金子ノブアキ 満を持して2年ぶりとなるツアー“nobuaki kaneko showcase 2018 autumn”を開催

RIZE、AA=のドラマーとしてはもちろん、俳優としても数々の作品に出演し、確固たる地位を築き上げ、さらには楽曲プロデュースや映画音楽も手がけるなど、“表現者”という言葉がふさわしいマルチな活躍を見せる金子ノブアキ。そんな彼が持てるスキルと経験を注ぎ込んでいるのが、自ら作詞作曲を手がけ、ヴォーカルも務めるソロ活動だ。2017年はRIZEの結成20周年アニバーサリー・イヤーということもあり、音楽活動に関しては、バンド中心に動いていたが、10月〜11月に満を持して2年ぶりとなるツアー“nobuaki kaneko showcase 2018 autumn”を開催。大阪、愛知と巡り、最終公演が11月4日に東京・WWW Xにて行われた。

2009年にリリースした『オルカ』を皮切りに、これまでに3枚のソロ・アルバムを発表し、いずれも高い評価を得ている金子だが、作品に勝るとも劣らない反響を呼んでいるのが、そのアーティスティックなステージング。演奏はもちろん、映像や照明、音響に徹底してこだわり、独自の音世界をライヴ空間で構築。2年前のツアーでは国際的パフォーミング・アーツ・カンパニー、“enra”とコラボレーションを果たすなど、常にオーディエンスの想像を遥かに超えるパフォーマンスを繰り広げてきた。今回もツアー・メンバーに、PABLO(G/Pay money To my Pain)、草間敬(シンセ/マニピュレーター)という金子が絶大な信頼を寄せる盟友が参加。この日はPAにDub Master Xも加えた、まさに最強の布陣だ。ステージ右手にPABLOと草間が、左手に金子がそれぞれ陣取り、ドラム・キットは横向きにセッティング。これはソロ・ライヴではお馴染みの配置で、ピアニストが演奏するようにドラムに挑む、金子ならではのスタイル。
定刻過ぎ、 壮大なSEが流れる中、メンバーがステージに登場し、ソロとしての始まりの曲とも言える「オルカ」からライヴがスタート。プリミティヴなシェイカーのリズムに、幻想的なライティングと深海をイメージさせる映像、そして透明感のあるヴォーカル一体となった静謐な音世界から始まり、後半は一転、雷鳴のようなドラムが加わり、美しく激しいサウンド・スケープを切り開いていく。作品ではコーラスやプログラミング、ストリングスなどを駆使して練り上げた楽曲を、繊細に紡いでいく金子だが、ライヴではそれを崩していくかのようにアグレッシヴなサウンドを打ち鳴らす。その核となるドラムも、バンドではストイックにリズムを刻み、献身的にボトムを支えるスタイルだが、ソロでは真逆で、一心不乱にスティックをドラムに叩きつける。そんな金子と共に楽曲を奏でるPABLO、草間の演奏、サウンド・メイクも見事で、そこにDub Master Xがリアル・タイムでエフェクト処理を施し、グルーヴに拍車をかけていく。創造と破壊が目の前で行われていくようなパフォーマンスに、オーディエンスは盛り上がるというよりも、引き込まれているといった様子だ。

これまでに何度も金子のソロ・ライヴを観てきたが、今回は特にドラマーとして研ぎ澄まされていたように思う。ツアー最終日ということもあるが、10月20日にAA=の10周年アニバーサリー・ライヴ(ZAX、YOUTH-K!!!とのトリプル・ドラム編成!)、翌日の10月21日にはシシド・カフカが主宰する打楽器イベント=el tempo(エル・テンポ)と、スキルとタフネスが要求される現場に立ち、“心・技・体”の全てが充実。特にel tempoではアルゼンチンの鬼才=サンティアゴ・バスケスに鍛えられ、新たな感覚を掴んだのではないだろうか。上半身を豪快に揺らしながら放つダンサブルなビートの切れ味は鋭く、シンバル・ワークは剛柔自在。中でもボトムを担うキック(バス・ドラム)は強力で、キックの4つ打ちだけでその場をグルーヴさせてしまうほどの躍動感に満ち溢れていた。
MCを挟んで中盤では、enraの映像に合わせて「Stream Dance」、「Firebird」をプレイ。映像での共演ながら、スポット・ライトを活用し、同じ空間にいるかのように錯覚させる照明の妙、そしてフィジカルを駆使したダンス・パフォーマンスと、その映像を見ながらダイナミクスを絶妙にコントロールするバンドの絡みは生々しく、その場でセッションしているかのよう。そして中盤から終盤にかけては「Take me home」、「Call My Name」など、自身の音楽性を体現する代表的なナンバーを熱演。スケールの大きな楽曲を見事に描き切り、オーディエンスからも喝采を浴びていた。

見どころの多いライヴだったが、ハイライトはやはりサプライズ・ゲストとして登場したSKY-HIとの共演だろう。10月にデジタル・リリースされたEP「illusions」でコラボレーションが実現し、MVがApple Musicでチャート1位を記録するなど、話題を集めた2人だが、ライヴで共演するのは、この日が初めて。本編のラストに「友達がラップしに来てくれました」という金子の呼び込みでステージに現れ、会場のボルテージが一気に上がる中、「illusions」へと突入。マシンガンのように放たれる超高速ラップに、16分音符で刻まれるパーカッシヴなリズムが絡み合い、お互いを煽り合いながら加速していく様は実にスリリング。拙い表現で申し訳ないが、“すごいものを見てしまった”というのが正直な感想で、ラストのブレイクで、金子が立ち上がり、SKY-HIと向き合う姿は、映画のワン・シーンを見ているようで、痺れてしまった。
アンコールで再びSKY-HIを迎え、「Double Down」を披露。ヴォーカルを引き立てつつ、爆音ロック・サウンドを轟かせるなど、まさに百戦錬磨の貫禄ぶり。PABLOのギター・ソロも冴え渡り、最強のトリオをバックに従えた、SKY-HIの楽しそうな表情も印象的。ラストの「Historia」もコラボからの勢いそのまま、アグレッシヴに駆け抜け、2年ぶりのツアーも大団円。終演後、スクリーンにエンド・ロールが流れたのだが、誰一人席を立つ者はおらず、ステージの余韻に浸っているようだった。

ライヴ後に金子に感想を聞いたところ、「すごく充実したツアーだったと思います。照明も音響もその場でドンドン変えてきてくれて、スタッフも含めてやりたいことができたと思います」とその手応えを振り返り、SKY-HIとの共演については「ライヴは初めてだったんですけど、TVやPVの撮影で何十回も演奏してきて、すでに息の合った状態だったので、それをお客さんの前で披露できてうれしかったし、単純に楽しかったですね」と語ってくれた。

ソロ・アーティストとしての金子の挑戦は、残り2ヵ月を切った2018年だが止まることを知らず、12月11日に豊洲PITで行われるSKY-HIのツアー・ファイナルにゲスト出演する他、enraとの共演が、11月30日に中国の重慶、12月2日に上海、そして12月9日に仙台公演がそれぞれ決定している。唯一無二の表現を続ける、金子の今後を見逃せない。
(文:北野 賢)

1

2