STING(スティング)、東京初日公演ライヴレポート到着

いよいよコンサートも終盤。「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」、そして「ソー・ロンリー」と、ポリス時代の、どちらも強くレゲエのリズムとイメージを打ち出した曲がほぼメドレーの形で演奏されたのだが、スティングのベースに導かれて曲が移り変わった瞬間、その鮮やかさに、思わず息を飲んだほどだった。

そしてそのメドレーの後半ということになる「ソー・ロンリー」では、ボブ・マーリィーの名曲「ノー・ウーマン、ノー・クライ」が歌いこまれていく。ただし、誰もが知るそのタイトルの部分ではなく、“Good friends we have, Good friends we’ve lost, Along the way / 良き友を持ち、良き友を失い、道を歩む”というラインを強調する形で。いかにもスティングらしい、メッセージの伝え方といえないだろうか。

つづいて「デザート・ローズ」で満員のオーディエンスを北アフリカの砂漠地帯へと誘ったスティングは、「キング・オブ・ペイン」「見つめていたい」と、やはりポリス時代の名曲をほぼメドレーの形で聞かせ、いったんコンサートを締めくくっている(この2曲には、ジョー・サムナーもヴォーカルで参加していた)。

アンコールは、まず、オーディエンスと一体となっての「ロクサーヌ」。そして、ガット弦のアコースティック・ギターを手にしたスティングが「今夜はこれで終わり」と語りかけてから、「フラジャイル」。この曲での、聴く者の心を強く引き込むギターの美しさには、毎回、新鮮な感動を覚えるのだが、今回はまた新たなと輝きと味わいが加わっていたようだ。

アルバムのタイトルでありツアーのタイトルでもある『マイ・ソングス』の中心テーマはReimagine=再考し、見つめ直すということ。それは自らの作品群の普遍性を強く自覚しているスティングだからこそできる創作行為だと思うのだが、彼はツアーを通じても、日々、その意欲的な取り組みを続けているのだろう。

とはいえ、今回はまずなによりも、長い空白の時期をへて再会できたことをファンとともに喜び、楽しむことに、ポイントが置かれていたようだ。そのうえで、「ホワット・クッド・ハヴ・ビーン」や『ブリッジ』からの3曲などによって今後の方向性や可能性もきちんと示した、スティングらしさ満載の2時間だった。ジョー・サムナーが冒頭で話していた愉快な日本語を借りるなら、まさに「マンプク」。幅広い年齢層のオーディエンスの皆さんもきっと、同じような想いで家路につかれたのではないだろうか。

文:大友 博
写真:Kazumichi Kokei

セットリスト:スティング@有明アリーナ | 2023/3/11

1. Message in a Bottle
2. Englishman in New York
3. Every Little Thing She Does Is Magic
4. If It’s Love
5. Loving You
6. Rushing Water
7. If I Ever Lose My Faith in You
8. Fields of Gold
9. Brand New Day
10. Shape of My Heart
11. Heavy Cloud No Rain
12. Seven Days
13. Mad About You
14. What Could Have Been
15. Wrapped Around Your Finger
16. Walking on the Moon
17. So Lonely
18. Desert Rose
19. King of Pain
20. Every Breath You Take

21. Roxanne
22. Fragile

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