今年(2024年)1月に行われたコンサートを皮切りに、3月には小倉博和、佐橋佳幸によるギターデュオ山弦との公演、5月は「CIRCLE’24」、7月にシンセサイザー、コンピューターを使用した楽曲を中心としたライブ「ピーターと仲間たち」とフジロックへの参加と、精力的にライヴ活動をこなしてきた大貫妙子。そんな1年の締めくくりともいえるのが、11月30日に開催された「シンフォニック・コンサート2024」だ。オーケストラと共演するシンフォニック・コンサートは4年ぶりで、場所は前回と同じく昭和女子大学の人見記念講堂。共演するのは、佐々木新平が指揮するグランドフィルハーモニック東京だ。そこに、フェビアン・レザ・パネ(ピアノ) 鈴木正人(ベース) 林 立夫(ドラム) 伏見蛍(ギター)といった、近年、大貫と活動を共にするバンド・メンバーも参加した。
ステージの幕が開くとオーケストラがインスト曲「カイエ」を演奏。7月の「ピーターと仲間たち」もこの曲で始まったが、今回はオリジナル曲のストリングスの美しさが何倍にも魅力を増して輝いている。さらに木管楽器も加わって、ステージ一面に花が咲いたような色彩豊かな演奏だ。そんななか、華やかなドレスに身を包んだ大貫妙子が登場。照明に手をかざしながら観客席を見渡して、「こんばんは。今日はゆっくりお楽しみください」と観客に笑顔で挨拶。「Tema Purissima」を歌う。バンドとオーケストラの共演がなんとも贅沢だ。続く「夏に恋する女たち」では波打つようなストリングスの調べに大貫の歌声が浮遊する。
「夏に恋する女たち」を歌い終わると大貫は改めて観客に挨拶。「前回から、あっという間に4年が経ちました」と振り返り、「歌えるうちにコンサートをたくさんやりたいと思っています」と現在の心境を告げる。そして、歌ったのが「黒のクレール」。フルートの音色が秋の気配を感じさせた。そこでメンバー紹介をして、ちょっと息を整えてから「突然の贈りもの」。大貫の声が出たとたん、空気がふっと変わる。この曲はバンドのみの演奏で、1番はピアノのみ。2番でベースとドラムが入り、間奏でギター・ソロ。それぞれが繊細な音色で大貫の歌声に寄りそう。続く「RAIN」ではストリングスが参加。オリジナル曲のサウンドは大貫がインスパイアされた映画『ブレードランナー』のサントラを思わせる音色だったが、ストリングスが加わることで別の映画のワンシーンを見ているようだ。
「RAIN」が終わると、フェビアン以外のバンド・メンバーはいったん退場。大貫はMCで今年1年の活動を振り返る。初めてフジロックに呼ばれたことに触れて「私がロックだって知らなかったの? また呼んでください」とリクエスト。ホストを務めているJ-WAVEの番組の話など、観客に語りかけて和やかな雰囲気のなかで「光のカーニバル」が始まる。オーケストラ・サウンドが湧き上がり、ハープの音色が軽やかに弾けるなか、大貫の高音域の声が気持ち良さそうに伸びていく。曲が終わると大貫は「オーケストラは楽しいですね!」と大満足。そして、ピアノとストリングスを中心に「空へ」を歌うと、鈴木と伏見が戻ってきて「四季」を演奏するなど、曲によってバンドの編成は変化していく。
そして、いよいよコンサートは終盤へ。「オーケストラの時はいつもやる曲で、作曲は残念ながら亡くなってしまった坂本龍一さんです」と紹介して「TANGO」。そこから、「RENDEZ-VOUS」「グランプリ」とオーケストラ・サウンドの魅力をフルに引き出した楽曲が続く。なかでも、「グランプリ」のゴージャスなこと。歌い終わった後、大貫はこの曲が映画『栄光のル・マン』からアイデアを得た、と語っていたが、そのサントラを手掛けたミシェル・ルグランの作風を連想させるビッグバンド・ジャズ風のオーケストラ・サウンドに痺れる。
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