HEATHの遺志を継ぐ。PATA、SUGIZOら出演!<heath solo works heath THE LIVE everliving everloving>オフィシャルライブレポート

1992年5月にX JAPANに加入し、華やかなロック・オーラと堅実なプレイを併せ持った稀有なベーシストとして高い評価を得たHEATH。さらに、1995年から始動したソロワークでは作詞/作曲、アレンジを自ら手掛け、さらにボーカルも披露するなど、音楽家としてのポテンシャルの高さを遺憾なく発揮してみせた。充実した活動で多くのリスナーを魅了してきただけに、’23年10月に伝えられたHEATHの訃報はミュージック・シーンに大きな衝撃をもたらした。彼は自身が闘病していることを公にしていなかった(X JAPANのメンバーにも知らせていなかった)ため、その一報はまさに青天の霹靂といえるものだったからだ。HEATHの早過ぎる旅立ちに無数のリスナーが深い悲しみに包まれ、彼を悼む声は国内はもとより世界各国から数多く寄せられた。
HEATHの逝去から約1年を経て、今年10月27日に<heath solo works heath THE LIVE everliving everloving>と銘打たれたライブが高田馬場CLUB PHASEで開催された。同公演はHEATHのペンによる楽曲を彼と親交が深く、そして彼が敬愛するミュージシャン達が演奏するというもので、PATA(g/X JAPAN,Ra:IN)、SUGIZO(g/LUNA SEA,X JAPAN,THE LAST ROCKSTARS等)、MORRIE(vo/DEAD END,Creature Creature)を始めとしてKen Ayugai(vo/TOBYAS)やTAIJI FUJIMOTO(g/ex.D.T.R)、Jun(b/Valentine D.C.)、kazuno(b/ex.Moi dix Mois)、tezya(vo/tezya&the sightz)、JO:YA(vo/ex.DopeHEADz)、Shame(vo/DopeHEADz,Ravecraft)、TAIZO(g)、Taji(ds/ex.AUTO-MOD)、TACOS NAOMI(key)といった錚々たるメンバーが集結。チケットは瞬く間にソールドアウトとなり、ライブ当日の高田馬場CLUB PHASEは開演前から熱気に包まれていた。
 場内にオープニングSEとして「departure to space」が流れ、客席から熱い歓声と拍手が湧き起こる中、先陣を切ってステージに立ったのはtezya、TAIZO、kazuno 、Taji、TACOS NAOMIという面々。TAIZOが奏でるソリッドなリフとファットにウネるkazunoのベースの組み合わせが心地いい「blueberry murder」を皮切りに、キャッチーな「失われたtreasure∞land」や力強さと翳りを併せ持った「Nervous Break Down」などが演奏された。tezyaの熱いボーカルと楽器陣が鳴り響かせるパワフルなサウンドに場内のテンションは一気に高まり、ライブは上々の滑り出しとなった。
 続いて、Ken AyugaiとTAIJI FUJIMOTO、Junにメンバー・チェンジした編成で、メロディアスなサビを配した「GIVE」やパンクが香る「sold」、翳りを帯びた「COME TO DADDY」などをプレイ。華やかにパフォームしながら歌うKen Ayugaiと余裕の表情でテクニカルかつエモーショナルなギター・ワークを展開するTAIJI FUJIMOTO。クールな表情と重厚なベース・サウンドのマッチングが印象的なJunとスクエアなドラミングが光るTaji。そして、多彩なプレイと音色を用いたキーボードで楽曲を彩るTACOS NAOMI。今回のライブを通して思ったことだが、各セッションでそれぞれが魅力的なケミストリーを生み出していることが印象的だった。ハイレベルなプレイヤー達が気持ちをひとつにしてセッション・ライブとは思えない強固なバンド感を生み出したのは、さすがといえる。
 と同時に、HEATHのペンによる楽曲の上質さを、あらためて痛感せずにいられなかった。ソリッドなサウンドとキャッチーなメロディーの融合を軸としながら効果的なフックやオン/オフを効かせたアレンジなどで楽曲に起伏をつける手腕は、実に見事。今回のライブではHEATHのセンスの良さやアイディアの豊富さを、随所で感じることができた。
 ライブ中盤ではMORRIEがステージに姿を現して、どこかデヴィッド・ボウイに通じる味わいの「Faith」と耽美感を湛えた「Daydream」が届けられた。MORRIEの存在感の大きさに目を奪われたし、“軽やかな憂愁”とも形容できるセンシティブなエモーションを完璧に表現する歌唱はさすがの一言に尽きる。もうひとつ、MORRIEとHEATHは一緒にバンドを組む予定がありつつHEATHの罹患により実現できなかったという経緯を受けて、このセクションでJunはHEATHが生前に愛用していたベースとシールドを使用。HEATHとMORRIEが果たすことができなかった共演を、こういう形で実現させたJunには大きな拍手を贈りたい。

HEATHのベースに限らず、今回の公演ではHEATHがプライベート・スタジオで愛用していたボーカル・マイクが使われたことを始めとしてTAIZOがHEATHのギターを使用、PATAとShameはHEATHのネックレスを着用、SUGIZOはHEATHが<コーチェラ2018>で使用したブーツを、tezyaはHEATHのジャケットを着用。さらに、TAIJI FUJIMOTOとkazunoはHEATHのストラップを使用(kazunoはHEATHの衣裳も着用)、TajiはHEATHのエクステを使用、JunはHEATHのレザーパンツとベルトでドレスアップ、TACOS NAOMIはキーボードの上にHEATHの写真とHEATHが愛用していたチョーカーを置くなどして、HEATHへの想いを現していたことも注目といえる。そうすることで、出演者はHEATHと一緒に音を鳴らしている感覚を味わいながら演奏できたに違いない。
「4番手、JO:YAです! さぁ、いこうか!」という明るい声と共にステージに立ったJO:YAはクールな歌中と爽やかなサビのコントラストを活かした「UNDER THE SUN」やキャッチーな「Traitor」、抒情的な哀愁を湛えた「Alone」などを披露。それぞれの楽曲に合わせて表情を変えるボーカルは聴き応えがあったし、JO:YAセクションを締め括る「lynch」で上裸になってフィジカルなステージングを炸裂させたのも実によかった。現在のJO:YAは音楽活動は行っていないようだが、ブランクを感じさせないパフォーマンスでオーディエンスを大いに沸かせただけに、ぜひ活動を再開してほしいと思う。
 その後は、熱い声援を浴びながらシザーハンズを思わせるいで立ちのShameが姿を現して、「Crack yourself」が演奏された。グラムロックが香るShame のボーカルと楽器陣が奏でるファンキーなサウンドの取り合わせは独自の魅力に溢れている。「Faith」や「Crack yourself」を聴いて、HEATHはこういう指向性も持っていたんだなという感慨に捉われた。
そんなことを思う中、ギタリストがTAIJI FUJIMOTOからSUGIZOへとバトンタッチされ、tezyaも加わった編成でアッパーな「迷宮のラヴァーズ」をプレイ。Shameとtezyaによるツイン・ボーカルやSUGIZOが奏でるホットなギター・ソロ、躍動感に満ちたサウンドなどにオーディエンスのボルテージはさらに高まる。続けて、抒情的に歌い上げるShame のボーカルやSUGIZOとTAIZOによるエモーショナルなツインリードなどを配したスロー・チューンの「clockwork life」、「声、出していこうぜ!」というShame のアジテーションと共に届けられた「eagle sniper」などが演奏された。
このセッションも観どころは多かったが、中でも眩いオーラを発しながらフリーキーなギター・ソロを弾きまくるSUGIZOの姿は圧倒的だった。いつものSUGIZOとはまた一味異なり、荒々しさを押し出した彼の姿に触れられたことや高校の同級生だったSUGIZOとtezyaが長い時を経て一緒に演奏する情景を見ることができたのも今回のライブの大きなプレゼントだったといえる。
ライブ終盤では、胸に沁み込むShame のボーカルをフィーチュアした「Desert rain」でオーディエンスを惹き込んだ後、ステージにPATAが登場。客席から大歓声と熱い拍手が湧き起こり、ラストソングとして力強く疾走する「the live」が演奏された。リラックスした笑顔を浮かべてギターを弾くPATAの姿は貫録に満ちているし、身近な距離に彼がいるということによる高揚感は凄いものがある。加えて、PATAとJO:YA、ShameというDope HEADzの歴代メンバー3名が並び立っているということも気持ちを引き上げる。ShameとJO:YAが発するパワフルな歌声やPATAならではのホットかつテイスティーなギター・ソロ、Junとkazunoのツイン・ベースが生み出す怒涛の重低音などが折り重なった良質な轟音とメンバー全員が織りなすフィジカルなパフォーマンスにオーディエンスは熱いリアクションを見せ、高田馬場CLUB PHASEはエネルギーが渦巻く空間へと化した。
<heath solo works heath THE LIVE everliving everloving>は、非常に魅力的な公演だった。最も印象的だったのはHEATHを悼む場ではなく、純粋に彼が生み出した素晴らしい音楽をみんなで分かち合うライブになっていたことだ。出演者がHEATHへの想いや彼との思い出などを語ることは一切なく、それぞれが音楽を通して全てを現したことに感銘を受けたし、その結果、爽やかかつエモーショナルな公演になっているのが実に良かった。
また、それぞれの楽曲と演者の組み合わせが絶妙だったこともポイントといえる。HEATHの世界観とミュージシャンそれぞれの個性が良い形で融合されていて聴き応えがあったし、表情豊かな構成で観飽きることがなかった。そして、こういうライブが実現できたのは、HEATHが幅広い音楽性を備えていたからこそということは言うまでもない。
 内容の良さが光っていたし、HEATHと共にあることを感じ取れたこともあり、<heath solo works heath THE LIVE everliving everloving>が再び開催されることを願う。

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