J 20th Anniversary Live 2017 W.U.M.F. -Special 3 Nights- | 赤坂BLITZ

ミュージシャンの聖地といえば、誰もがステージを想起するだろう。
特にロックを掻き鳴らすアーティストであれば尚更で、幾つもの楽曲を産み出す最大の理由の1つに、「ステージでプレイしたい」が挙げられるはずだ。
Jが8月11日〜13日の3日間に渡り、「J 20th Anniversary Live 2017 W.U.M.F. -Special 3 Nights-」と題されたライヴを赤坂 BLITZで敢行した。
この3日間のライヴでは、先にリリースされたベストアルバム『J 20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017> W.U.M.F.』が紐付かれており、初日である11日は” ベストアルバム[W.U.M.F.]の DISC.1をメインに構成されたスペシャルセットリスト”、2日目の12日は” F.C.Pyro.発足15周年を記念した内容”、そして最終日の13日は” ベストアルバム[W.U.M.F.]の DISC.2をメインに構成されたスペシャルセットリスト”と、明確なコンセプトが掲げられたものであった。

本レポートでは、最終日にあたる13日をお伝えするのだが、まずは改めて掲げられたコンセプトに注目したい。
何故ならば、Jというロック・ミュージシャンのキャリアの中で、ミディアムテンポのものやバラードナンバーを中心としたライヴを行うのは、過去を遡っても例のない構成だからだ。
しかし、リリースされた『J 20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017> W.U.M.F.』で描かれた世界は、Jというロック・ミュージシャンを語る上で、もれなく必要なピースであることが再確認できるのは言うまでもなく、それをライヴというステージでいかに表現されるのか?という、期待に満ちたものでもあった。

そんな中、Led Zeppelinの「Houses Of the Holy」がヴォリュームを上げ、会場全体に始まりを告げる。この楽曲の邦題である「聖なる館」=「今日のステージ」と言わんばかりに、Jがこのコンセプトで伝えようとしている想いを雄弁と伝えてくれているようだ。
有松”MASUO”益男:Dr. (BACK DROP BOMB)のドライヴするドラムから、今日のライヴの口火を切る「Graceful days」がスタートする。
「リラックスして楽しんで」とJはステージで語っていたが、Jがプレイを始めるとそんな訳にはいかないのが彼のライヴ。
何故なら、アップ・テンポに体を揺らし、モッシュで盛り上がり、拳を突き上げるだけがロックではないのと同じで、瞬発的な怒りや感情を剥き出せる楽曲にはない、彼の中にいつも普遍的にあったロックを、この20年で手にしたグルーヴやメロディに変えて解き放つ楽曲は、ストレートに心に突き刺さるし、熱量という言葉で言い換えれば、アップ・テンポの楽曲よりも、我々の奥底により深く燃えたぎっているのがわかるからだ。

溝口和紀:Gt.、masasucks:Gt. (FULLSCRATCH/the HIATUS/RADIOTS)のギター・リフで始まる「ray of light」は、この会場を突き破るほどの壮大さを魅せ、その景色はタイトル通りの眩い光を抜けた未来を彷彿とさせていた。
「魂を込めて」とJが語るように、その歌声が身体の隅々にまで染み込んでいく楽曲たちが、情感たっぷりに奏でられる。「Heaven」が披露されると、噛みしめるように味わい、Jの声に全神経を傾けるオーディエンスの姿は、ステージから観ても美しかったに違いない。
ライヴの終盤では、「Blank」で – 何処までも続くこの道で 見上げる空はとても遠くて – と歌い、「NOWHERE」では – 永遠に燃え続けるキャンドルのように 僕らはきっと living forever – と全員で熱く叫び、– Endless sky I just wanna fly with you – と締めくくった。
この最終日、そして3日間を通して”Jが観せたかった景色”というよりは、彼の終わらない挑戦に、いつもそばにいてくれたファンと作り上げてきた景色を「これからも一緒に観ていきたい」と、端的に「Endless sky」がそれを示してくれたようだった。

そして、その世界を深く深く伝える最大の方法が、この3日間のコンセプトにあって、敢えて最終日にこの濃密な時間を作れる楽曲たちで構成されたことが、何よりも今のJを表現するには必要なことだったのだと。

アンコールを終えた後のJをはじめとするメンバーの表情に溢れる満足感と、その世界を堪能した我々の幸福感は、鮮やかにリンクして-Special 3 Nights-の全てが終了した。
客電が点いても、止むことのないJへの声援が物語るように、今日のライヴで魅了されたオーディエンスは、『J 20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017> W.U.M.F.』が提示した世界を、ステージという聖地で隅々まで堪能できたはずだ。2010年に立ち上げたアコースティックプロジェクト、Dessert Flame Frequencyを想像してしまいがちだが、やはりこのバンドでプレイされるからこそのステージは、-Special 3 Nights-のタイトルに相応しい内容だったことを付け加えておきたい。
年末には、この20周年イヤーの最後を飾る、渋谷TSUTAYA O-EAST 2days公演が決定しているJ。まだまだ、彼のプレイと世界に目が離せない。

 


J 20th Anniversary Live 2017 W.U.M.F. -Special 3 Nights-

2017/8/11~13 Akasaka BLITZ

<8/11>Day.1 -Focus on DISC.1-

1. NEVER END
2. If you can see me
3. one reason
4. here we go
5. Vida Rosa
6. RECKLESS
7. addiction
8. GO with the Devil
9. Sixteen
10. Die for you
11. Go Charge
12. Evoke the world
13. break
14. PYROMANIA
[Encore]
1. Feel Your Blaze
2. Go Charge

<8/12>Day.2 -Focus on F.C.Pyro. 15th anniv.-

1. Go Charge
2. PYROMANIA
3. one reason
4. RECKLESS
5. I know
6. Sixteen
7. GO with the Devil
8. Die for you
9. ACROSS THE NIGHT
10. Verity
11. Blank
12. break
13. Evoke the world
[Encore]
1. Feel Your Blaze
2. Endless sky
[W Encore]
1. ・・・・・

<8/13>Day.3 -Focus on DISC.2-

1. Graceful days
2. I know
3. ray of light
4. Mirage #9
5. walk along
6. white
7. When You Sleep
8. Heaven
9. baby baby
10. Blank
11. NOWHERE
12. Endless sky
[Encore]
1. Tomorrow
2. ACROSS THE NIGHT

取材:2017.08.13

テキスト:Atsushi Tsuji(辻 敦志) @classic0330

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