waterweed インタビュー vol.51

-今年はいきなりライブ攻めになってますね。

大賀:ちょうど昨日で終わったんですけど、Survive Said The Prophetのツアー帯同を17本してたんです。

-この時期から既にこれだけの本数というのは、バンドにとっては普通なんですか?

大賀:そうですね、大体毎年100本いかないくらい…でも、ちょっと多いですかね(笑)。

松原:行きすぎました?

-いえ、単純にビックリしているだけです(笑)。大阪が拠点ということですが、場所にこだわらず、全国で100本なんですよね。

松原:逆に年々、大阪が減ってきてます(笑)。ここ最近は毎年リリースさせてもらってるのがあって、ツアーの初日とファイナルは大阪ですけど、あとは全国各地に出る感じで。

-ええ!いつレコーディングするタイミングがあったんですか?

大賀:そうですね(笑)。前のツアーを終えて、他に誘われるライブをしながら3ヶ月間くらいで曲を作って、レコーディングという感じです。もちろん、レコーディング中はなるべくライブを入れないようにしてるんですけど…でも演ってるんですけど(笑)。

-(笑)。曲を作るためにちょっと篭ったりもする時間はないですよね?

大賀:そうですね。日々、曲を思いついたらiPhoneに録ったりとかはしているんですけど、それでも形にする作業は、ツアーが終わってから1週間くらいダラっとさせてもらった後(笑)。

-今回のアルバムもですが、曲を決めていくバンドの基準というのは、どこあるんですか?

大賀:まあ、基本的に僕がパッと作って聴ける状態にして、皆に聴いてもらって。で、皆の様子を伺いながらです(笑)。「あ、これは違うのかな…?」という空気のものは削ったり、僕も「うまいこと歌が乗らなかったから、これやめとくわ。」って言ったり。まあ、普通に「ここからの展開、どうしたらいいのかわからへんねんな」って、皆でちょっとうまく作れなかったりしたらボツになったり。

-大賀さんの曲に対する、皆さんの反応が第一関門ですね。

坂本:しかも、それぞれ反応が違うし(笑)。

-(笑)。「FIXED TOUR」では、アルバムに収録した新曲は演奏されたんですか?

大賀: 2曲くらい試しで演ってみましたけど、まだ曲自体に慣れてないんで、僕らもまだ正直よく分かってない状態で演奏してましたね。まあ、僕たちのツアーじゃないし、僕たちの事を知らない人が大勢居る中だったんで、お客さんからしてみれば、全部新曲みたいな感じだったから。反応を気にするより、自分たちの身体に馴染ませる作業をさせてもらったって感じですかね。

松原:まだ、ホンマに馴染んでないですけどね(笑)。

大賀:全然っす(笑)。でも毎回こうなんですよ。CDを出してライブで演って「難しい!全然表現ができない!」って。でも、ツアーの終盤には馴染んで、ツアーファイナルが終わった頃にはモノに出来てて。

-「馴染んでいく」というのは、バンド自身の血肉となるようなイメージですか?

松原:馴染み方ってバンドさんで違うと思うんですけど、馴染むというか何も考えんでも出る感じになってる状況というか。例えば自転車乗るくらいの(笑)。

-(笑)。顔を洗うくらい、当たり前にできるみたいな?

大賀:それくらい、反射的に出来るようにしたいんで。セットリストとかも、お客さんが来て「あの曲、今日は演らないんですか?」って言われて「あ、演ろっかな」くらいにはしたいんで。

-リハ無しでも出来ちゃうくらい。

松原:実際、今回のツアーはそんなんばっかりでしたね(笑)。

大賀:リハ無しとか、マジでめっちゃ多いんで。バンドがいっぱい出るイベントで「リハーサル、今日はありません」「ああ俺たち大丈夫です」って(笑)。

松原:それが正しいかどうかは全然わかんないですけど(笑)。

大賀:でも「この曲を演れ」って言われて出来ないのも、実はあります(笑)。

-(笑)。タイミングによっても、バンド内でのコアな楽曲は変わりますしね。

松原:そうですね。アルバムが出る度に更新されていく感じなんで。

大賀:例えば、今なら「Landscapes」の曲は馴染んでますけど、作ったばっかりの「Brightest」からって言われると、ちょっと難しいですね(笑)。

松原:多分、馴染んでないことがすぐバレます(笑)。こっちも違和感がありますし。

-(笑)。「FIXED TOUR」もそうでしたけど、対バンが多いとなると相手や会場によって、セレクトも大変そうですし。

大賀:そうですね。その日の対バンのバンドやお客さんによって、それこそ曲自体もちょっとずつ変わっているのかなと思います。最近は「丁寧にしっかりやらないとな」という気持ちも出てきましたし、初めて観てくれるお客さんに対して、勢いで投げっぱなしのライブは違うなと思って。

-何かきっかけがあったんですか?

大賀:昔の音源でもあるんですけど、モッシュパートがあったりする、ハードコア・ファンが結構好きだったりする曲があるんですね。それを演ること自体は俺たちも楽しいし、皆が盛り上がってくれたら嬉しいんですけど、ある時にそれだけで終わってしまってることが虚しくなってしまって。

-その場だけの盛り上がりも良いけど、何かをお互いに残す時間にしたいみたいな?

大賀:ちゃんと聴いて欲しい曲があったり、次も観てもらうためにもっと色濃いものを重ねていきたいし。ライブを観てくれてる人、対バン相手やライブハウスのスタッフさんとか、その場にいる人とより濃くしていきたいなという気持ちが強くなってきて、ちょっとオトナになりました(笑)。

-(笑)。過去の楽曲という捉え方もそうなんでしょうけど、今のメンバーになってから、よりその方向性になっていそうですね。

大賀:そうですね。3人になったというのが大きくて、前の「Landscapes」なんかは3人になりたての頃に作って。

松原:しかも3ヶ月目です(笑)。

大賀:何も分からない、スリーピースをやったことない奴らが集まった状態で。でも、スリーピースでやるって決めて作った音源だったし、歌やコーラスワークに力を入れてて、そうすることで自分たちらしさが出るなというのに気付いたんですよね。

-それまで意識をしてなかった訳ではないと思うんですけど、この体制での武器を手にしたのが「Landscapes」だったんですね。

大賀:そうです。

松原:それまでは、ホントに投げっぱなしのライブ(笑)。「Landscapes」のツアーを終えた辺りから、お客さんを意識するようになったし、色濃くなって。

-シンガロングのようなシンプルな反応をバンドが求めていたんでしょうね。

大賀:ハードコアやパンクのイベントだと、モッシュとかツーステップ、サークルピットとか色々あるんですけど、一番自然に出来るのがシンガロングだなって。後ろで観てる人でも最前でも出来るし。それこそ、袖で観てるバンドの友達だって出来るし。それで、バンドメンバーとお客さんで出来ることというのが、一番かなという意識に変わって。

-なるほど。「Brightest」では3曲にゲスト・ボーカルを迎えていますが、こういった自分たちの歌を大事にされている気持ちがあった上で、敢えて実現させたんですか?

大賀:単純に、誰かに歌ってもらうことって、今までやったことが無かったんです。でも、「Landscapes」のツアーを終えてから、挑戦してみたいという気持ちがふつふつと湧いてきて。PALM、FIVE NO RISK、bacho、どのヴォーカルもリスペクトしていて、活動のスタンスは全然違うんですけど、同じ意識のあるバンドなんで。「参加してください」って伝えたら、3人共すぐに返事をくれたし、思ってた以上のものを録ってくれたんで、本当に満足しています。

松原:一緒にイベントをやってるというのもあるんで、最大限リスペクトもしてて、もうバッチリで。

大賀:より、その楽曲を好きになれたし。で、ライブを一緒に演るのも楽しみなんですけど、彼らが居ないときに自分たちでしないといけないから(笑)。

-(笑)。

大賀:それをもし「俺がやるよ」って、気合の入ったヤツがいればやってくれてもいいし。そういう意味でも、みんなで歌えたらなって。

-お客さんが参加できる楽曲であり、ライブがその場所となるわけですしね。

大賀:僕たちとしても、音源を出したいというよりはツアーをしたいんです。そのための音源リリースというか。ありがたいことに、レーベル側も出したいというタイミングで出してもらえて、自分たちの好きな音楽を作らせてもらえる環境があるので。その恩返しの為にも、良い音源を作って良いツアーして、レーベルやお世話になったライブハウスに色々と返していきたいな。お客さんにも、もっと良い景色を見てもらいたいし、そういう気持ちでずっとライブをやっております。

-今回の「Brightest」も、正しくツアーの為の12曲をパッケージしたものだと。とはいえ、この期間での12曲、産みの苦しみも?

大賀:あるんです(笑)。

松原:ありすぎてるんです(笑)。

大賀:でも、それはそれで原動力になってるというか。恐らくなんですけど、音楽で生活をしてたら曲を作れないかな。仕事をしながらライブをして曲を作って、スタジオに入ってツアーを組んでっていうことを、自分たちでやるのはすごいしんどいんですけど、だからこそ本気でやれてるというか。

-それこそ、ロックの精神みたいなものですよね。

大賀:そうですね。自分たちで出来ることはやるし、助けてもらった人には恩返ししたいし。その一心でリリースもツアーも全部やってますね。で、やってたらそんな本数になっちゃう(笑)。

-そこは、軸にライブやライブハウスがあるからって感じましたけど(笑)。

松原:最近分かったのは、今までライブハウスって、休日とかに行く特別な場所だったんですけど、こんだけ同じバンドとツアーを周ったら、普段と逆転して家に帰った瞬間よりも、ライブハウスの方が安心してしまうというか(笑)。

大賀:週末を使っていくことが多いんで、行って帰ってきたら、平日に溜まってる洗濯をして、ご飯を食べて仕事に行って…「あ、ツアー行きてえな」みたいな(笑)。

松原:今までならその平日で自分を調整してたんですけど、調整する時間が無さ過ぎて、こっちがもうメインなんです(笑)。

大賀:大変ですけどね(笑)。

-変な言い方ですけど「各地に帰れる場所がこんなにある」みたいな状態ですもんね。

大賀:そうですね、ただ、日本全国行ってると思われがちなんですが、行ったことのない場所もまだまだあるんです。今回のツアーは、初めて鳥取や富山に行ったりもします。まだ行けていない所は行こうと思って。

-どんどんファミリーを作っている感じですね。

松原:友達も増えましたね。それが楽しいから、ツアーを続けてる所もあると思うんですよね。

大賀:最近で言ったら、外国のバンドと一緒にやるようになって、他の国にも友達がいっぱい出来てきて、それが続いたら面白いことが出来るかなって。単純にドカンと売れて、知らない人がいっぱいいる前で演るのも素晴らしいんですけど、各地へ行くたびに友達を増やしてって、友達がいっぱいいる方も気持ち良くないですか(笑)。

-アルバムタイトルとも通ずる部分がありますよね。

大賀:ああ、そうですね。基本、根暗なんですけどね(笑)。

-ええ!根暗で「Brightest」は出ないですよ(笑)。

大賀:まあ、背伸びしてます(笑)。俺たちも長くバンドを続けて行きたいなと思っていて、その為にも、みんなと明るい未来を作っていきたいという意味も込めてます。でも「Sigh」 なんて「いつも後悔してる」が始まりで(笑)。

-いやいや、「Four of force」で「And we will lead to tomorrow」って歌ってますから(笑)。変な話かもしれないですが、これだけ全国を廻っていても、大阪が拠点であることは、全然不自然じゃないんですね。

松原:ただ、大阪がライブで一番難しいです。

大賀:苦手ですね。大阪のライブハウスに行く若い子は、普段観れないものを観ようとしてる意識があると思うんですよね。むしろ、東京や地方に行った方が喜んでもらえるし、歓迎もしてもらえる。大阪の人は「いつでも観れるから」みたいな気持ちの人が多いんかなって。

松原:しかもシビアです。

大賀:シビアな目に育てられたところもあるんで、大阪で成功したら何処でもいけますね。

-その感覚って、ずっと身を置いていないとわからないことですよね。

大賀:過去には、ツアー初日やファイナルの度に辛い思いをしましたよ(笑)。

-「Brightest Tour 2017」の初日は、そのシビアな目でも「スゲエ!」ってなるような自信はあると思いますが?

大賀:そうですね。初日から良い景色が見れたらなと思いますし、発表されてるのはまだ半分くらいなので、ファイナルまでその景色を続けていきたいですね。

-冒頭でも伺いましたが、やはり今年もライブの年ですね。

大賀:100本ペースですね(笑)。

松原:そこでみんなが共有して、楽しい空間になってくれればオールオッケーです。何なら、ステージに上がって、シンバルを叩いてくれるくらいの勢いでも(笑)。

大賀:それを観たら面白いと思うんで。こんな変なヤツがいるんだったら、全然大声で歌っても…。

松原:大丈夫(笑)。同じ目線で、同じ空気を作れたらというのを目標に、ツアーを廻りたいと思います。

大賀:シメだ(笑)。

松原:ガラガラの日だったらすいません(笑)。

大賀:いや、ガラガラの方が見やすいで(笑)。最後、言っとけば?

坂本:うーん、シンガロングも勿論なんですけど、歌に重点を置いたアルバムになってるんで、そういう所に力が入っているのが、みんなに伝わればいいなと思います。

松原:ということと、フェスに出たいです!

一同:(爆笑)。


取材:2017.03.13

インタビュー・テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330

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