エルヴィス・コステロ、8年振りの来日公演初日レポートと写真が到着

定刻を3分ほど過ぎたところでエルヴィス・コステロ、スティーヴ・ナイーヴが登場、“久しぶりだね、特別なショーにするよ”と挨拶したコステロがさっそく1曲目の「ホエン・アイ・ワズ・クルーエル No. 2」をプレイし始め、すみだトリフォニー・ホールを埋め尽くした観客の心を解きほぐしていく。

ヘヴィに響き渡るリズムマシン、エレキ・ギターを手にしたコステロがステージやや右手側、左手にはグランド・ピアノとエレクトリック・キーボード、曲により鍵盤ハーモニカを操るスティーヴ・ナイーヴが位置して座る。02年のアルバム『ホエン・アイ・ワズ・クルーエル』のタイトル・トラックだが、オリジナル以上にヘヴィなサウンドにアレンジされ、ズシンと迫ってくるし、ナイーヴは早速鍵盤ハーモニカを手に客席に降りてくる。

もう45年ほどありとあらゆるステージやレコーディングを共にしてきた二人だけに、何があっても、すべて対処できる自信がステージ上から溢れ出すし、伝説の78年初来日に始まり20回以上、来日しているコステロだけに日本にいかに熱心なファンがいるかもよくわかっているので余裕綽々だ。

続いて『トラスト』(81年)からの「ウォッチ・ユア・ステップ」、『キング・オブ・アメリカ』(86年)からの「ジャック・オブ・オール・パレーズ」といった比較的地味な曲や未発表の「Like Licorice on Your Tongue」が続き反応もおとなしめだったが、初期の大ヒット・アルバム『アームド・フォーセス』(79年)からのおなじみ「アクシデンツ・ウィル・ハプン」で大きな拍手がわく。もともとは畳み込んでいくようなテンポの良い曲ながら、ここでは大胆なアレンジが施され、しかもピアノだけをバックに歌いこまれる。と書くといかにも重そうだが、そうじゃなく曲に新しい滋味を加えていくといった趣で、それがスリリングに響いてくるのだ。さすがコステロ!

そしてここからが前半のハイライトで『トラスト』からの「クラブランド」がプレイされ、それがスペシャルズのNo.1ヒット「ゴースト・タウン」へとつながる流れにびっくり。登場してきたスペシャルズを気に入りファースト・アルバムをプロデュース、2トーン・ブームを盛り上げたあの時代を振り返るようにキーボードがリーダー、ジェリー・ダマーズのフレーズを奏でる。と感傷に浸ってるとそれが、日本ではアニマルズで知られる「悲しき願い(Don’t Let Me Be Misunderstood)」へつながる。『キング・オブ・アメリカ』に入っているが、あまりステージにかけられることがないので日本での人気を知ってのピックアップだろう。ここらが嬉しい。

そしてMCで日本といえばと、アラン・トゥーサンと来たときの思い出を語り、彼と作った名盤『ザ・リヴァース・イン・リヴァース』(06年)からの「アセンション・デイ」をアコースティック・ギター一本で披露(これもあまり取り上げられることのないレア曲)、同じくギターだけで人気の「ビヨンド・ビリーフ」をプレイし、さらに『ヘイ・クロックフェイス』(20年)からのタイトル曲や『ブルータル・ユース』(94年)からの「スティル・トゥー・スーン・トゥ・ノウ」などの珍しい曲が並び熱心なファンを喜ばせる。

驚かされたのは次の「レッド・シューズ」。初期コステロの代表曲の一つだが、最近ではあまり取り上げていなかったこの曲を大幅にアレンジしテンポも変えて歌い込み、さんざん聞き慣れた曲がとても新鮮に響いてくる。やや重くなった空気を切り裂くようにデジタル・ビートとラップが絡む「ヘティ・オハラ・コンフィデンシャル」(『ヘイ・クロックフェイス』)で、あっけに取られていると、次曲はもっとびっくり。なんと「オールモスト・ブルー」だ。昨年以前は20年近くやられていない曲で、名作『インペリアル・ベッドルーム』(82年)からの曲だが、その前作アルバム『オールモスト・ブルー』(81年)が、ナッシュヴィルでカントリー・ナンバーをカヴァーし当時かなり批判されたのを思い出す。

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