ー(笑)。しかも、ロックと呼ばれる音楽の中で、さらに細分化もしているのが現代で。「何を以って」というのがありますが、ラウド・ロックと呼ばれる音楽も盛り上がりを見せています。

ビートりょう:でも、ロックはラウドの方が良いですよ。

平田ぱんだ:うん。

ーそこは勿論そうですけど(笑)。

平田ぱんだ:音がデカくなきゃダメな訳じゃ無いですよね。多分、彼らのそのラウド・ロックは、音がデカくないといけないじゃないですか。僕たちは音が小さくても、煌びやかだと思いますね。

ーその煌びやかさの良さは、もう1度ロックに浸透していっても良いのかなと。

平田ぱんだ:浸透する必要ないと思いますよ。こっちはこっちで、好きなヤツ同士と話すくらいが良いと思ってるから、拡がるほどじゃないっすよ。

ーえ、なんで(笑)。

平田ぱんだ:教育に悪いんです(笑)。だってそんな拡がっちゃったら、親も一緒に楽しめる風潮になるじゃない。ロックは”何だこれ?“って、鼻をつままれてナンボなんですよ。僕、HIDE(X JAPAN)がテレビに出てるのをたまたま見てただけなのに、ウチの親にめちゃめちゃキレられましたもん。

ー(笑)。

ビートりょう:HIDEのソロの方?

平田ぱんだ:そう、ピンクの頃。SMAPを見たくてテレビつけたらHIDEが映ってさ、キレられたんだよね。

ビートりょう:厳しい(笑)。

平田ぱんだ:何て前時代な親だ(笑)。

ーTHE BOHEMIANS自体は、親御さんには毛嫌いされるような存在であるべきだと。とはいえ、「kaiser strong majestic love」をきっかけに、その良さに気づいて拡まる分には良いですよね?

平田ぱんだ:勝手に拡まっていく分には「どうぞ」ですけど、こっちから拡めようとするのは違うかなって思ってて。カッコ悪いじゃないですか。

ー具体的にですけど、例えばプロモーション活動もですか?

平田ぱんだ:好きな人は絶対いると思うから、プロモーションは絶対するんですよ。何だろ…そういうのを計画的に考えてみたいな選択肢は、僕たちはないと思います。

ーだったら、自分たちの楽曲だったり、パフォーマンスに専念すべきだと。

平田ぱんだ:昔から、ただロックが好きでやってるんで。これが好きな人だけ楽しめばいいと思ってます。そもそも、ロックなんか全然流行ってない音楽なんだから、拡まる訳ねえだろって思ってやってますよ。そういう意味では、今は気分いいですね。”俺だけが知っているこの感動!”みたいな(笑)。

ーそのカッコいい音楽をシェアしようというのは、また別だっていうこと?

平田ぱんだ:いや、シェアはしたいですけどね。でも、実際に今流行ったらオカシイっすね。嘘くさいっす。

ーお二人の話を伺っていると、自分たちが捉えるロックについて、何もブレがないですよね。自身のそのルーツというか、コアにあるものは何がきっかけだったんですか?

ビートりょう:難しい(笑)。好きなのはいっぱいあるけど、やっぱりビートルズかな。イギリス人で、何十年も前の人の音楽をカッコいいって思ったのがビートルズだから。それがないと、遡るというか外国モノを聴くきっかけにはならなかったというのもあるし。

ーなるほど。ビートルズだと200曲以上ある中で、それこそ”このアルバム!”というものはありますか?

ビートりょう:ベスト盤でどうなのかと思いますけど、赤盤が家にあって「なんだこれは!」って、最初から最後までいいなって思ったのが最初なんですよ。

平田ぱんだ:俺も赤盤だよ!でも赤盤じゃハマんなかったけど(笑)。母親が勝手に買ってきた。「くだらない音楽ばっかり聴いてないで、これを聴きなさい」って、誕生日プレゼントが赤盤だった。いらねえ(笑)。

ビートりょう:そういう聴き方だと、また違うかもしれないね。

平田ぱんだ:”何でも鑑定団”で「HELP」は知ってて、あと「PLEASE PLEASE ME」は”ポンキッキ”で知った。

ーやってましたね(笑)。

平田ぱんだ:何曲かは知ってたけど”昔の音楽でしかない”って感じで。そうか、赤盤だったんだ。俺と同じって中学時代でしょ?

ビートりょう:小学生。だから兄ちゃんの部屋で掛かってたのが「何だこれ?!」って感じで。

平田ぱんだ:赤盤始まりか…俺その後ね、青盤は買ったんだ。青盤の方が何となく現代的じゃない?

ビートりょう:まあね。

平田ぱんだ:青盤を聴いてちょっといいなってなって、ハマるのはそれからずっと後で。

ービートルズ繋がりはあっても、赤盤繋がりって珍しいですよね。直接的なきっかけは、まだ後になりますか?

平田ぱんだ:全然後ですね。当時はビジュアル系が全盛期っす。逆にあっちの方が、ロック感ありますもん。ミスチルやスピッツとかもそうだし、バンド自体が流行ってましたね。だから”バンド=カッコイイ”っていう思いがあるんです。

ビートりょう:ロックかどうか関係なく、バンドっていうか。楽器を持ってる集団が、とにかくカッコいいなっていう。

平田ぱんだ:バンドでデビューするもん、みたいな。

ビートりょう:Mステで、膝を組んで(笑)。

ー(笑)。

平田ぱんだ:みんな着飾って当たり前というか。

ーテレビや雑誌を通してだと思うんですけど、音楽の魅力の1つとして見た目の部分って重要じゃないですか。そういうところの要素もあったんですね。

ビートりょう:いま考えるとそうかもしれないね。

平田ぱんだ:そういう感じですね。そのあと、普通に流行りのハイスタとかHIP HOPを聴いてて、ロックンロールをちゃんと意識するようになったのはハイロウズ。ブルーハーツは、音楽の一つとして聴いてたんですけど、別にロックンロールって概念を、何か知らないでいたときだったんで。ハイロウズを聴いて、ヒロトさんのインタビューを読むようになってから、何か教えられていったというか。”そうか、今まで僕が好きだったのは、ロックンロールとそうじゃないものに分けれるんだ“って。俺の好きな音楽はロックンロールらしいぞって感じっすね。

ーヒロトさんの言葉や歌詞が、平田さんの気持ちを代弁してくれたというか。

平田ぱんだ:これでいいんだぞ!的なことを教えてくれるというか。それまで、もっと世の中は複雑だと思ってたんだよ。親も厳しいし。

ー複雑ですか?

平田ぱんだ:立派な人にならなきゃいけない、学校の勉強とかちゃんとしないといけないって思ってたの。そうしないと生きていけない、複雑な世の中なんだと思ってた。でも、そんなことなかったという。勉強とか、すごくやりたくないなって思ってたんです。「あ、やんなくていいんだ」と思った瞬間に、良い子になりました。

ー(笑)。

平田ぱんだ:それまで嫌なことをずっとやってるから、捻くれて凄い歪んだ子供だったんですよ。今もその名残があるんですけど(笑)、だいぶ良い子になりました。

ー(笑)。ロックを自分自身で理解し始めてから、良い子って言葉の表現をされましたけど、自分自身が楽しく生きれるツールがそこで見つかったという。

平田ぱんだ:適当でいいんだって思ったんです。ただ生きてるだけじゃないかって。

ーそれから自身で音楽を始めるまでは?

ビートりょう:俺は最初にスピッツが好きになって、洋楽はビートルズがきっかけで買って聴くようになって。で、エレキ・ギターを中学くらいで買ってやり始めました。もちろん、バンドもやりたかったんですけど、学校時代はあんまり共通の趣味の人もいないんで、ひたすら家で自分で弾いてるという状況でした。

平田ぱんだ:僕は全くやってないですね。僕からしたら、初めて音楽の趣味の合って楽器ができる人っすよ。ビックリ。趣味が合う人だけはいたけど、まさか自分が演るなんて思ってもいなかった。

ーハイロウズからの感銘を受けた中で「自分もやりたい」という思いが芽生えたわけではなかったんですね。

平田ぱんだ:”世の中はもっと複雑なんだ”と思っていたのと同じで”ロックはもっと凄いもんだ”とも思ってたんですね。でも大したことなかったんですね。僕程度でも、そこそこ人気でたりするんだと(笑)。

ー(笑)。

平田ぱんだ:出会ってから、ビートりょうがギターを弾けるし、借りて教えてもらおうと思ったんだけど、全然教えてくれなかった(笑)。

ビートりょう:(笑)。

平田ぱんだ:「どう教えたらいいのかわかんない」とか言って。じゃあ、君のギターを1本貸しなさいって言って、独学でやったせいで、未だに弾けないっす。

ー (笑)。それがTHE BOHEMIANSの結成に繋がっていくんですか?

平田ぱんだ:そう…ですけど、結局2人しかいなかったんで(笑)。実際は、出会ってから始めるまでに2年かかりましたね。

ビートりょう: 18〜19歳で平田くんに会って、バンド名を決めようってつけたのが今のバンド名なんですけど、そんなもんなんですよね。

平田ぱんだ:もっとカッコいいバンド名をつけておけば良かった(笑)。

ビートりょう:今から変える?

平田ぱんだ:変えるタイミングはあったんですよ。東京に来た2007年が、今のメンバーが揃ったタイミングなんですけど、「もうTHE BOHEMIANSじゃないっしょ、ガッツリ東京に勝負かけてみよう!」みたいな感じで、バンド名も考えてた時期があるんですけど、有耶無耶になったまま今に至る(笑)。

ー失礼な言い方かもしれないんですけど、それもTHE BOHEMIANSっぽいというか(笑)。

平田ぱんだ:っぽい(笑)。超思いますよ。

ー因みに平田さんが歌を唄うのは、2人だったタイミングで決まったんですか?

平田ぱんだ:楽器が弾けない人は、ボーカルをやるんですよ(笑)。

ビートりょう:最初、ベースをやるって言ってたんですよ。

平田ぱんだ:ボーカルなんて絶対やりたくないから、ベースやるって。頑張って覚えるからって言ってたけど、いつまで経っても買わないし(笑)。で、妥協してさわおさんとかジョン・レノンみたいに、僕はギター・ボーカルだ!って。でも、ギターの練習もしないし、最初は持ってたんですけど、段々邪魔になってきて(笑)。

ビートりょう:最初やってたね(笑)。

ー歌うのが嫌ではないんですよね?

平田ぱんだ:歌うのは好きなんですけど、一番前に立つのが嫌だっていう。今でもあるんですけど「いやいや、ロックバンドの一番前に立つのは俺じゃないでしょ」っていうのがあった。けど、もう慣れました。

ビートりょう:慣れ(笑)。

平田ぱんだ:10年経ったら仕方ねえなって。

ーそのコメントも凄く平田さんっぽいです(笑)。バンドを始めるまで2年くらいは2人だったということですけど、最初のライブは覚えてますか?

平田ぱんだ:仙台で2005年の話ですね。5人揃うのは2007年なので、その2年前です。

ビートりょう:平田くんもギター・ボーカルで。

平田ぱんだ:1曲目はルースターズで「DAN DAN」で、2曲目は 「She Loves You」でしたね。

ーよく覚えてますね。

平田ぱんだ:メッチャ覚えてる。3曲目が、その時のベースのヤツが演りたいっていったTHE CLASHの「(White Man) in Hammersmith Palais」。オリジナルを2曲と、最後に「Johnny B. Goode」を演って終わったという。友達がみんな来てくれて(笑)。

ビートりょう:そうそうそう(笑)。前列がみんな学校の同級生でさ。

平田ぱんだ:人気バンドみたいで(笑)。

ビートりょう:仙台までよく来てくれたよね。キーボードの本間くんも、客としてビデオカメラを撮ってくれてて。

ーへえ!

ビートりょう:友達総出で来てくれた感じです。

ーそこまで覚えていらっしゃるとは。そのときの感触も?

平田ぱんだ:いやー、流石に。ただ、後悔もなく演ったって感じだった。

ビートりょう:一瞬だったね。

平田ぱんだ:それより、ノルマを取られるということが分かって「高っ!」って。

ビートりょう:終わったら事務所の方に行ってねって。

平田ぱんだ:仕組みを知ったね。ライブハウスってアコギだなー(笑)。

ー(笑)。それから今年で11年、今もロックを続けられていると。

平田ぱんだ:まあ、俺らはロックくらいしか出来るものないですよ。「中学生にギターを持たせなかったらロックじゃない」ってヒロトさんも言ってました。THE BOHEMIANSがもっと音楽に目覚めて、全員メチャクチャ楽器が上手くなって、俺が急に喉を手術をして歌がメチャクチャ上手くなったら、ロックじゃないことやるかもしれないですけど、これからもロックでしょう。

ー逆に素の状態でいれることが、今のTHE BOHEMIANSであり、ロックなんでしょうね。

ビートりょう:だと思うんですけどね。さっきの話に戻るけど、中学くらいでロックに興味を持つようになって、CDを買って「カッコいい、自分でもやってみたい」ってだけなんで。11年とか言われると、11年も頑張ってきたみたいな感じなんですけど、そんなことはなくて。

平田ぱんだ:頑張ってないんだ(笑)。頑張ってないから困ってるんですよ。

ビートりょう:ダラダラとバンドをやってたら11年。

平田ぱんだ:だから◯年とか言われると、困るからやめて。

ビートりょう:(笑)。こんなでも続いてるから、ラッキーだと思うんですよね。

平田ぱんだ:でもメチャクチャ数えてはいるんですよ。

ビートりょう:そうだね(笑)。

平田ぱんだ:自分大好きだから。自分史みたいに「あれから○年!ああ!あれから○年も経ってしまったぞ!」みたいな。記念日ばっかり作ってる感じですよ。THE BOHEMIANS史みたいなのを常に考えてるし、来年はこうなっていくって考えてるんです。けど、周りから10年とか言われると「そ、そうですよね…」って、そんな立派なものではない(笑)。

ビートりょう:他所の10年とは違う(笑)。

平田ぱんだ:10年にもなってそれかと(笑)。もちろん、俺らの中では10年経ったというのは、ちょっとした感動なんでけど、それは俺らの中で感動すればいい話なので。

ーそれを周りに言われても、返って嘘くさいという(笑)。

平田ぱんだ:周りが感動するものは一切無いので。実際に10年やってますけど、周りから見れば”変わってねえわ”って感じですから。

ーそれでも生み出してきた楽曲も含め、変化はいっぱいあったと思うんですけど、変わらないでいられた10年というのは、THE BOHEMIANSを聴いて知ってる人だったらわかると思うんですよね。例えば、その変わらないでいられたきっかけでもある、ロックに駆られた衝動の部分はまだ消えてないはずですし。

平田ぱんだ:それは思い出の積み重ねで「昔はもっと、感動的だった気がする」というのが、どんどんデカくなってる気がする(笑)。

ビートりょう:(笑)。

平田ぱんだ:当時、感動してなかったかもしんないことも「凄かった。絶対、あのとき凄かった!」って。これは逃げらんないですよ、歳とともにデカくなっていくんで。

ー自分史にも書いてあるし。でも過去を美化するわけじゃないですけど、思い入れの美化はアリじゃないですか。

平田ぱんだ:”思い出があるから人は生きている”みたいな所ってあるんじゃないかって。もうダメだ(笑)。

ビートりょう:でも美化してもいいんじゃないんですかね。そういう感動とか想いは。当時というか、さっき言ったみたいにロックの話ができるヤツがいないっていう、クソ田舎の山形で育って。ネットもまだないときだから、ロックに関わることって、CDを聴くとかギターを弾くとかしかできないじゃないですか。今みたいに、スマホでYouTubeを観れるわけじゃないから。ロックに触れてない時間の方が長い分、例えば学校でロックのことを考えてる時間の方が長い。だから、そういう思い入れがあるんじゃないですか?

平田ぱんだ:昔の方が、妄想はデカかったよね。

ビートりょう:妄想がね(笑)。

ーそういう観点でみると、それこそ昔って、情報量が少ないから想像力が必要になる。だけど、今だとパッと触れられる分、わかった気になりやすいじゃないですか。

平田ぱんだ:バレちゃってる感じしますね。ロックなんて、そんなに凄くないし、そんなに大したもんじゃないって。

ビートりょう:逆に俺の世代で、中高でネットに触れられなかった分、未だにYouTubeで観たことない映像だらけだから、凄い嬉しいんですよ。ずっとそれで感動できるというか。最初からYouTubeが無かった環境で、実は良かったとは思うんですよ。

平田ぱんだ:そうね。

ーブートビデオとか高かったですもんね(笑)。

ビートりょう:買えばあるけど、高い。しかも山形って、タワレコもないような所ですからね。

平田ぱんだ:東京に来てから、HMVとタワレコしか行かなかったですもん。東京とは、その2店舗に行く所。たまにディスクユニオンも行くみたいな(笑)。

ーロックへの枯渇した状態が始まりで、今こうやって触れ続けていけることは、作品へも凄く良い作用をしてると思うんですよね。10年と続くこともそうですし、この「kaiser strong majestic love」も、そういった蓄積の中から生まれてるわけじゃないですか。色々とお話を伺いましたけれども”聴いたらわかる”っていう「kaiser strong majestic love」こそが、ロック鳴ってる証なのかなと。

平田ぱんだ:好きじゃなかったら”聴いてもわからない”って感じもありますね。好きじゃなかったら感動しないと思うんですけど、ロックが好きな人だったら、絶対に好きになってくれると思うんですけどね。そこが良いんだと思いますね。ロックが好きじゃないと、まずTHE BOHEMIANS観ても聴いてもわかんないって良さが。

ー確かに、それはありますね。ロックが好きなら、THE BOHEMIANSは好きでしょって言い切れる音楽ですし。

平田ぱんだ:THE BOHEMIANSが好きなじゃないヤツは、ロックが好きじゃないですよ。そもそもわかってないっす。「わかってないよ」って言ってやりたいっす。

ー好きなヤツは、ずっと好きでいてくれることでもあるのかなと。そのタイミングは今日かもしれないですし、それが5年後でも良いと思いますし。

ビートりょう:平田くんが何回も言ってるんですけど、清志郎を最初に観たとき、”テレビに出てる変な人”って印象でしかなかったんですよ。ロックを知る前って、俺らくらいの世代だと特にそうじゃないですか。いつか、こうやってわかるときが来るっていう。

ーそれが「kaiser strong majestic love」に詰まっている要素なのかなと。後は、それを生で感じることもロックの醍醐味だと思いますし、ツアーで感じて欲しいですよね。

ビートりょう:そうですね。今を生きてて、生で演ってるのは重要だと思いますね。

平田ぱんだ:観たか、観てないかって重要だと思います。子供に自慢できるし。「The JAMを生で観たことあるんだよ!」って。

ビートりょう:そういうことだよね(笑)。


取材:2016.09.23
インタビュー・テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330

リリース

7th Album「kaiser strong majestic love」

GIRLS (ボーイズ)
JUMPIN’ JOHNNY & THUNDER FLASH
Brighter guy, Brighter girl
あういえ
悲しみのグロリア
恋の1秒野郎
BEAT GOES ON
LOVE COLLECTOR
TOTAL LOVE
kaiser strong majestic love

【DVD】
恋の8cmシングル
so happy go lucky!
bohemian boy
“SUPER SUMMER FIRE ATOMIC BOHEMIANS SHOW 2016”
2016.08.07 at 下北沢 SHELTER

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