ポール・ウェラー、6年ぶりの来日公演が大阪よりスタート! 進化し続けるレジェンドによる最高の今

ポール・ウェラーが、2018年以来となる6年ぶりのジャパンツアーを1月26日、大阪・なんばHatchよりスタートさせた。

ザ・ジャム、ザ・スタイル・カウンシルを経てソロとして1991年に初来日以来、コンスタントにジャパンツアーを行い、キャリアを重ねた近年もリバイバルやノスタルジーな来日公演ではなく、新作を携えたツアーを実施。前作『オン・サンセット』(2020年)で、1980年代〜2020年代にわたる5つの年代でアルバムが全英1位を獲得するという記録を、ポール・マッカートニー、ジョン・レノン、デヴィッド・ギルモアに続いて打ち立て、2021年リリースの最新アルバム『ファット・ポップ』でもソロ6枚目、キャリア通算8枚目の全英1位を獲得している。そう、御年65歳でいまだ現役、UKロックシーンの生きる伝説として第一線で活躍し続けているのがポール・ウェラーなのだ。

しかし、世界的なコロナ禍によって海外ツアー延期などの影響が出ていたため、今回の来日公演はウェラーにとっても日本のファンにとっても待望の実現。そんな期待に満ちた初日の大阪・なんばHatchには、この日を待ちわびた多くの人々が足を運び、フロアは開場時から静かな熱を帯びる。そして開演時間ジャストに、ギタリストのスティーヴ・クラドックをはじめ、ベース、キーボード、サックスにツインドラムという6名のサポートメンバーと共にウェラーが登場すると、大きな歓声が巻き起こる。冒頭から華やかなホーンの躍動感に心躍る幕開けで、ウェラーがテレキャスターをかき鳴らしワウを踏む姿は、もうそれだけで絵になるたたずまいだ。美しく整えられたシルバーのヘアー、シャープなシルエットは相変わらずクールで、そんな彼を音のみならず豊潤なコーラスでも支える、気心知れたバンド陣の演奏も頼もしい限りだ。

3年越しの初お披露目となる最新作『ファット・ポップ』からの楽曲「Cosmic Fringes」では、エレクトロなビートを軽やかに取り込んだ現在地で魅せ、「ドーモアリガトウ!」と日本語であいさつした後は、ザ・スタイル・カウンシル時代の「My Ever Changing Moods」、「A Man of Great Promise」を立て続けに届け、オーディエンスは一気に歓喜の渦に。ムーディーなライティングを背に、まるで衰えを知らないかのように響きわたるボーカル。ウェラーの充実のパフォーマンスには自ずとクラップも沸き立つなど、まだ序盤ながらこの時点で「本当に見に来てよかった!」と心底思った方も多かったことだろう。

時にエレキギター、アコースティックギター、時にピアノを奏でながら、『ワイルド・ウッド』(1993年)や『スタンリー・ロード』(1995年)収録の初期曲も多数披露したかと思えば、再び最新アルバムからフルートの音色が映えるメロウな「Glad Times」やベースラインが印象的なタイトル曲「Fat Pop」と、栄光にすがることなくアップデートされ続けるモダンな新曲、さらには、パンデミックでツアーが開催できなかった『オン・サンセット』の収録曲等を、惜しみなく歌い上げていく。これぞミュージシャンの理想のエイジングだと思わせる、モッド・ファーザーの熟成する歌声と色気がたまらない。

イントロからどよめきと喜びの声で沸いたのは、スタカンの名曲「Shout To The Top」! 長尺のサックスソロでも大いに盛り上がり、その熱狂のままいよいよライブは後半戦へと突入。久々の日本で一曲でも多く歌おうと言わんばかりの怒濤の展開で、ギターの掛け合いからドラム、ベース、キーボード、サックスと目まぐるしく見せ場が変わったソロ回しでも、途切れぬグルーヴで会場の熱量をぐんぐん上げていく。高揚感の中、クライマックスに容赦なく投下されたザ・ジャム時代の「Start!」を含め、20曲歌い切った後でも伸びやかなウェラーのシャウトにシンクロした満場の拳が、鮮やかにラストシーンを彩った。

だが、6年ぶりにウェラーがもたらした最高の一夜に、もちろん拍手は鳴りやまない。足早に舞台へと戻ったアンコールでも、ソロ、スタカン、ジャムと、自身の道のりを横断する新旧織り交ぜたセットリストで楽しませ、まさかのダブルアンコールでは、星空のような照明が照らした、とびきりロマンチックな大団円へ…….。全28曲にわたり終始、哀愁漂うダンディズムにシビれ、グッドヴァイブな雰囲気に包まれた、約2時間の夢のひととき。今後のジャパンツアーにも期待が高まる、大満足のステージとなった。

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