エルヴィス・コステロ、8年振りの来日公演初日レポートと写真が到着

ここらから中盤(もう後半か)の私的ハイライトで、これまた珍しい『ノース』(03年)の「スティル」がじっくりと歌いこまれ、次の最初期のナンバー「ウォッチング・ザ・ディティクティヴス」へと続く。会場全体がかなり暗いブルーのトーンが包み込み、ドラマチックな空間を鍵盤ハーモニカとエレキ・ギター、リズムマシン、事前に入れておいた音とエフェクト処理なのかわからないがダブル・ヴォーカルにも聞こえる歌、それと対話するかの自由度の高いギターが響き渡る。もう本当に何千回も歌い、プレイしてきている曲だろうにこうして大胆にアレンジし、曲を活き活きとしたものする彼のアーティスト魂には、本当に熱くさせられた。

その興奮がさめる間もなくバート・バカラックとの共作盤『ペインテッド・フロム・メモリー』(98年)からの難曲「アイ・スティル・ハヴ・ザット・アザー・ガール」が歌われる。正~直なこと言えば「ゴッド・ギヴ・ミー・ストレングス」が聴きたかったが、ナイーヴの素晴らしいピアノもたっぷりと味わえるこれでも大満足。そんな会場へのプレゼントのように続いて「She」がプレイされる。

日本ではコステロといえばコレというほど人気の高い曲は映画『ノッティングヒルの恋人』の主題歌として使われたシャルル・アズナヴールの名曲。ここでは、ロンドンの名門 Royal College of Music(王立音楽大学)に通った才人ナイーヴのみごとなピアノをバックに、50年代風のヴォーカル・マイクで往年のポピュラー・シンガーのように歌い上げ感動が会場を包み込む。大拍手に送られステージ袖に引っ込むが、一瞬で再登場。アンコールに応えたということか(笑)。

平和への祈りを込め『コジャック・ヴァラエティ』(95年)で取り上げていたモーズ・アリスンの「エヴリバディーズ・クライング・マーシー」を渋くきめ、次が観客全員が大好きなニック・ロウ・ナンバー「ピース、ラヴ・アンド・アンダスタンディング」が始まり、この日の充実したステージを観客が称えるように手拍子が広がっていくが、それに応えてなんとセカンド・ヴァースはナイーヴがヴォーカルを取って喜ばせてくれる。これ以上はないピースフルな空気のなか最後の必殺「アリソン」が歌われ、全ファンが本当に来てよかったと幸福感に酔いしれた。

こんなアーティストと同時代を歩む満足感は本当に特別なものだ。すぐにでもジ・インポスターズとの来日を実現してほしい。

文:大鷹俊一
写真: Yuki Kuroyanagi

また、この公演にあわせて来日記念盤『The Boy Named If (Alive at Memphis Magnetic)』が4月3日に発売となり、また会場CD即売抽選特典としてエルヴィス・コステロ直筆サイン入りアナログ・7インチ・シングルのテストプレス盤が当たるキャンペーンを実施中。さらにこの公演の予習ができるプレイリストが公開となっている。
https://umj.lnk.to/TheSetlist_ecsn/?dm_i=77HO,AMW1,6J961S,1JP8M,1

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